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茜音
不过我 不喜欢它 ↺
暇なつは、雨の日が嫌いだった。
蒸し暑くて重い空気も、制服の裾が濡れる感覚も、すべてが鬱陶しくて気が滅入る。
窓の外を眺めれば、放課後の視界はどこまでも灰色に霞んでいた。
そんな曖昧な景色のなかで、ただ一人、妙に鮮明に映る姿がある。
クラスの輪の中心で、楽しそうに笑う、碧海すち。
高校二年生、同じクラスになって2ケ月。
どこか浮世離れした美しさを持つ彼は、いつも人に囲まれている人気者だった。
誰にでも愛想よく振る舞うくせに、どこか掴みどころがない。
住む世界が違う。
関わることもないだろう。
遠くで笑うその横顔を眺めながら、なつはそう勝手に決めつけていた。
キーンコーンカーンコーン、と放課後を告げるチャイムが鳴る。
今後訪れる出会いが、嫌いなはずの雨の日を特別なものへと変えていくなんて。
荷物をまとめるなつは、まだ、知る由もなかった。
コメント
1件
「雨の日が嫌い」という日常と、「特別なものへと変わる」予感が、たった一文で全部塗り替えられそうな静かな緊張感が好きです。灰色の景色のなかで「妙に鮮明に映る」碧海すちの描写、すごく印象的。まだ何も起きていないのに、これから始まる物語の匂いがする。設定の見せ方、上手いですね。