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しほぉん
52
#ろふまお
やん
5,055
“fw side”
「不破さん、今日いいですか?」
『あぇ、』
「今日は僕からちょっとね…」
『ぁあ、俺も話したいことあったしええよ』
「っ、いつもの教室で待ってます」)にこっ
翌日、俺はもう謝って終わろうと思っていた。
この関係、曖昧なドス黒い色から、少しでも色素が薄くなることを祈っていた。
ただ、アイツから誘ってくるとは…、、
ーーーーー
))ガラガラ…
『ごめん、待たせたな』
「あ〜…全然待ってないんで大丈夫ですよ」
『…、』
「…」
気まづ?! え?そんなことある?
…
『なぁ、』
同時
「あのっ!」
『あっ、先に甲斐田言うか?』
「あー…いや、不破さん先にどうぞ」
『…わるかった、』
彼は笑顔を崩さないまま、俺の一つ一つのセリフを拾い上げる。瞳は微かに揺れた気がした。
『俺、昨日考えてん。もうこんなの…、甲斐田にはもちろん、俺もこの先得しないだろうからさ…』
『もう、やめにしよう』
「ッ、」
『別に、!許して欲しいわけじゃない!前の関係に戻れるとも気安く考えてない、』
『だけど…、、今の関係よりは……』
「不破さん」
『ッ?!』
急にコイツが近づいてきたから反射的に目を瞑った。次に、目を開いたはずなのに視界は真っ暗。
何をされたのかもわからないし、嫌な予感だけは痛感した。
『甲斐ッ?!だ、ぇ、ど、どこ、?』
『ご、ごめんって…、!マジで、本当に申し訳ない…ッ』
『謝って許されるなんて思ってへんしッ 』
『は、晴ッ!はるっ、』
必死に探すが彼の優しい瞳はなかった。
今まで、‘優しい’という彼をいいように片付けていたのかもしれない。
そんな奴が、今いなくなった。
「不破さーん」
『ッ!甲斐田ァっ、!』
甲斐田だと思われる手によって何かの結び目を解かれる。そこでやっと理解をした。
あー、俺目隠しされていたんだ。
“hr side”
今日は僕から誘った。
脳内でのイメージは完璧に完成しており、
教室に誘った後もどうするか考えていた。
『あぇ、』
目を少し大きく見開いて、彼は頷いた。
相手が謝るのは予想外だったなぁ…笑
不破さんはもう、この沼から出れないと思ってたのにね。
だからと言って手元は狂わなかった。
目隠しで丁寧に視界を隠し、教室には鍵をかけた。
『甲斐ッ?!だ、ぇ、ど、どこ、?』
『ご、ごめんって…、!マジで、本当に申し訳ない…ッ』
『謝って許されるなんて思ってへんしッ』
『は、晴ッ!はるっ、』
余裕のある笑顔。天然。愛されキャラ。ミステリアス。そんな普段かっこいい彼は、ぺたんと座り僕の名前を情けない声 で必死に呼んでいた。
「不破さーん」
『ッ!甲斐田ァっ、!』
目隠しをとると目を少し細めた。
彼はまだ、さっきの暗闇の余韻が残っているのか、いまだに何をされたのかわかっていないのか。目がぐるぐるしているようだった。
「そんなに謝らなくて大丈夫ですよ?笑」
『っ、だってぇ…ッ』
「…」
))ギュッ
『あぇ、』
手首をひとまとめにすると彼はビクッとした。
驚いているのか、まだ脳で処理しきれていないのか…
あー、本当に
「かわいい」
ーーーーー
“fw side”
「かわいい」
『…ハッ、』
彼の口から出てきたのは意外な言葉だった。
‘ か・わ・い・い ’ この四文字は俺もたくさん吐いてきた言葉だ。
『な、なん…』
「不破さん、僕も思ったんですよ」
))ペチッ
『ッたぁ、ッ』
すでにパンクしかけていた脳では処理できないほどの情報量。
「あー、かわいいです。不破さんっ!」
『甲斐田…ァ、は、晴、?』
「僕も今ならわかりますよ、アニキの気持ち」
「可哀想だなぁ…」
『はっ、?』
右頬はまだ少しジンジンする。
教室の壁にかかっていた鏡を見ると微かに赤くなっていた。
「でも、そんなあなたが可愛いです。」
『…は、晴退けって…』
俺が言えば、、俺が言えば退くだろう。
手首にまとわりついた手を振り払おうと動いてみる。
「えー、でもなぁ…かわいいし、」
『…ッ、お前狂ってるよ』
「狂ってるのは同じでしょ。ほらっ!呼び出して叩くのも、泣いてる姿を見て喜びを感じるのも、アニキとやってることは一緒!」
『ごめっ、悪気はなくてッ…』
「僕も悪気はないよ。不破さん、大丈夫?痛くない、?叩くの強かったかな、、」
『あ、いや…』
))ぶんっっ!!!
「ああ゛ッ!」
少し力の緩みが見えた隙に、腕を思いっきり引いてみる。案外すぐに手首の拘束が取れた。
『あ、に、逃げなきゃッ、!』
))ガチャガチャ
『あ、あぇ〜…』
「不破さん、僕ね。昨日から計画してたんだよ」
『甲…』
「不破さんなら逃げられるだろうなと思って、鍵は対策済みだから。」
そう吐き捨てるように言った後、鍵を指先で回しながら見せてくる。
『あ、』
ーーーーー
“hr side”
『あ、に、逃げなきゃッ、!』
ハッとしたようにそう呟くとふらふらとした足で立ち上がり、扉の方へと向かう。
僕はそれを追いかけようとはしない。だって鍵かけたんだから。
ここにいれば、そのうち…観念したように僕の元へ戻ってくるだろう。どーせ、どこにも行けないのだから。
『あ、あぇ〜…』
「不破さん、僕ね。昨日から計画してたんだよ」
『甲…』
「不破さんなら逃げられるだろうなと思って、鍵は対策済みだから。」
絶望したような顔で僕に向ける瞳に、可愛い以外の感想は出てこない。
『あ、』
何かに気がついたかと思えば、僕の方に早速寄ってきた。
元々、根は優しい彼だから申し訳なさもあったのだろう。なんせ、彼から始めた物語なのだから。
))きゅっ、
「…不破さん、」
『…ごめん、』((涙
涙を僕の服で拭っているのか…胸あたりに顔を埋める彼を見て、可愛いなぁと思う。
))ガッッッ
「あぶねッ」
『んぁあああ!!!』
そんなことを思っていたのも束の間、
腕が鍵に伸びてきたので、鍵を持っている手を引く。
それに合わせて体制を崩した不破さんが床に倒れかけたので、腕を思いっきり引っ張った。
「…諦め悪いなぁ、」
『…わ、わかった!何回か打てよ、』
「…ほぅ、」
『それでおあいこ。もうこの関係性もお終い』
「…」
『確かに、今まで俺はお前で快楽を得てきたから。お前も俺で快楽受けろよ。それで終わり』
はい、と小さな声をあげながら両手を軽く上げるアニキをぼーっと眺める。
「…わ、わかりました、」
ーーーーー
“fw side”
目を瞑って痛みを待つ。俺だけ逃げるのは申し訳ないし、ダサいし。
そんなことを思っていたら、来た衝撃は意外なものだった。
「アニキ口開けて?」
『ん?あぁ〜…、、、』
『んぎッ?!?!』
口の中に何か突っ込まれたと目を開いたら、
甲斐田の顔が目のまでにあるのを認識した。
口内には2本の指が入っていることがわかる。
『んぇ、っちょ、か、かいらぁ?』
「ほっぺもちもち…」
『んがっ、ちょ、くるひぃかも…、ッ』
「鼻で息するの忘れないでくださいよ」
『んぃ、』
舌を掴まれたり内側から顔の形を歪められたり。
すでに良いとは言えない滑舌が、さらに悪くなった気までした。
「いつだっけな、舌短いって言ってたよね」
『んぁー、まぁにぁ、』
「僕ね、思ったんだ。」
「やっぱり、可哀想が1番似合うのは不破さんだよ」
『っ、?』
「あー、本当に可愛い♡」
『んぃ、んぁーッ、 』
「あ、噛まないでね?噛んだら…」
指を甘噛みしていたのをやめる。何されるかは分からんけど、嫌な予感がしたから。
「僕自身も、こんなになると思ってなかった」
パッと口から異物を出された瞬間に息を口で吸い込む。頬が濡れているのは涙なのか、自分の口から分泌された涎なのか。
『はぁーッ、はぁーッ、』
「…可哀想」
『ハァッ、まぁ俺が始めた…ッ、し、…』
「…ふーん。」
『も、もうええの…、?ど?まだ殴りたらへん、?』
苦しいけど、なるべく。甲斐田みたいに、笑顔で振る舞うことを意識する。
俺が殴っても笑顔で支えてくれたから。
「…かわいいな、喰べたい」
『は、ちょッ』
反射的に避ける。どこから持ってきたかも分からない手錠を片手に、甲斐田は襲ってきた。
『ら、ライン超えてんだろッ』
「でも、内容が違うだけ、アニキと一緒!」
…、逃げるしか…ッ、これは流石に受け止められない…、
ーーーーー
“hr side”
用意していた手錠を出した時、目を丸くした。
驚いたような、困ったような…そんな顔。
))ダッ、
『も、無理ぃ、これは無理やろッ、 』
逃げても無駄なの…に、?
は?
「な、…」
不破さんは廊下側の窓からジャンプして外へ出た。
…、窓か。忘れてたな
「僕も追いかけないと…!」
なんとなく、どこに逃げているかというのはわかっていた。
まずはクラス教室。ここは本命のところに行くために通るからついでって感じかな。
「不破さーんどこー?」
「ま、いっか」
どーせあそこ。
ーーーーー
“fw side”
いやッ、申し訳ない気持ちはある。
多少の傷は受け止める予定だったし、殴られようと叩かれようとよかった。
でも、あれはライン超えてるんちゃうか…、?
『ハッ、』
おもいっきりドアを開けるとそこにはベースを鳴らすローレンがいた。
『ろ、ろれッ!』
[うわっ、?!ふわっちどした?]
『きょッ、今日バンド練ないのに、部室居たんだ…、』
[あ゛ー、色々あって居残り]
『ま、都合いい…ッ、な!匿って!!!』
[何から逃げてんのそんな…]
『い、いろいろあっただけ!!』
[ま、よく知らないけど…大変なことになってるのはわかったわ]
『ッ、い、入れて!!』
[え?!ここ入ってくるマ゛?!?!]
強引にロレの背中と背後の壁の間に入り込む。
察したのか、いい感じにアンプの場所を移動させたり、ブレザーを椅子にかけたりと隠してくれた。
))ガチャ、
「あ、ローレン」
[あ、甲斐田じゃーん]
[なに、視聴覚室来るの珍しくね?]
「あー、ちょっとね。不破さん探してるんだけど…」
[…んー、見てないな。今日はバンド練無いからここには来ないと思うけど…]
「…ふーん、」
[なに?他に何かある感じ?]
「…流石にバレるけど、」
「ね、出てきた方がいいよアニキ。バレてるから」
[だから居ないんだって!! ]
甲斐田のいつもより低い声と、ロレのいつも通りの低い声。
「…じゃぁ、後ろのブレザー外してください」
[ッ、]
あ、これ…まずいやつ、?笑
[…はっ、な、なんというか…、]
「何も無いならいいじゃん…確認だけ」
[な、なんかじゃない?]
[てか、なんでそんなに湊探してんの…?]
「色々あってね、急ぎの用事です!」
「ほら、‘企画書’さぼんないのっ!」
企画書…、?今週はおれの担当じゃ無ッ、
[あー、そゆことか。]
まんまと騙されたローレンはブレザーを払い上げる。
[それはふわっちが悪いしな笑ほら、仕事してこい]
『違ッ、』
「ほーら居た。はい、戻ろ?」
『、うん…』
ーーーーー
“hr side”
廊下を歩いていると、彼はずっと隣でソワソワしている。
))ぎゅっ、
『ッ?!』((ビクッ、
「ほら、手繋ぎましょ?」
力を込める。
『そー、だね』
小さな弱々しい力で握り返してきた。
やっぱり、かわいいな。
))ガチャ、(鍵)ガラララ
「…ふぅ、」
『そのー、ごめん』
少し握られる手の力が強くなった気がした。
「いえ、」
『そのー、でもまぁ、、手錠とかさ、そういうのはというか、』
「…、でも内容が違うってだけです」
『…ッ、んぁー、ッ』
「あ、じゃぁまずネクタイで慣れていきましょう」
『わ、わかっ…はい。』
潔く手を差し出す君は怯えている。
座り込んでいるから若干上目遣い。
わざとなのか?と疑うほどに可愛かった。
))きゅっ、
「結べた、」
『…そーだな』
「あー、そんなに怖がらないでくださいよ…」
ハグをしに行くと涙を流した君がいた。
))パシャっ
『?!ちょ、おま、消せって!!』
「えー?どうしようかなぁ、」
僕のスマホにはすでに、ネクタイで縛られた涙目の情っけねぇアニキが保存されていた。
「可愛い…、広めちゃうかもね僕」
『ッ、』
「…また明日も来てくれますよね…?」
『…わかった、』
「っ、偉い子、流石アニキ」
『っ、』
「ほら、もう部活動が片付けを始めてます。早く僕たちも帰らないと…」
『…うん』
ネクタイを外す。立ち上がろうとする君に手を差し伸べる。
怪しいと警戒しているのか、いつもよりも握る力は弱い。
「送ります」
『んぁ、?別にええよ。てかいつも送ってるし俺が』
「…だから送ります」
『…あっそ』
ーーーーー
__狂ったあの子と狂ってたあの子
コメント
1件
第3話、読み終わりました。二人の視点が交互に入る構成、すごく好きです。不破さんが「逃げる」選択をしたとき、ああやっぱりそう来るか…と。でも甲斐田くんの「計画してた」発言で、もうすべて読まれてる感がゾッとしました。ローレン登場で一瞬緩んだ空気が、また元の密室に引き戻されるあの流れ、見事です。ラストの「狂った~」という一文、二項対立じゃなくて相似形なんだなと腑に落ちました。続き、気になります。