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第3話 森の番人
じゃぱぱと歩き始めて、どれくらい経っただろう。
木々が、どんどん密になっていく。
空気が、さっきまでと違う。
――重い。
「……なぁ、じゃぱぱ。」
「ん?」
「ここ、なんか変やない?」
「あー。」
じゃぱぱは辺りを見回す。
「たしかに。何かに視られてる感じがする。」
「何か?」
「ほら、あそこ。」
じゃぱぱが指さす。
木の上。
ツタの絡まる枝の陰に、何かがいる。
「……!」
俺は息を呑んだ。
その瞬間。
ツタが、勢いよく伸びてきた。
「うわっ!?」
俺は後ろへ飛びのく。
ツタは俺のいた場所を叩きつけた。
地面が抉れる。
「……本気やん。」
「みたいだね。」
じゃぱぱは、まだ笑ってる。
――こんな状況で、なんでそんな余裕なんや。
「あなたたち、何者?」
声がした。
木の上から、ゆっくりと降りてくる人影。
全身にツタが巻き付いた、女の子だった。
白いふわふわの花みたいなワンピース。
桃色の髪の毛。
鎖骨の辺りに、ピンク色の花のタトゥー。
「この森は、私が守ってるの。」
冷たい声。
「無断で立ち入る者は――排除する。」
「排除って、物騒だなぁ。」
じゃぱぱが影を広げる。
「別に、荒らしに来たわけじゃないんだけど。」
「知らない。」
女の子は表情を変えない。
「この森に入る者は、皆そう言う。」
ツタが再び伸びる。
今度は、じゃぱぱへ。
「――お、来たね。」
じゃぱぱが影の剣を構える。
ツタを斬り払う。
「たっつん、下がってて。」
「わ、分かった!」
俺は木の陰に隠れる。
――そこからは、目まぐるしかった。
ツタが四方から伸び、じゃぱぱがそれを斬り払いながら距離を詰める。
「意外と、やるね。」
じゃぱぱの声が、少しだけ真剣になる。
「でも――」
影が地面を這い、女の子の足元へ。
「そろそろ、終わりにしよっか。」
影が伸びる。
女の子の足を絡め取ろうとした――その時。
「――甘い。」
女の子がぱちん、と指を鳴らす。
瞬間。
地面が、眩しく光った。
「え?」
じゃぱぱの足元。
地面に隠れていた、無数のツタが一気に噴き出す。
「うわっ!?」
地面が割れる大きな音。
じゃぱぱの身体が、あっという間に縛り上げられる。
「……罠、か。」
じゃぱぱの声に、余裕が消えた。
「最初から。」
女の子が静かに言う。
「この森に踏み込んだ瞬間から、罠は仕掛けてあった。」
「……マジかー。」
じゃぱぱがもがくが、ツタはびくともしない。
「……これは、まずいんちゃう……?」
俺は木の陰から、様子を伺う。
女の子がゆっくりと近づいていく。
「あなたたちがここへ来た理由を話して。話さないなら――」
ツタが、じゃぱぱの首元に触れる。
「……ここで、終わりにするよ。」
「ちょ、待って!」
俺は思わず飛び出していた。
「――え。」
のあの視線が、俺に向く。
「いつからいたの…?魔力を感じなかった…。」
「…も、もしかして……ニンゲン?」
「そ、そう……!」
俺は両手を上げる。
武器も何もない。
ただの人間だと、示すみたいに。
「俺たち、この森を荒らしに来たわけやなくて。ただ、帰る方法を探してて……。」
「帰る、方法?」
のあの目が、少し細まる。
「ニンゲンが、なんでこんな場所に?」
「それは、俺にも分からへんくて……。」
俺は必死に言葉を続ける。
「でも一つだけ言えるのは――こいつは、俺を助けてくれただけや。」
じゃぱぱを指す。
「森を荒らす気なんて、最初からなかった。」
「……。」
のあは、しばらく黙っていた。
そして。
「……本当に?」
「本当。」
俺は頷く。
「もし疑うなら、俺だけ好きにしてもらっても構わへん。やから、こいつだけは離してもらえない?」
「た、たっつん……?」
「俺は大丈夫だから――」
じゃぱぱが焦った声を出す。
「いいから、黙っといて。」
俺は女の子をまっすぐ見た。
女の子の俺を見る目は冷たい。
ツタが女の子を守るように巻き付いていく。
――怖い。
正直、めちゃくちゃ怖い。
でも。
じゃぱぱがここで消されるのだけは、嫌やった。
「……。」
女の子は、じっと俺を見つめる。
長い、沈黙。
そして――
「……分かった。」
ツタが、ゆっくりと緩んでいく。
「え。」
「あなたの目を見て、分かった。嘘は、言っていないよね。」
女の子はそう言うと、初めて少しだけ表情を緩めた。
「疑ってごめんね。この森には、悪意を持って踏み込む者も多いから。」
「私はのあ。この森を守ってるの。」
「たつや…です。…こいつはじゃぱぱ。」
「へー…。」
のあが指を再びぱちん、と鳴らす。
ツタがじゃぱぱを離し、地面へ戻っていく。
「……まじで、びっくりした……。」
じゃぱぱが、拘束から解放されてへたり込む。
「死ぬかと思った……。」
「油断していたあなたが悪いでしょ。」
のあちゃんは、ぴしゃりと言った。
「……それより。」
のあちゃんの視線が、俺に向く。
「さっきの目。ニンゲンなのに…覚悟を決めた目、だった。」
「……そんな、大層なもんやないよ。」
俺は苦笑いする。
「ただ、こいつを見捨てられへんかっただけ。」
「……ふぅん。」
のあちゃんは、俺をじっと見つめたまま、近づいてくる。
「少し、触れてもいい?」
「……え?」
のあが手をかざす。
細い根が一本、俺の腕にそっと巻き付く。
根が綺麗に光る。
「……。」
のあの表情が、微かに変わった。
「……何、これ。」
「……のあちゃん?」
じゃぱぱが訝しむ。
「……変な感じがする。」
のあが呟く。
「ニンゲンの、はずなのに。」
「……どういうこと?」
「……分からない。」
のあは根を解く。
「あなたは何者?」
「人間…。」
俺は、自分の腕を見た。
――何が、違うって言うんや。
「まぁ、いいや。」
「よろしくね。たっつんさん。」
「あ、そっちで呼ぶんや。」
「たつや…って呼びにくくない?」
魔族には俺の名前が呼びにくいんか?
またケチをつけられた 。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
のあちゃん結構キャラ崩壊しちゃってます。すいません!
次回 第4話 賢い女の子 100♡↑
Rei7
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#もか
もか@リムるな🫶小説コン開催
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コメント
1件
よかった、第3話!戦闘シーンのテンポが良くて、のあちゃんのツタの罠が見事だったね。最初は冷徹な番人かと思ったけど、たつやの目を見て「嘘は言っていない」と判断するところに、ちゃんと審美眼のあるキャラだと感じた。ラストの「何、これ」には設定の鍵が潜んでそうで、続きが気になる。