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(さて、電車に乗って帰る~。あ、里菜ちゃんがホールで若手ボーイの佐藤君とまた話し込んでる! 絶対あの二人怪しいわ。ラブなムードまき散らしちゃってるもの)
そんな事を思いながら「お先に失礼しま~す」とララ。
「あ、ララ姐さん、お疲れさまです!」
「ララさん、お疲れさまでした」
二人に見送られ裏口のドアをガチャリ。
(10月になったのに、夕暮れでも暑いな~。あ、帰りスーパーでノンアルとおつまみ買わなくっちゃ! なおちゃんとあたしの)
麗三はなおちゃんと過ごす時だけノンアルを飲む。時々はアルコール入りのビールの時も。なおちゃんは車なのでいつもノンアル。それとコーヒーはモカ。挽いた豆を常備しているのでドリップする。
今年で交際3年の麗三となおちゃんは、今でもアツアツ。身も心も強く結ばれている。
なおちゃんは麗三の仕事について『オレと出逢う前から麗三が頑張ってきた事だから』と麗三の意向を尊重してくれている。ただ、危険な目に遭いはしないかと心配は否めないらしく『ベテランだろうけど充分注意するように』といつも言ってくれる。
(きのう電話で[7時半ごろ到着するよ]って言ってたな、なおちゃん)
麗三は6時20分に帰宅すると急いでシャワーを浴びてお化粧も落とした。お家デートの時はスッピンの事が多い。麗三は色白で唇がもともと赤っぽく、それでいて瑞々しい。ノーメイクの自分の顔も気に入っている。
ピンポ~ン……。7時過ぎ、玄関チャイムが鳴った。
「ハ~イ」
パタパタパタ……。玄関へ駈けて行き、覗き穴を除くと、スマートな紳士が立っている。
ガチャリ。
「なおちゃ~ん」
「麗三」
麗三の頭をポンポンとするなおちゃん。なおちゃん、まるでパパみたい。
にしても、なおちゃんの顔に疲れが滲んでいる。
「大丈夫? なおちゃん、少し顔色悪いよ?」
「うん、今日はメチャクチャ忙しくてさ、くたびれたよ~」
手を繋いで二人はキッチンへ。
ギュ!
キッチンまで行くと、麗三を思いきり抱き締めるなおちゃん。
――――「カンパーイ!」
二人はノンアルの缶をかかげた。ゴクリ。
「お~いしー!」
そうしていつも一緒にオフロに入る麗三となおちゃん。とっても仲良しだ。
――――オフロを上がり、麗三の淹れたコーヒーでひと息。おしゃべりに花が咲く。
「麗三は本当に、コーヒーを淹れるのが上手だね、うちで雇いたいぐらいだよ」
「ウフフ、そう? ありがと、なおちゃん。……あ、早季ちゃんは元気にしてる?」
「ああ、元気だよ。今夜は帰りが遅くなるって言ってあるよ」
「そか。早季ちゃん、学校楽しくやってるかな?」
なおちゃんの娘である早季は、ファッション関係の専門学校生だ。
「うん、旨くやってると思うよ。麗三、葉也途君はどうなの。頑張ってる?」
「うん! バイト2つ掛け持ちして授業でしょ。忙しそうで、話す間がないみたいだけど、たまにROUL(連絡アプリ)の返事がくるよ」
「ま、男の子だからそんな感じだろうね~。葉也途君、彼女も居るもんね?」
「そうだね。可愛い、優しい彼女ちゃんだから安心してるよ」
麗三の息子は京都と熊本で目下遠距離恋愛中だ。
(ああー、なおちゃんと居ると落ち着くなぁ~。本当、こんな心地よさ初めてなのよね。……あたし、なおちゃんのお嫁さんになりたいな……。26回目の結婚になるけど、なおちゃんとなら結婚生活が3日で終わるなんてありえないわ[そう。麗三の最短記録は3日で離婚、だ]一生、いいえ永遠だわ。あたし…… この人を探してたんだなぁ。なおちゃんに出逢うために25回も結婚したんだわ)
たまぁに思う。なおちゃんの元奥さんってどんな人だったんだろうって……。
でも、手に負えないほどヤキモチ焼きの麗三なのだ、実は。そんな自身を知っているから、一切そういった話には触れないようにしているし、なおちゃんも麗三の性分をよくわかっているから決して話さない。
「なおちゃん」
「麗三……」
熱い瞳で愛で合う二人。今夜も情熱的に愛し合った。
――――「あ、もう11時? オレ明日早出なんだよ、麗三……」ナデナデ。
「ン~なおちゃん」ゴロゴロ。
名残惜しいけれど……「うん、なおちゃん、帰らなきゃね」
とってもとっても名残惜しい。
それはなおちゃんも同じ。
「麗三、またくるからね。待っててね!」
「はい……」
玄関で訊く。
「ネェ、なおちゃん、あたしを愛してるぅ?」
そんなの、わかりきってても、聴きたいよ。
「愛してるよ、麗三」
ギュギュ! 今日一番の力。ちょっぴり痛いぐらいのなおちゃんの抱き締め方。
(大好き。あたし、なおちゃんがとてもスキ)
「運転、気を付けてね」
「うん。麗三、戸締まりちゃんとしてね」
「はい」
なおちゃんが去ったあとも、身体中を包み込む幸せがまとわりついて離れない。
*
「おはようございま~す、店長!」
「あ、おはよ、ララちゃん。今日もさ、ララちゃんを待ってるお客様が2名居ますよ、外に」
オープン1時間前だ。驚いちゃうが感謝! ありがたいな~と思う。
「あ、おはよう、十木恵ちゃん。珍しい、今日は早いのね」
「はい、ララ姐さん。あたし、ねぼけてて、なんか時計を見間違えて早く出発しちゃったの……」
しょんぼりしている十木恵ちゃん。
(お茶目で可愛い。普通なら遅刻じゃないんだから、落ち込む事じゃないのにね、ほんと可愛いんだから! ウフフ)
そうしていつものように里菜ちゃん、遥ちゃん、安湖ちゃんも出勤し、女の子勢ぞろいだ。
『夢と黒猫』が今日もオープンした。
外で待っていらした2名のお客様の内のお1人様から接客だ。そのお客様はいつもだが、今日も延長して下さった。サービスが終わりお見送りする。
「ありがとうございました!」
一度おトイレや洗面所へ行き待機室へ戻るララ。
「ねぇ、ララ姐さん、ララ姐さんって凄いですね。毎日指名のお客様がたくさんいらっしゃる。お客様を惹き付けるコツって何かあるんですか……」と里菜ちゃん。
「ン~、そうねー」
考えるのも束の間、ボーイの戸田さんが顔をのぞかせた。
「ララさん、ご指名新規のお客様です。お願いします!」
「ハイ! 里菜ちゃん、またあとでね」
話の途中だった里菜ちゃんにひと言告げ、お客様の待つブースへ行くララ。
「いらっしゃいませ」
(ハッ……!)
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