テラーノベル
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「アウレーリア! いつまで寝てるの!」
……うんん……なに……。
「いい加減起きなさい! 遅刻するわよ!」
「ピギャ!」
いったーーー! なに!?
「いい加減起きなさい! そんなことじゃ、さっちゃんに愛想つかされるわよ!」
「それはダメ!」
「じゃあ起きなさい」
「……あ、うん」
いつの間にか朝になってた。
お母さんに布団ごとベットから落とされたみたい。
……あれ、寝る前ってなにしてたっけ?
お風呂から上がったあと……ん? お風呂から上がった後の記憶がないよ。
どうやって部屋まで戻ってきたかも思い出せない……疲れすぎたせいかな? 昨日は濃い1日だったもんね。
「おはよー……」
「はい、おはよう。さっさと支度しなさい、遅刻するわよ」
「はーい」
洗面所で整えて、ご飯を食べて、部屋で着替える。いつのもの流れだ。
「今日はどの服にしようかなー……」
今日の服を選ぶ。
やっぱり可愛いのがいいかな……でも、なにか違和感があるね……。
この服かな? いや、こっち? それともこっち? どれもピンとこない……。なんでだろう?
「これでいっか!」
結局選んだのは一番シンプルなワンピース。
……これ、久しぶりに着たな。
わたしが選んだ物じゃなくて、お母さんが選んだ服。買ってもらって一度着ただけで眠ってた。
「アクセサリーは……。着けなくてもいいかな……」
今日はアクセサリーをつける気にならない。なんか、わたしのイメージと違う気がしたから。
……なんでだろう? わたしは可愛いからもっと可愛くなった方がいいよね? でも、そんな気分じゃない。
ホントなんなんだろう? うーん、謎だ……。
「いってきまーす」
「はい、いってらっしゃい。あら、今日はずいぶんと質素な格好ね?」
「うん、なんか質素な気分だったから」
「そう。病気じゃなきゃいいけど」
……ひどい言い方だよ。わたしが質素な格好をすると病気扱いなの?
「とりあえず気を付けてね。調子が悪かったら早めに言うのよ」
「うん、ありがとー」
昨日に続いてまた心配されたよ……雪、降ってないよね?
あ、露店商のジョンさんだ。今日も早いねー。
「ジョンさん、おはよう!」
「お嬢様、おはようございます!」
「ほえ?」
……え? なに言ってるの? お嬢様? 誰が?
周りを見てもそれらしき人はいない。
「ジョンさん、お嬢様って誰のこと?」
「はは、嬢ちゃんの事だよ!」
「わたし?」
……なんでわたしがお嬢様なの? 頭でも打った?
「お金持ちのご子息と婚約したらしいじゃないか! おめでとう!」
「ぶっ!!」
「そんな風に噴き出してちゃ、婚約破棄されるぞ! おしとやかにならなきゃな!」
なに言ってるの! 婚約!? わたしが!? お金持ちのご子息と!?
「ジョ、ジョンさん……なに言ってるのかわからないよ」
「昨日、高級魔動車に乗ってただろ。あんなもんに乗れるのは超大金持ちだけさ」
「いや、ま、たしかに、高級魔動車に乗ってたけど、婚約とかじゃないよ」
「違うのか? もう近所で知らない者がいないくらい噂になってるぞ」
……近所で知らない者がいない!? 怖すぎるよ! ご近所コミュニティ凄すぎ!
「違うから、婚約とかじゃないから。ジョンさんから違ってたって噂を流しておいて」
「じゃあなんで、あんな立派な魔動車に乗ってたんだ?」
「レクルシアって民兵組織は知ってる?」
「ああ、もちろんだ」
「そこの支部長さんと知り合いになって支部に遊びに行ったの。そうしたら帰りが遅くなって送ってもらった、ただそれだけだよ」
……うん、それだけだよね。お金持ちと婚約なんて根も葉もない噂だよ。
「そりゃすげえな! 嬢ちゃんは将来の幹部ってか!」
「違うから」
キッパリ否定しておこう。これ以上、変な噂を流されるのはゴメンだ。
「あんな魔動車で送ってもらうって事は将来を期待されてるってことだぞ! 前祝いだ、これ持ってきな!」
「……違うけど、ありがとう。貰っとくよ……」
りんごが沢山入った袋を渡された……。
これはなにを言っても変な風に解釈されるやつだ、諦めよう。
「……じゃあね、ジョンさん。お仕事頑張ってね」
「おう! 嬢ちゃんも早く幹部になれるように頑張れよ!」
「うん、頑張るよ……」
早くさっちゃんと合流しよう。
「アウレーリアちゃん、おめでとう!」
「どうもー」
「嬢ちゃん、おめでとう!」
「どうもー」
「お姉ちゃん……、……!。」
「どうもー」
「……、……!」
「どうもー」
……何回言われたかな? 5回目辺りから数えるのをやめたけど……。
昨日の手振り機械の真似が今日も役立つとは思わなかったよ。
これってまずくない? ずっとこんな調子が続くの? 途中、2階の窓から花びらをまかれたのはビックリ仰天だよ。
ホントにもう勘弁してほしい……。
「アリアちゃんおはよう。疲れてるみたいだけど大丈夫?」
「おはよう。疲れたけど大丈夫だよ……さっちゃんの頭、花びら付いてるよ」
「残ってた? ちゃんとはらったつもりだったんだけどね。アリアちゃんも付いてるからはらってあげるよ」
「ありがとう……」
優しいなー、癒されるよー。
「さっちゃんも祝福の洗礼を受けたんだね」
「うん。大変なことになっちゃったね」
「ずっとこんな調子なのかな? 否定しても変な風に解釈されるし、もう疲れたよ……」
「今日1日は続くと思うけど、明日には落ち着いてるんじゃないのかな? みんな刺激に飢えていて、ちょっと面白がってるだけだと思うよ」
刺激に飢えてわたしたちを餌にしないでほしい。
……もしかして、学校でもこんな感じ? 子供にも祝福されたような気がするし、大人だけじゃなく子供にも伝わってる気がする。さっちゃんは今日1日は続くって言ってたよね。今日1日って、まさか、家に帰るまで?
「学校についたらどうなるんだろう……」
「祝福されるか、奇異な目で見られるかどっちかだと思うよ」
「そっか……」
さっちゃんとの合流後も、祝福されたり、指さされたり、じーと見られたりした。
……もういいよ。きっと、反応するからみんな面白がるんだ。スルーしよう!
「さっちゃん、また放課後ね」
「うん、またね」
……まずい、さっちゃんと別れたら急に不安になってきた。
心細いよー。さっちゃん、カムバッーク!
「アリアちゃん、おはよう! 聞いたんだけどさ……」
「うん、違うから」
「えー、違うのー。じゃあ……」
反応してしまった。ジョンさんの悪夢再びだよ!
でも、クラスメイトを無視したら余計に面倒なことになりそうだし、仕方ないよね……。
「おーい、ホームルーム始めるぞー、席に着けー」
先生の存在がすごく頼もしく感じる! ありがとう先生! ずっとホームルームでいいよ!
「アウレーリアをあまりからかうなよー。いきなりお嬢様になって大変なんだから(笑)」
……先生、あんた敵だよ。なに言ってんの、さっさと退場して。
「……以上でホームルームは終わりだ、授業を頑張るように」
やっと退場してくれた。
先生のせいで質問密度が上がったよ、どうしてくれるの? 早く授業始まってーーー!
「はーい、じゃあ社会学の授業を始めます」
ありがとう、社会学! 今まで無視してゴメンね!
これからは君としっかり向き合うよ! わたしは恩は恩で返すタイプだからね!
「では数学の授業を始めます」
ありがとう、数学! 今まで邪険にしてゴメンね!
これからは君としっかり向き合うよ! わたしは恩は恩で返すタイプだからね!
「よーし、今日の体育はドッジボールだ!」
ありがとう、体育! 今まで以上に君が好きになったよ!
わたしは好きなものはとことん好きになるタイプだから!
「……やっと終わったー。これで帰れるよー……」
長かった授業が終わった。
給食時間が苦痛だったのなんて初めての経験だよ。
あとはさっちゃんの授業が終わるのを待ってるだけだ。
……どこで待ってようかな……1時間近くあるしね。できれば人の少ない所で時間をつぶしたい。この時間、人が少ない場所……図書室とか?
下級生で放課後に図書室を使う人はほとんどいない。大体は部活か帰宅だ。
……うん、図書室に行こう!
さっちゃんの下駄箱にメモを残して図書室へ向かう。
「やっぱり空いてるね」
図書室には3人しかない。凄く安心するよ……。
さて、なにを読もうかな? 図書室ってほとんど来たことがないから、どんな本があるのか分からないんだよね。国語の時間に強制されたのと、自習時間でしか使ったことがない。
「うーーん……」
本棚を眺める。
何もないね。放課後まで社会学や数学はしたくない。
……ゴメンね、君たちへの恩は授業時間で返したと思ってるんだ。正直、もう関わりたくない。
他には小説が並んでる。恋物語、騎士物語、推理小説……興味ないね。
「うーーん……」
違う棚を見てみる。
……こっちは戦闘関連かな? 授業ではまだ戦闘訓練はしてないから、こういった本はまだ見たことがない。
「どれどれ……」
一冊の本を取ってみてみる。
『初めての魔術講座』
……どんな内容かな? 1行目から「まずは焔を出します」とか書いてあったらどうしよう。ワクワクと不安が混じる。
「……んん? なにこれ? 意味が分からないよ?」
本には魔力や魔術の理屈? みたいなのがいっぱい書いてある。
難しすぎて意味が分からない。1ページでリタイアだ。
……なんでこんなに難しく考えるの? イメージして魔力を使うだけだよね? これって初心者じゃなくて、研究者向けの本じゃない?
「こっちの本はどうかな……」
『これであなたもベテラン魔術師!』
「……これも意味不明だね。なんでこんなに難しく考えるんだろ?」
しかも、○○魔術は○○種類とか断定してるし、焔が載ってないよ。情報が古いのかな?
それに、魔術の種類は無限大じゃないの?
……わたしの「シチューブルブル」や「砂漠の風」は魔術じゃない?
魔力を使う=魔術って思ってたけど違うのかな? 本に載ってる魔術は戦闘を想定した攻撃や防御のものばっかりだ。
……今度、シズカさんにでも聞いてみよう。
「魔術の本はもういいや、武技の本ってないかな」
わたしは魔戦士だからね!
魔術はもちろん、武技も使って戦うんだ!
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