「貴方は今日から生きる兵器よ、無感情に殺めそして淡々と命を奪いなさい。」幼い頃、そう言われてた。だが、今は「アンタなんて産まなければよかった。」と言われた。私は衝動的に母を殺めズタズタに死体を引き裂いた。ふっと一息置き私は心臓を刺した。グチャッという音が私の耳に届き脳裏に懐かしく優しい思い出が浮かんでは消えた。血塗れたナイフは光の反射で私の顔を写した。とても心地の良さそうな表情をしている。 私は、愛と呼ばれていた。両親がおかしな宗教にハマる前は、普通に朝ごはんを食べて普通に学校に通って普通に友達と遊んで普通に眠っていた。でも、気がついた時にはもう遅くて私の両手には使った事がない銃らしきモノがあった。それからというもの毎日、隣街から甲高い悲鳴が聞こえてくるようになった。時が経つにつれて街が赤く染まっていった。だが、数日経つことなく私の両親はやらかしてしまった。仲間の柊を撃ってしまった。そこまでに至った経緯は知らないが。「お前らは叶様の名に泥を塗ったのだぞ。……追放だ、二度と近づくな!」「そ、そんな”!せめて!私めを!貴方様のお傍にっ!」「いやぁねぇ?叶様は”両親を堕とせ”と言われただけなんだよね♪」「え?愛を?w有り得ないですよ!まだ、小さくて脆いのに叶様のお役に立てるのですかw?」そう母が菊池に問うと、遠くにいる私にまで聞こえてくるため息をした後に菊池は「はいっ。追放です。娘様はこちらがしっかりと育てますので下民は出ていけ…今すぐ出て行かないと…ねぇ?」と、助言された母は震えた唇を噛み締め真っ直ぐな目で私を見つめてきた。そして口を開いてこう言った。「アンタなんて産まなければよかった。」菊池は私の耳に「もうそこで止めてあげなさい。十五の君に血液は似合わないよ。」と、宥めた。……五月蝿い。私だってアンタのもとで産まれたくなかった。人の死に興味が無いことっておかしなことなのかな?そう思い私は菊池に聞いた。「あの、これから何をすればいいんですか?」菊池は歩いていた足を停め私の方へ体を向けた。「それはね、叶様が仰ったことをすればいいんだよ。汚れ仕事かもね」そう教えて貰った後、エレベーターに乗った私達の空気は息苦しく感じ咳き込んだ。まるで、そのまま肺を鷲掴みされているような嫌悪感を抱いた私は菊池に「エレベーター、長いですね。」と、話してみた。だが、菊田は持っていた資料のような契約書にサインしていた。 やがて、エレベーターが徐々にゆっくりになって止まった。ピーンという音がフロア全体に広がった。だが、そこで降りることはなく菊池はそこで降り「この上が叶様の世界だ。だが、愛。お前は、初めてだろう?大丈夫さ叶様はお前を信じて待っているよ。」と、言った。私は黙って頷き上の階のボタンを押した。こんなに綺麗なオフィス街(赤黒いが……)で殺戮が起きて、しかもそれを推奨している宗教の内装がとっても綺麗なのだから違和感がある。可笑しい、叶様に逢えば分かるのかな。なぜ、私だけが残ったのか……。母は、何をしてしまったのか。 そう思っていた矢先、直ぐに最終フロアに止まった。エレベーターのドアを出ると、そこはとてもおかしかった。何故ならば、ドアも愚か部屋のひとつもない。あるのは小さな机と円曲型の階段だけであった。「……?へぇ?」困惑しながらも叶様を探していると階段の上から大きな金属音が聞こえた。登れということか、叶様の気配は感じられない。ゆっくりと登っていくとどんどん金属音が近づいていく。じんわりと甘い紅茶の香りが漂ってきた。 ようやく階段を登り終えるとそこには中性っぽい人が微笑みながらソファに座り茶会をしていた。すると私の存在に気づいた叶様が「おや?よく来たね、愛。ほら、君の分もあるからここに腰をお掛けになって」と、言った。「は…はい。あの、紅茶苦手なんですよ」「へぇ?同じじゃないか!では、ほうじ茶ティー?とやらを共に頂こうじゃないか」「えっ、あ、はい。」「そっかぁ…ほら、ここに来な」叶様は人柄の良い人なのを理解した私は、手元に持っていた護身用のナイフを袖元で隠した。私は言われるが儘、叶様の反対側のソファに座ってそれを口にした。信じられないほど美味しく私の心を浄化してくれるような甘味だった。ほうじ茶ティーって、こんなにも綺麗で安心する。私は自分の胸を撫で下ろした。親の愛情を思い出せない私は少しだけ”愛”に触れれたのかもしれない。じっくりと飲んでいると叶様が口を開き「愛、君はもうどこかの娘じゃないんだよ。単刀直入に言うね君は”生け贄”となってしまったんだよ。君が不便に思わない程度に僕らもサポートしていくからね。殺戮ライフとやらを僕らと楽しんで貰えないかい?義務教育ならぬ、義務殺害を受けさせるよ。それでも気に食わないのなら言ってくれて構わない。君は鋼の心で相当な事がない限り感情を表に表さないからね。柊にでも頼んで…おっと、君の母が柊を怪我させてしまったからね。でも大丈夫、柊は気が小さいが器が広い。君は、何か知りたいことってあるのかい?何でもいいんだ!一回質問を解消して本題に入ろう。」と、言った。……質問?思い出せない。私は顔を青ざめ言葉を紡ぎ話した。「…かぁ…さ、んが何で、柊?さ、んを…怪我させ、ったの?」 するとニカッと笑って叶様は楽しそうに話し始めた。「ほっ!菊池……やはり、手元に置いておくべきだったか…あれはな、銃が暴発した茜さんの事を指導員だと言うのに責任を負うことなく八つ当たりで柊の左足目掛けて引き金を引いたんだよ。だから、追放した。」私は真顔で頷き、カップを置いた。母の顔を頑張って思い出そうとした。だが、一切私の頭には顔愚か声すらも分からない。「私は、何をすれば?」と、聞くと叶様はポケットから刃物を取り出した。柄の部分にはKAGURAと私の苗字が掘られてあった。「これをあげるよ。これは特別仕立てでね。これで殺りなさい。」と渡された。その瞬間は母から渡された銃と重なる。まぶたが熱くなっているのを感じ、私は少しソファに深くもたれた時深い眠りについた。「愛さん……おやすみなさい。」
少し経って私はお姫様の様に菊池にもたれていた。菊池は驚いたかのように読んでいた本を閉じた。「はあ…やっと起きたか、お前は…えっと……面会したい人がいるぞ。柊だっけな?」「柊?さんですか…。」私は指された方向を見た。そこには足を組んだ後ろ髪を結んだ男性がこっちを見ていた。済んだ群青の瞳が私を哀れみの目で見つめている。「お前、目に光が無いな。死にたいのか?」急にそんな事を行ってきた為、私は戸惑いながら黙った。「おい、ガキが舐めた真似してんじゃねえよ!無視しやがって!せっかく俺がお前を……」「そこまでにしなさい。柊、この子は”生け贄”なんだよ。」「……ッチ、おいガキ…その、ついてこい。」私は真顔でその場で立ち止まった。だが、菊池が私の手に取って大丈夫としてくれた。 柊という人はフロア三の管理人らしい。三と描かれた鍵を持ってエレベーターへ向かった。この宗教で言う”生け贄”とはなんの事なのだろう。神様のような偉い立場なのだろうか、それともいつか役に立たなくなったら殺される立場なのだろうか。そんなことがもしも起きるというのならば私のナイフで私を守って叶様をこの手で葬る覚悟のつもりだ。神の掟に逆らって生きていく事が今の私には必要不可欠だ。私はただの一般人であることなのは間違いは無いのに…。ちょうどエレベーターが止まり三階に着いた。「…出るぞ。」私達は小さな部屋に入った。すると、柊が急に武装解除をしだした。銃、弾、刃物、私と同じ事をしている事が分かり親近感が湧いた私は「柊さんも警戒していたんですね…私と同じで」と言うと、柊は目を丸くして「あ、あぁ?お前みたいなガキでも警戒心は抱くんだな。流石、”生け贄”と言われるだけあるな。」と言った。柊は、太陽のような笑顔で私を見た。だが、私には羞恥心が無い為真顔で立っていると柊は不思議そうに首を傾げた。「お前、ほんとに十五か?不満そうだし、目に光が無いんだが?」「十五なはずです。十の時にここに来たので」「笑ってる時は大体…殺めた時か?」「うーん。分かんない、だって私の顔に興味無いもの」「そうか…菊池に聞くか。いいや、一回寝とけ」 そう言われ私は一分も経たたぬうちに眠ってしまった。