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犬狼鳥(けんろうちょう)・黒子
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犬狼鳥(けんろうちょう)・黒子
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#countryhumans
monake@引退&イラコン
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注意書き(簡易)
これらの作品に政治的意図は一切ございません。創作物であることを踏まえた上、許すことのできる方のみ先へ進んでください。
不定期更新です!!!!
設定があります。説明をすることはないので自由に解釈してください。
私は史実に基づいた、完全な自己解釈による
“CountryHumans”を綴ります。貴方の心に届く物語でありますように。
会社の静かな空間で、日本はパソコンの画面とにらめっこ。なにやら、調べことをしている。
一昨日の17日は「東京の日」だったので江戸さんと会えた。だからこそ、今日は世界で明るくお祝いできるような、平和な記念日があるはず!そう思って、日本は軽い気持ちでデータベースの検索をかけたのだった。
「……って、ええ? あれ……? なんだか物凄くたくさん不穏な記録ばかり出てくるのですが……祝うもなにもない……」
検索結果が出されたとき、日本の指がピタリと止まる。お祝いどころか、そこにあったのは生々しい歴史の傷跡ばかりだった。
そこへ、コーラを片手にしたアメリカがふらっと部屋に入ってきた。日本の悩ましい表情を見て、不思議そうに傾げる。
「HAHA!どうしたんだい日本、そんなに眉間にシワ寄せて。……へぇ、仕事を放りだして、今日も何か記念日がないか調べてるのか?」
「アメリカさんもあまりやっていないでしょう……。私は一応並行してやっていますよ。」
図星だったのか、アメリカさんの顔は暗くなっていく。その暗さを隠すように覗き込んだ。
「どれどれ? ……んー、俺のところは2000年に二千円札の発行に絡んだくらいで、そこまでデカい歴史はねぇぞ? 俺んとこはあんまないわ。」
「ってぇ なんだよこれ、戦争に冷戦、暗殺に蜂起って……これ全部『7月19日』起きたことなのか!? お祝いどころか戦禍のオンパレードじゃん!」
「そうなんです……。お祝いを探すつもりだったのですが、それは少なくて……。史実から出すと、あれやこれやと戦争などの引き金になった事件が重なっていまして……」
私たちの騒ぎを聞きつけて、紅茶のカップを傾けながらイギリスさんが優雅に歩み寄ってきた。しかし、見下ろしてきた冷ややかな目は怒りが読み取れる。
「お二方、仕事はどうしましたか?」
「「あ……」」
仕事が止まるお昼の休憩時間。再度チャレンジといわんばかりに日本はパソコンに手をつける。
「なんだ、また調べるんだな。良いやつあるかー?」
するとまた、後ろから先程と同じように声をかけられる。イギリスさんは相変わらずだな。
「またですか、アメリカ。我が国の長い歴史に比べれば、1日の出来事など……ほう。1545年の我が軍艦メアリー・ローズの沈没に、ジェーンの廃位か。随分と懐かしい傷跡を広げているじゃないか。」
すると、その背後から帽子を揺らしたフランスが、フッと鼻で笑って会話に加わった。
「……ふっ、自分のところの不名誉な歴史はスルーかい? イギリス。1870年の時は我が国がプロイセンに宣戦布告した『普仏戦争の開戦日』だ。これこそ歴史の転換点だろう?」
「…………西欧の身内泥沼劇などどうでもいい。」
近くの椅子の背もたれに深く寄りかかり、地を這うような冷たい声で遮ったのはロシアだった。ウォッカの瓶を弄びながら、冷徹な視線を周囲に投げる。
「それなら1917年、臨時政府がレーニンの逮捕命令を出した『七月事件』のほうが、その後の冷戦の火種という意味でも歴史の転換点、だろう。」
「冷戦言うなら、我が国だって1864年、太平天国の乱が終結したアル。」
中国が腕を組み、不機嫌そうにフンと息を吐いた。
「14年も続いた大内乱の終わりアルよ。どれもこれも重すぎる歴史ばかりアルな。おい日本、本当にこれお祝いを探した結果アルか?」
「すみません、私にも予想外で……掘り起こせば掘り起こすほど、全員に何かしらの因縁が返ってくる日みたいです……」
そこまで重い話が続くと、部屋の空気が完全に凍りついてしまう。日本が遠い目をして冷や汗を流していると、ついに耐えかねたイタリアが涙目で二人の間に割り込んできた。
「ちょっとみんな待ってよー! なんでそんな怖い話ばかりするのさ! 俺だって攻城戦してたけどさ、もう暗い話はやめてようぜ……。」
「でも、首を突っ込んできたのは皆さんでは……?」
【…………。】
残念ながら、全員返す言葉は見つからなかったらしい。
ロシアが低く笑いながら、呆れたように呟く。
「そんなことを言うのなら、平和的なのか? 日本独自の記念日は……」
「一応、桃の日はありますけど……世界的なものではありませんし……」
日本は慌てて両手を振りながら補足をする。日本の記念日は血生臭い大戦争や暗殺の記録に比べれば、桃の収穫を祝うものは彼らからすればおとぎ話のように平和的に映るのだろう。イタリアがすがるような目で日本を見つめた。
「じゃあ、今日は他に何の日があるんだよぉ……! お願いだから、もっとこう、誰も傷つかないやつ教えてよ!」
「うーんどうかな……」
日本はそう言って、再びキーボードを叩いて検索条件を広げた。血生臭い話でもなく、ローカルな話題でもない、素敵な日はあるのか。画面をスクロールしていた日本の目が、ある一枚の美しい画像のページで止まった。
「あ、皆さん、これならどうでしょう。2013年の今日、7月19日は『地球が微笑んだ日』と呼ばれているそうです。」
「地球が微笑んだ日……? なんだいそりゃ、ずいぶんロマンチックな名前じゃないか。」
アメリカがコーラのボトルを机に置き、興味深そうに画面を覗き込んできた。日本は説明を読み上げた。
「えーっとなになに……『太陽の光が土星に遮られた瞬間を狙って、宇宙探査機カッシーニが土星の輪と一緒に、はるか遠くにある地球を撮影した日。その撮影の時間に合わせて、世界中の人たちが夜空の土星を見上げて、みんなで地球から笑顔を返そうっていうイベントが行われた』…………らしいです。」
説明されても、あまりピンと来る国が多くなかったのか、反応は薄い。
「あー?なんだそれ。なんかよく分かんないな。」
「…………カッシーニ・ホイヘンスを打ち上げたのは、貴方でしょう?」
イギリスさんやフランスさんのヨーロッパ勢は呆れた顔でアメリカさんを見る。なぜか、アメリカさんはそれを睨み返している。
その間に、日本が画面に映し出したのは、広大な宇宙の暗闇の中に、ぽつんと輝く一粒の青い光の画像だった。
「……ほう。土星の陰から俺たちを撮ったのか。なかなか粋なことをするじゃないか。」
フランスがワイングラスを傾けながら、画面の青い点を少しだけ優しい目で見つめた。
「ふん……。宇宙から見れば、国境も、今日まで俺たちが奪い合ってきた土地の境界線も、何一つ見えないな。」
ロシアが静かにそう呟くと、隣の中国も小さく息を吐いて頷いた。
「たまにはいいことを言うアルな、ロシア。今日に起きたことよりも、あの小さな光の中のほんの些細な出来事アルよ。」
「そうだね! 暗い歴史より、世界中のみんなが同じ時間に空を見上げて笑ってたっていう歴史のほうが、断然素敵だよ〜!」
イタリアがようやく安心したように満面の笑みを浮かべると、イギリスもフッと口元を緩めて懐中時計をポケットに仕舞った。
「やれやれ。お祝いを探すつもりが、随分と遠い宇宙まで答えを求めに行くことになってしまったね、日本。」
「はは……。でも、全員が静かになるお題が見つかって良かったです。」
日本はホッと胸をなでおろし、手元のパソコンをそっと閉じた。
「まぁ、祝うなら他の日じゃね?今日よりかは有名な日が揃っていると思うぞ。」
「………………確かに、無理に今日を祝おうとしなくてもよかったですね。」
アメリカさんの言う通りだ。当たり前だが、人が目を置かない今日よりも、様々な人が知る違う日の方が、祝いやすい。
「ま、まぁ。今日は仕事も終わりましたし、帰りましょうか。他の皆さんに迷惑をかけてしまいましたし。」
7月19日のネタ不足
全く関係ありませんが、私自身が天文が大好きなので、よく天文の話が出てくることがあるのはご了承を。
コメント
1件
わあ、このエピソード、すごく良かったです……!🌷 「今日は何の日?」と軽い気持ちで調べた日本が、各国の歴史の傷跡を次々と掘り起こしてしまって、どんどん空気が重くなっていく流れがまるでコントのようで笑ってしまいました。でも最後に「地球が微笑んだ日」の写真が出てきた瞬間、ぱっと空気が変わって、読んでいて私もほっとしました。宇宙から見たら国境も歴史も関係ないんだな、って。ひとつの写真に全員が静かになる、その描き方が本当に素敵でした。