『チョットッ! ソンナハナシシテイルバアイジャ、ナイヨッ!』
ここまでの会話に一言も発言しなかった癖に、突然大きな声で割り込んできたギレスラの片言を嗜(たしな)めたのはお師匠に当たるバストロである。
「おいおい? そんな話って、そんな乱暴な言い方は無いだろうギレスラ! 今大切な分析をしいているんだからな! 少し静かにしていなさいっ!」
フランチェスカもバストロと同意見だったようである。
「そうよ? 稚竜の集中力が長時間持たないのは判っているけどね、今は少し大切なお話の最中なのよ、もう少しだけ辛抱してね、アナタって竜種の最高種であるニーズヘッグなんでしょう? 君って自分で思うより凄いのよ、ね、だからきっと辛抱できる筈よ? あとちょっとだけ頑張ろうか? ね? ねっ? 出来るよ、ガンバロっ!」
『ガッ? ガッ? ガガガァッ?』
ザンザスも優しい。
『まだ小さいのだから仕方が無いよなぁ、おじさんが後で遊んであげるからな、もう少しだけ待っていなさい、そうだ背に乗せて走ってあげよう、爽快だぞ♪ ヒヒン』
『エッ、デモ――――』
ニッコリと微笑んだザンザスの言葉に対して、尚も言い返そうとしたギレスラを制止したのはスリーマンセルの年長者、お兄ちゃんのレイブのやや厳し目な声である。
「我が儘ばかり言ってちゃ駄目だろギレスラ! 今回の事はいい加減な分析や知見のままで済ませて良い様な事じゃあないんだからぁ! 良いかい? ヴノの命に関わる大事件だったんだっ! 確(しっか)り検証しないままにしちゃったりしたら、ううぅっ…… つ、次はヴノが、ヴノが死んじゃうかもも知れないんだぞぉ! それでも良いのかよぉっ、ギレスラァッ? ウ、ウウウゥッ…… グスッ」
話している内に、自作のIF(もしも)で感情を激震させられた(セルフ)レイブが咽(むせ)び声を漏らし、言葉の続きを引き受けたのは小さな(数え二歳)の黒猪(こくちょ)である。
『ギレスラお兄ちゃんを責めるつもりは無いんだけどね、ほら見てよ、レイブお兄ちゃんがこんな風になっちゃうなんて…… 判るでしょ? 今は本当に大切なお話をしているんだって事…… ヴノ爺が死に掛けたんだからさっ! 当然なんじゃないのかな? ねぇ、ギレスラお兄ちゃん、もし飽きちゃったんならそこらで寝てても良いからね、えっとぉ…… 重要な話をしている時にね、カマって欲しいとかそういうのって、……本当に良くない事だと思うのっ! ねぇっ、もう止めようよっ! 何でもかんでも自分中心、主語は一人称、それしかないっ、一択だぜぇっ! そんなゴミ屑の理論を振り回すのなんてぇ…… ぺ、ペトラ、妹として、恥ずかしいよぉ、ねぇ、違うかなぁ、グスッ……』
なるほど…… 承認欲求とかかぁ…… 確かに面倒極まりない話だよねぇ~、賢いペトラや真っ直ぐなレイブにとっては、主語が自分なギレスラが恥ずかしく感じてしまったとしても仕方が無いのかもしれないな、スリーマンセルだけにね~。
そんな風に、傍観者に過ぎ無い、一観察者たる私ですら思ったと言うのに、有ろう事かギレスラは打ち消しの言葉を口にしたのである。
『……………… チ、チガウゥ、チガウゥーッ! レイブ、ト、ペトラ、ガッ、ハズカシクタッテ、カンケイナイ、ヨッ! カンジン、ノ! ヴノ、ガァッ、キエカケ、テ、イルンダカラァッアァァッ! グガッァッ!』
……………………
バストロが口を開く。
「ん? ヴノが消える? どう言う事だぁ? ヴノだったらさっきの場所で眠っているんじゃないか? ほら、そこに…… あれっ! あれれれぇ? い、いつの間にかっ、消え去っている…… い、一体どこにぃっ!」







