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もうすぐクリスマス。
街は賑わっていてとても騒がしい。
なのに、どうしてだろう
あなたしか目に映らないのは_。
彼女は街外れの狭い椅子に座っていた。
夜の星にも負けないくらい綺麗だった。
座っている姿はなんて可愛らしいのだろう。
これが世間一般で言う一目惚れというやつか。
少し眺めていると、
ふと彼女と目が合ったような気がした。
するとあなたは
『あら、?どちらさまですか、?』
と言った。
彼女にぴったりな甘い声だ。
今にも雪と一緒に溶けてしまいそう。
[あの、僕….]
言葉につまった。
一目惚れなんて初めてで、 上手く声がでなかった。
『..こちらにいらっしゃい。笑』
僕は駆け足で向かった。
『そんなに焦らなくてもいいのですよ。』
『落ち着くことはとても大切なことです。』
彼女を目の前にして落ち着いていられる者が何人いるだろうか。
彼女は自分の容姿の美しさに気づいていないようだった。
そんなところがまた愛らしい。
[..名前を…聞いてもいいですか、?]
『私は “美月” っていうのよ。』
『“美” しい “月” と書いて“美月”。』
『綺麗な名前でしょう、?..笑』
『お母様が付けてくれた大切な名前なの。』
『凄く気に入っているわ。』
[由来とかって..?]
『由来は…そうね。』
『たしか、』
『美しい月のような暗い道でも皆を照らす存在になれるように。』
『だったかしら。』
[..素敵な由来ですね。]
[美月さんにぴったりだと思います。]
『…そんなことないのよ、』
美月さんが言った“そんなことないのよ”という言葉は 僕の耳には上手く伝わらなくて
儚く雪の中に消えていった。
『あら、!』
『もうこんな時間だわ』
『貴方は、もう家にお帰りなさい。』
[あ、いや、その….]
どうしよう。美月さんに迷惑はかけられない。
家がないだなんて、口が裂けても言えない。
『..どうしたの、?』
『もしかして、帰れないの、?』
[いや、帰れないのではなく、!…]
『…貴方になにがあったのかは聞かないわ。』
『でも、困っているんでしょう、?』
だめだ。弱音を吐いてはいけない。
美月さんならきっと助けてくれるから。
心が温かくなるのはだめなのに。
だめなのに_______。
[…実は、帰る家がないんです。]
『…そうなのね。』
『ありがとう。勇気をだしてお話してくれて。』
言ってしまった。
一目惚れというものはこんなに怖いものなのか。
こんなに素直になれるものなのか。
[お願いです。もう少しここで話しませんか?]
まだ美月さんとお話をしていたい。
お別れしたくない。
もう少し僕はこの温かさに触れられる。
限界が来るまで一緒にいたいのに。
『..ごめんなさい。もう帰らないといけないの。』
『助けてあげたい気持ちはあるのよ。』
『でも、お母様が…。』
[あ、そ、そうなんですか….]
〚本当にごめんなさいね。助けてあげられなくて、。〛
〚こんなものでもいいなら上げるわ。〛
美月さんは優しく僕の手にカイロを置いた。
[、!?? ]
ああ、駄目だ。駄目なんだよ。
美月さん。僕はこれを受け取れない。
[いや、違います、!!]
[気を遣って欲しかったわけじゃないんです。]
そんなことを言いながら美月さんの手にカイロを押し返した。
[なので気にしないで、僕のことはもう忘れてください。]
[早く帰らないといけないんでしょう?]
『..カイロいらないの、?。』
[はい。寒くはないので。笑]
〚そうなの..。〛
『それじゃあ、さようなら。また何処かで会えたらお話しましょう、?』
[..ええ。喜んで。]
限界がある恋。結ばれても解かれていく。
寒さなんて感じない。この気持ちもいつかは消える。
そんなことをわかっていながらやめられない僕は馬鹿だ。
いつも自分に嘘をつく。
現実が目を合わせてくれない。
気づいてないふりなんて当たり前。
もっと貴方に尽くせば僕も素直になれるだろうか。
ねえ。美月さん。
僕に“恋”という魔法をかけて。
これ以上はなにも求めないから。
僕と貴方で最高の一時を過ごそう____。
コメント
19件
クリスマスは まだですがとても切なく そして素晴らしい小説ですね 本当に素敵です
好きすぎて色んなところリピートたくさんしちゃいました💞 クリスマスは1年に1日しかありませんからね、恋もほどけていったのかもしれません……もう一度繋がりますように!
好き、🫶 クリスマスの切なさが伝わってくる!