テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「 夜空 。」
もとぱ (体調不良、嘔吐表現 有
若井side
窓の外でなく蝉の声が、まるで別の世界の音のように聞こえた。
病室の空調が効きすぎて 夏だと言うのに元貴の細い肩は少し震えていた。
「 … また、熱? 」
滉斗が静かにベットの傍に腰を下ろすと、元貴はゆっくりと目を開いた。
額には冷たいタオルが乗っていて 吐き気に顔を顰めたまま、小さな声で応える。
「 ん…多分 39°cくらい…。」
「 無理すんなって あれほど言ったのに。」
滉斗の声は少し強かった。
でもそれは怒ってるんじゃなくて、ただ心配が滲み出てきていた証拠だった。
元貴はそんな彼の声に かすかに笑った。
「 若井が…..怒ってる… 」
「 怒ってるねぇよ。心配してるだけだ。アホ」
滉斗は不器用な手つきで 元貴の額の汗を拭う。
いつもは元気そうに笑っている 滉斗 が黙ってタオルを替える姿が 何故か元貴は好きだった。
「 ….. 僕さ。」
病室の静けさの中、元貴がぽつりと呟いた。
「 もうすぐ 死ぬかもね。」
その言葉に 滉斗の手が止まる。
俯いたまま動かなくなる。
「 おい… 」
「 でもね 、 苦しいのはもう慣れてる。…だから ….. 」
声が途切れる。
次の瞬間 元貴の体がびくりと震えて、吐き気が襲う。
慌てて滉斗が洗面器を差し出し 背中をさすった。
「 …..っ …ごめ、ん…….。」
「 謝んな…ッ 元貴…お前、ちゃんと生きてんだよ。今、ここで 」
震える滉斗の声が 熱と吐き気でぐしゃぐしゃになった意識に 染み込んでいった_____
#1.「 蝉の声が遠ざかる頃 」
不器用な若井さん。癖です
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!