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純喜と恋人になって、瑠姫はこれ以上ないくらい幸せだった。
でも、その幸せは同時に、彼の中に激しい焦燥感を募らせていく。
この幸せはいつか終わってしまう。この優しい純喜との時間は、もう二度と訪れない。だったら、本当に、このまま純喜と付き合ってていいのだろうか。
そう思うと、胸が締め付けられて息苦しくなった。
未来でアイドルとして輝く純喜の姿を知っているからこそ、彼が経験するであろう苦労や挫折も知っている。
このまま過去にいて、彼の人生を変えてしまっていいのか?
未来のJO1は、もし自分が過去に残り続けたせいで、違う形になってしまったら?
そんな不安が、瑠姫を蝕んでいった。
純喜とのデート中も、ふと未来のことが頭をよぎり、会話が途切れてしまうことが増えた。
美味しいものを食べても、綺麗な景色を見ても、彼の心はここになかった。
純喜はそんな瑠姫の変化に気づき、心配そうに尋ねる。
「なぁ、最近さ、なんか悩んどる? 悩んどるんやったら…俺に話してくれへんか?…俺、瑠姫が思ってる以上に、瑠姫のこと見とるからさ」
瑠姫は、純喜の真っ直ぐな瞳から逃げるように顔をそむける。
「…なんでもないよ。ちょっと考えごとをしてただけ」
そう言って笑顔を見せるけど、その笑顔がひどく不自然なことを、純喜は知っていた。
瑠姫の瞳の奥に宿る、深い悲しみと諦めを、彼は感じ取っていた。
ある日、純喜が瑠姫の部屋に遊びに来た時だった。
瑠姫がシャワーを浴びている間に、テーブルに置きっぱなしになっていた瑠姫のスマホが目に入った。
画面に表示された見慣れない日付と、未来のニュース記事。
純喜は、そこに書かれている「JO1」というグループ名と、そのメンバーである自分の写真を見て、混乱した。
何が起こっているのか理解できず、指が震える。
瑠姫がシャワーから出てきた時、純喜は黙ってスマホを指さした。
「これ…どういうこと?」
その震える声に、瑠姫は顔を青ざめる。
ついにこの時が来てしまった。もう、隠し通すことはできない。
瑠姫は、震える声で、自分が未来から来たこと、そして純喜に会いたくて、ずっと嘘をついていたことを告白した。
未来の自分と純喜が、同じグループのメンバーであること。そして、お互いを支え合う、かけがえのない存在だったこと。
瑠姫は、自分が純喜の人生を狂わせてしまうのではないかという不安を、涙ながらに打ち明けた。
「ごめん…!俺、お前を傷つけたくなかったんだ…!」
純喜は、怒りや悲しみではなく、ただ静かに瑠姫の言葉を聞いていた。
そして、瑠姫の目を見て、優しく微笑む。
「お前が未来から来たってこと、信じる。やって、お前といると、初めて会った気がしいひんかったから。」
その言葉に、瑠姫の瞳から大粒の涙が溢れ出した。
純喜は、そんな瑠姫を優しく抱きしめ、背中をさする。
彼の腕の中で、瑠姫は子供のように泣いた。
純喜は、過去の自分が知る由もない未来の出来事や、瑠姫が一人で抱えていた苦悩を想像し、胸が締め付けられた。
「瑠姫がいた未来の俺は、多分、すごく幸せやったんやな」
純喜の言葉に、瑠姫はさらに泣いた。
彼は、自分のことを想って行動してくれたことに感謝する。
そして、別れの時が迫っていることを悟り、瑠姫を抱きしめる腕に、さらに力を込めた。
「どんなに時が経っても、俺は瑠姫を忘れへん。いつか、どんな形でもええから、必ずまた会おうな」
瑠姫は、純喜の言葉を胸に、元の時代に戻ることを決意する。
彼の頬に流れる温かい涙が、この恋が本物だったことを証明していた。