「……隠してること?」
もしかして政宗医師との付き合いのことを言われてるんだろうかと、ふと考えたけれど、その曖昧な言いように、まさかとも思い、
「隠してることなんて…別に」
そう咄嗟に誤魔化した。
すると──、
「またそうやって、知らない振りして……」
と、彼女は口にして、
「前にも言ったはずなのに……”見てる“って……」
唇の両端を弓成りに吊り上げ、うっすらと笑った。
その薄ら笑いに、以前に彼女とランチを共にした時に、
『……永瀬さんて、でも……流されて、なんだかハマりやすそうですよね。……笹井さんなんかより、ずっとハマりやすそう……』
そんな風に指摘をされていたことを、俄かに思い出した──。
あの時は、まだ政宗先生との関係を自分の中で消化し切れてもいなくて、彼女になんとなく不審感を覚えただけだったけれど、
もしも、あの頃から近野さんには関係に気づかれていて、今も、『知っていて、見ている』と、言われているんだとしたら……。
そう思ったら、私は何も言えずに、身体を強張らせることしか出来なかった──。
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