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ひまわり畑で笑って

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ひまわり畑で笑って

10 - テディベア

♥

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2024年03月15日

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ひまわり畑で笑って



青赤

桃赤




















….か、くん、……..あかくん、







夏休みが終わって学校が始まり、まだまだ残暑が厳しい9月終わり。

ふわふわと意識が上昇してくると同時に誰かの声が聞こえてる。

あれ….今日は月曜日だしお母さんは仕事に行ったはず….それに俺の事を赤くんだなんて呼ぶのは紫ーくんと青ちゃんくらいしか….、



「起きないとチューするよ?」

「青ちゃん!?!?//」

「あーあ、起きちゃった」


せっかくちゅーしようと思ったのに、彼は少し不貞腐れながら寝癖のついた俺の髪に優しく触れる。


「わざわざ部屋まで来なくても….」

「寝起きの赤くん可愛いんだもん、なんかほわほわしてて」

「ほわほわって….可愛くない!!//」


いつも寝坊助で俺が起こしに行く側だったのに、付き合ってからというもの青ちゃんは部屋まで俺を起こしに来るようになった。

嬉しい半面、朝から綺麗な顔が近距離にあって心臓に悪い。

渋々ベッドから降りようとしたら、青ちゃんはニコニコ顔でハンガーにかけてあった俺の制服を取ってくる。


「青ちゃん….」

「ん?」

「自分で着替えられるからっ!!//出てって!!//」

「ちえっ、今日もダメか」


どこまでも変態な青ちゃんは、俺の寝惚けている隙をついて着替えをさせたがる。いつも丁重にお断りしているのだが。

初めてこのもこもこのパジャマ姿を見られた時、写真を撮られて恥ずかしかったのは記憶に新しい。

残念そうな顔をしながら青ちゃんは下で待ってるね、と階段を降りていった。

彼の足の怪我も随分良くなったようで最近は少しずつ部活にも参加している。



制服に着替え、ヘアアイロンで寝癖を直し、そういえば鞄に今日提出の生物のレポートを入れていなかったことを思い出して、鞄に視線をおとす。

横に着いているのは少しくたびれた犬のキーホルダー。

….そろそろ潮時だろうか。

いつも鞄から外そうとするのだが何故か躊躇ってしまう。小学生のころから、毎日かかさずにあることを確認してつけているから、外すのも今更な気がする。



『お、中学でもつけてんの?そのキーホルダー』


….つけていると桃くんが嬉しそうな顔をしてくれたからか。だから、取るなんて選択肢なかったんだろうな。

ふとシン、とした自分の部屋を見回す。

引越してから内装は少し変わったけれど。

桃くんが良くお気に入りだといつも陣取っていたベッドとクッション。ほとんど彼にオススメされた漫画や小説ばかりの本棚。もう随分やらなくなってしまったゲーム達。ユーフォーキャッチャーが得意な彼に取ってもらった沢山のぬいぐるみ。

あの時の俺は桃くん1色だった。







―――





まだあれは、俺が桃くんと登校してた時のこと。





「赤、着替えさせて」

「なななんでよ!?//」


ほら、はーやーく。急かすようにベットの中に引っ張られぐいっと体を引き寄せられる。時間になっても降りてこない彼を心配して行った矢先これだ。こうなったら俺が言うことを聞くまで動かないから困ってしまう。

時間も迫ってきているし、渋々、露になる彼の筋肉質な胸板に必死に目を逸らしながらワイシャツのボタンを震える手で留めていく。

当の本人はニヤニヤしながらこちらを見つめて、真っ赤になる俺の反応を面白がっているのだ。


「赤さーん?ボタンイッコズレてるけど」

「〜ッだったら自分で着替えてよっ!!//幼稚園児じゃあるまいし!//」

「え〜、俺眠いもん」


そういいながら俺をクッションがわりにでもしているのか、体重をかけながら抱きしめてくる。

とくんとくんと彼の心臓の音がした。心做しか鼓動が速い気がする。


「重い!!//離れてよっ!!//」

「ん〜?赤あったか〜なんかいい匂いするし」


中学生になってから元々あった背丈の差が更に開いた。力勝負で勝てた事はないし、腕相撲で両手を使っても俺は彼の片手に勝てない。なんという屈辱だ。今じゃ彼の大きな身体にすっぽりと埋まってしまう。


なんとか着替えさせた後、ありがと、と言って俺の頭を撫でる彼がかっこよすぎて目を逸らした。

俺の小学校は私服だったけど、中等部は学ラン、高等部はブレザーになる。

目の前に立っている彼は学ラン姿だ。

何度も見ているはずなのに火照った頬をいつも誤魔化していて慣れない。


鏡の前に立っていた彼がセットが終わったのか不意にこちらを向いて決めポーズをする。


「センター分けにしてみた、どお?」

「っ//!!」


いいんじゃない、とぷいっとそっぽを向くと桃くんは面白がって、赤ちゃん顔真っ赤で惚れちゃったんでちゅねー?と俺の頭をぐしゃぐしゃにする。

俺はその通りで何も言えなくて調子乗んなばかー!!と暴言ばかり吐いてしまう。

これじゃあ台無しだ。彼の隣を歩けるよう、頑張ってセットした髪も。隠そうと必死にしている恋心も。
















―――




「じゃー、修学旅行の班決めてくぞ〜」

「ひと班5人ずつ、決まったら紙に書いてけ〜」




金曜日の7限目の授業がつぶれて、先生の言葉にクラス全体がザワザワし始めた。

中等部のときは沖縄に行ったけど、俺の学校の高等部は北海道に行っているらしい。

ぼんやりとしていると、人がいなくなった前の席に青ちゃんがちょこんと座ってきた。


「赤くん、一緒の班でいいよね?」

「うん!」


俺が頷くと青ちゃんは自分の下の名前に俺の名前を書いていく。


「一緒に僕達もいいですかー?」


振り返ると黄ちゃんと橙くん、紫ーくんが立っていて、もちろん、と笑って返す。

青ちゃん達がどこに行くか、なんて話で盛り上がっている時、ふと視線をさ迷わせて彼の姿を探す。

桃くんはもう既に他の男子達とグループを組んでいた。その中には女子もいる。


“桃くん!よろしくねー!”

“ん、よろしく”

“桃くん、あんま喋ったことないから嬉し〜!”


1人の女の子が桃くんのブレザーの袖をさりげなく掴む。

胸がザワザワして思わず俯いて視線を外す。

中等部のときは桃くんが人見知りな俺をグループに当たり前のように誘ってくれたんだっけ。

もう終わった恋のはずなのに。嫌でも桃くんとその子の会話が聞こえてくる。


「赤くん?大丈夫?」

「….ぁ、」


気づいたら4人が心配そうにこちらを見ていた。


「ご、ごめん、何の話だっけ」

「雪山のスノボーの話だよ!その時は班行動でしょー?」


紫ーくんの言葉にみんな目を輝かせた。

俺は少し不安になってぽつりと呟く。


「おれ、運動神経悪いから迷惑かけちゃう….」

「大丈夫だって!僕が教えるから。転ばないようにちゃんと守ってあげる」


唯一の経験者であるらしい青ちゃんの笑顔が眩しい。


「うぅ、….よろしくお願いします//」

「ふふ、一緒にすべろーね」


顔を真っ赤にさせた俺の頭を愛おしそうに撫でる青ちゃんを見て、あとの3人が「ゲロ甘….」と呟いたのは、言うまでもない。
























―――





部活が終わって薄暗くなった街に灯る商店街を赤くんと手を繋いで歩く。

歩いたせいかほんのり暖かくなってきた彼の小さな手。少し冷たくなってきた夜風が心地いい。

僕と彼の繋いでいない方の手にはおつかいついでにおばさんに学生さんカップル?可愛いねぇ、とおまけしてもらったサクサクのコロッケ。

ふー、ふー、とアツアツのコロッケを一生懸命冷ましている赤くんが愛おしくてたまらなくてちらりと横を見てしまう。

たわいの無い話をしながら歩いていると、赤くんがあっと声をあげて僕の手を離し、クレーンゲームにかけよった。

僕はなくなった手の体温を寂しく思いながら彼を追いかける。


「見て!青ちゃん!このヤギ可愛い!」


そこには両手サイズの赤色と青色のヤギのぬいぐるみがちょこんと座っていた。

確かに、少し気だるげなところが可愛い。

キラキラと目を輝かせる赤くんにどうしてもかっこいいところをみせたくて財布を出す。


「僕が取ってあげる。見てて。」

「いいの!?」





―――



「青ちゃん….さすがにもういいよ!?やめよう?」


3000円使い切ったところで赤くんが僕の腕を掴んだ。うるうるとこちらを見る彼は世界一可愛い。

…なんで僕はあの彼みたいにスマートになんでも出来ないんだろう….。悔しくなって最後の足掻きとして100円をまた入れる。


「ん〜じゃ、最後にもっかいやらせて?」

「うん….」


不安げに頷く彼が可愛いなぁ、なんて思いながら慎重にアームを動かすと変なところで止めてしまった。まじかよ、と絶望していたら、奇跡が起こった。

アームの両端が2つのぬいぐるみのタグに引っかかったのだ。

僕と赤くんはその場で唖然。

無事にぬいぐるみは2つのとも四角の穴に落ちてきたところで2人顔を見合せて大爆笑してしまった。












―――


「あ〜笑った笑ったwあんなことあるんだね」

「ほんとほんと、wスゴすぎ」


どうせなら両方とも彼にあげたかったのだが、赤くんがお揃い!と目を輝かせるものだがら、僕は赤色、赤くんは青色のヤギのぬいぐるみを持った。


「ありがとう!青ちゃん!ほんとに嬉しい!!」


そう言って赤くんはニコニコしながらヤギを抱きしめているものだから、可愛い×可愛いはほんとにやばいんだな1人で悶えていた。

それからいつものように僕の家でご飯を食べ、赤くんを家の前まで送った。


「も〜すぐ隣なんだしここまで送ってもらわなくても….」

「いーのいーの、彼氏なんだからそのくらいやらせてよ」


プクッ〜っとふくらませた血色のいい彼の頬っぺをつんつんしながら抱き寄せて宥めると、赤くんはまた嬉しそうにほんのり頬を染めた。

彼の手にはまだ大事そうにぬいぐるみが握られている。僕も嬉しくて自分のも持ってきてしまった。

しばらく抱き合って名残惜しく離れ、また明日ね、と言う。すると赤くんがコクンと頷き手を振ったあと、思い出したように背を向けようとした僕にちょこちょこ駆け寄ってきた。


「赤ヤギちゃんにもバイバイするの忘れてた」


バイバイのちゅー、なんて言って僕の赤ヤギと赤くんの青ヤギの口を軽く触れさせる彼。





僕、もうダメだった。

ほんと、なんでこんな可愛いんだろうな。








「….んぅっ!//」


強引に赤くんの腰を抱き寄せ、唇を合わせる。

薄く開いた彼の口に自身の舌を入れ込み、ちっちゃな舌を捕まえて絡める。どんどん熱くなっていく彼の頬と真っ赤に染まる耳。

いつの間にか2つのぬいぐるみは落ちてお互いに抱きしめあって熱と吐息を感じていた。


もう、死んでもいいと思った。

幸せってこういうことなのか。

嬉しくて嬉しくて、泣いてしまいそうで。

心臓が満たされて溶けてしまいそうで。




「あお、ちゃ….ぁ//?」


彼の溶けきってしまった顔に思わずごくんと喉を鳴らすが、明日も学校だ。お持ち帰りしたい気持ちは山々だが、止まれる気がしない。彼に迷惑をかけてしまう。

1度赤くんを泣かせてしまったあの日から、慎重になっている僕はいまだに彼を1度も誘えていなかった。

ぬいぐるみ達を優しくはらい、彼の手に渡す。そしてまた優しく彼の唇にキスを落とした。



「赤くん….大好きだよ、おやすみ」

「おれもだいすき….//おやすみ」


彼の家の玄関のドアが閉まる直前まで、恥ずかしそうに小さく手を振る赤くんを目に焼き付けドアをそっと閉めた。


ふと家に戻ろうと空を見ると月が綺麗に輝いていて。


「….月が綺麗ですね」


ぽつりと呟く。

彼は、なんて返してくれるだろうか。


胸がざわめくのは彼のカバンについたキーホルダーを見てしまったから。



───あのぬいぐるみを見て、彼が僕の事で頭いっぱいになってくれますように。


月に願いを。




























おまたせしましたぁぁぁあ!!

題名要素全くなくて草です

長くなってすみません!!

次は修学旅行編です!

お楽しみに!!((

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コメント

15

ユーザー

続きありがとうございます!!! 青赤尊すぎです...!!! でも、途中の赤くんの回想での桃赤が切なすぎて大好きです!もう最高すぎます!もうこのまま青赤エンドでいいんじゃ((( 続き楽しみにしてます!!!楽しみすぎて一日中寝れないかもしれないです!

ユーザー

うぅ〜!!!!😭 青赤ほんわかしててすんごいかわいいのに、やっぱり桃赤捨てがたすぎます😭😭😭 かつてこんなに主人公にもそのライバルにも成功してほしすぎて苦しくなったことはあっただろうか🥺💗 青くんか桃くんのどっちかが極端に性格が悪ければ一途に応援できるのに!!!とも思いました😫😫 でもそこがまたいいんですよね😢💓💓

ユーザー

楽しみにしてた連載なので投稿嬉しいです☺️🫶🏻🫶🏻 赤くんの忘れられない想いがどんどん関係を拗らせちゃうのかな、、なんて思ってます。。

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