私
には今年、小学5年生になる息子がいるのですが、息子には友達がいません。私がいくら言って聞かせても、息子は学校から帰ってくるなり部屋に閉じこもりゲームばかりしています。心配して何度か話を聞いてみたのですが、「大丈夫だからほっといて!」の一点張りです。何か悩みがあるのか聞いてみても答えてくれません。
ある日、学校で何かあったのではないかと思い、息子のクラス担任の教師に相談しました。しかし教師からは、「そういう年頃なのでそっと見守ってあげてください」と言われてしまいました。確かに息子には反抗期があり、親としては心配になる時期でもありました。だからといって、授業中に突然暴れ出したり、急に学校へ行かないと言い出したりするなんて異常だと思いませんか?これは思春期特有の症状なんでしょうか? おねしょをしてしまった夢を見た日を境に、息子は悪夢を見るようになったらしいのです。
私はいつものように朝ご飯を食べさせ、歯磨きをし、着替えさせてやり、幼稚園に連れて行きました。ところが、いざ出発しようとしたとき、息苦しそうな表情を浮かべた息子を見て私は驚きました。急いで体温計を持ってきてもらい測ると三十八度を超えていました。今日一日家でゆっくり休むように言い聞かせ、病院へと連れていきました。診断の結果風邪だということでしたが、念のため血液検査を受けさせられました。その結果白血球の数値が低いということでした。これは白血病などの感染症ではないのかと心配になりました。それから数日後のことです。私のもとに一通の手紙が届きました。それは息子が入院したという知らせだったのです。手紙には息子の症状について詳しく書かれてありました。それによると、白血球数値が下がった原因はウイルス性肝炎によるものだと書かれていたのです。私は愕然としました。まさか自分が感染しているなんて夢にも思ってなかったのですから当然です。慌てて知り合いに連絡を取り、医者を紹介してもらったところ、やはり同じ理由で入院していた人がいたそうです。彼は血液製剤の製造元である製薬会社の社員だったのですが、そこで注射器を扱う作業をしていたらしく、それで感染者になったらしいのです。幸いなことに感染したのは彼だけでした。しかし、このままでは自分もいつ発症するかわかったものではないと思い知らされる結果となりました。しかも、感染経路は不明とのことでした。本当にどうしてこんなことになったんでしょうか? 私は自分の体を心配しながらも、仕事に行く準備を始めました。息子のために仕事を休もうとも思ったんですけどね……。結局会社に行ってしまったわけです。仕事を終え帰宅したとき、息子はまだ熱がありました。夜になると容態が悪化してきまして、高熱が続き意識も混濁してきたようです。とても危険な状態でした。すぐに救急病院へ運び込まれ処置を受けたものの助かる見込みはなかったと聞きます。それでも息子の死顔はとても穏やかだったとか……。私が帰宅してすぐのことです。まだ六歳の息子を亡くしてしまったことへのショックもありましたが、それ以上に職場でのことが心配になりました。もし同僚たちも同じ目に遭わされていたらどうしようと思ったんです。
翌日出勤したら案の定私の机の上に手紙が置かれていました。差出人は私の同僚の女性でした。内容はこう書かれてありました。
『お疲れ様です。突然のお知らせで申し訳ありませんが、実は昨日をもちまして当店は閉店いたしました』
コンビニの店員さんから唐突に告げられる言葉。
僕には一体何が起きたのか理解できなかった。
いつものように学校帰りに立ち寄り、買い物をして店を出ようとした時に言われたのだ。
僕はレジに置かれたお金を取り忘れた事に気づき慌てて振り返ったのだが、そこにあったはずのお釣りがない。
代わりに店員さんの手に握られているのは一万円札だった。
僕は目の前で起こったことが信じられずに呆然としていた。
どうしてこんな事になったのかわからない。
いや……本当は薄々感づいていたけど認めたくなかっただけだ。
だってそうだろ? 毎日立ち寄っていた馴染みの店が閉店したなんて信じたくはないじゃないか! しかし現実は非情であった。
僕の目に入ったのは壁に貼られてある張り紙。
そこには『本日をもって閉店致します』の文字が書かれていた。
「嘘だああぁぁ!」
こうして僕の唯一の憩いの場が消え去ったのである。
***
それからというもの、僕は学校が終わるとすぐに帰宅して引きこもり生活をスタートさせた。
親は何も言わない。
きっと何も言えないのだろう。
それはそうさ。
だってここは僕の家なのだ。
正確には僕の家の跡地だけどね。
母屋はすでに取り壊されており、今はアパートになっている。
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