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本編 みどりいろ視点
み 「 クソ……ッ! 」
自分はどこまで無力なんだ。
ラダオクンが暴走した時も、ぐちつぼがいた時も。
そして、今も……ッ
拳を握りしめ、ふかふかのベッドにぶつけたが、大した音は出なかった。が、腕に何かが当たった。
み 「 あ、ネックレス… 」
物心ついた頃から持っていたこれは、アクセサリーと言うよりかは何かの鍵のような形をしている。
ただ絶対に大事なものだ、というのは確実にわかる。
普段慣れすぎて鍵の事を意識していなかったが、今思いだした。
これと一緒に、小さな箱があったはずだ。
「 本当に困って、何が起きても大丈夫だと言えるなら開けろ 」
そう、箱には彫られていた。
皆が心配だし、これ以上迷惑もかけられない。
力が欲しい。
覚悟は出来ている。
点滴のチューブを引き抜き、ベッドから転がり落ちる。
痛いが、我慢出来る。
そのまま地面を這って、自室へと行く。
階段が凄くしんどかった。
み 「 確カ、コノ引キ出シニ… 」
あった!
恐る恐る、鍵を差し込む。
すると、何をしてもあかなかった箱が、開いた。
箱を開けると、磨かれた綺麗な丸い水晶が入っていた。
それは辺りの光を反射して美しく光っていて、不思議な感じがした。
隣には小さな古びた紙切れが4つ折りにされていた。
広げて読むと、「 水晶を飲み込め 」と書いてあった。
いや、いくら小さいからと言えど、飲み込むとなれば喉に詰まらせて死ぬ可能性もある。
…それでも、やる価値はある。
もうこれ以上足手まといにならないために、覚悟したんだろ…!
勢いよく飲み込もうと口に放り込んだ。が、サイズが大きいので身体が本能的に拒否反応を起こして上手く飲み込めない。
み 「 ゥ”ッ、んぐっ…、ッは、お”ェッ… 」
それでも無理やり飲み込むと、食道を水晶が通っていくのが分かった。
不快感に顔を歪ませていると、やがて胃に辿り着きそこで水晶がシュワシュワと溶けていくのがわかった。
み 「 !?ッツ~~~~!! 」
突然の割られるような頭の痛みに、声を出す事も出来ずにうずくまる。
数十秒後、頭痛が収まって、オレは全てを取り戻した。
みどりいろ視点、過去
オレは飼い主に絞殺された。
親が金に目が眩み、オレを売ったという事実はあまりオレには関係なかった。
別に顔も知らない相手の事なんて怨みすらしない。
それに、物心ついた時からこの生活なのでそれ以上も以下も求めなかった。
まぁそのお陰で飼い主に従順だったオレは、特に怒られたりすることもないが、飼い主の機嫌によっては理由もなく殴られることもあった。
いつ出来たかも分からない痣を1枚の薄い白かったはずの布を言っただけの衣服で隠して、日々を過ごしていた。
そんなオレでも唯一孤独が嫌いだった。
他人とまともにコミュニケーションも取れないくせに、他人を求めているのだから矛盾しているのは分かってる。
でも、ずっと地下の便所と鎖しかない牢獄にいるのは苦だった。
ある日、オレは買い取られた。
いつも見せない飼い主の笑顔に少しゾッとしたが、そのまま新しい飼い主について行った。
だが、結果オレは数日で返品された。
異なる飼い主にも、買われては返品された。
人見知りが故の無愛想、運動不足で労働に向かない、知識不足で会話が通じない。文字が読めない。
その日も返品されて、馬車に乗っていた。
すると、外から悲鳴と戦闘音が聞こえてきて、やがて数分経つとピタリと止まった。
そして盗賊と思われる人が複数が現れ馬車を物色したが、布切れだと思われたのか、はたまた見逃されたのか、金目の物を盗って居なくなった。
とりあえずそのままと言う訳にも行かないので、元の飼い主の場所に戻る事にした。
「 なんでお前はいつも返品されてくるんだよ!さっさとどっか行けよ! 」
帰って事情を言うと、蹴飛ばされた。
「 …食費の方がかさむんだよ。 」
そう言われ、オレは首を絞められた。
そして、死んだ。
だが、意識がある。体も動く。むしろ先までより動きやすい。
…空を飛べる。足の先がない。
何が起きているか分からないが、自分の好奇心の方が勝っていた。
飼い主に声を掛けてみた。すると、
「 ヒェェエッ!ば、化けてでやがったな!幽霊が!」
との事だ。どうやらオレは幽霊になったらしい。
「 は、早く出てけェ! 」
命令されたので、とりあえずその場を離れた。
雨が降っていたので、雨宿りと思い建物を探していると、大きな建物を見つけた。
扉を開け入ろうとすると、自分の手がすり抜けた。
何度触ろうとしても同じだった。
なんなら手どころか体全体がすり抜けた。
そのお陰で中に入れた。
中は広く、本が沢山壁に並べてあり、それに加え沢山の本棚にも本が詰まっており、本棚のせいで中は入り組んでいた。
せっかくなので本を読んでみようと思ったが、本にも触れれないし、なんなら文字も読めない。
どうしたものかと思っていると、知らない子供に声をかけられた。
「 ねぇ、あなたゆうれいさん…? 」
急に話しかけられてびっくりしたが、子供相手だと何故か普段より話せた。
み 「 …ソウナンジャナイ?ワカンナイ。 」
「 ゆうれいだよ!」
み 「 フーン、ソウナンダ。 」
「 ゆうれいさん、おなまえは? 」
名前…わからない。
そういえばオレを殺した飼い主は商品を色で分けて呼んでいた。
それで、オレは…
み 「 ミドリ、…? 」
「 みどりっていうんだ!アタシはナツキ! 」
「 ねぇねぇ、ゆうれいさんは本よまないの…? 」
み 「 モジヨメナイカラ… 」
「 じゃあアタシが教えてあげる! 」
それから毎日ナツキはここにやってきた。
オレは文字を1ヶ月程で覚え、やがて魔導書という魔法について書かれた本をよく読むようになった。
み 「 ミて、コレでモノをウゴカせるヨウにナッタヨ 」
ナ 「 凄い!これで私が本を取らなくても自分で読めるようになったね! 」
こうして平和な日々が続くと思っていたんだ。
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