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「……永瀬さんて、意外と大胆なんですね…」
自分の背中に嫌な汗が流れ出すのを感じていると、突然に、そう彼女が口にした。
「大胆…って、何が?」
一体どの辺りまで近野さんが知っているのかもわからずに、警戒をしつつ聞き返すと、
「……見たんですよ、私…」
彼女は、わざとらしそうに低く声をひそめた。
喉元をせり上がる動揺を押し戻そうと、グラスの水をぐっと飲み込み、
「見たって……何を?」なるべく平静を装って尋ねた。
「そんなの、決まってるじゃないですか……。永瀬さんが、政宗先生とデートしてるところをです」
「えっ……」
軽い笑いを唇に浮かべたままで言う、目の前の彼女を唖然として見つめた。
「そんなこと、私……」
咄嗟に否定をしようとするけれどあまりに唐突に確信を突かれたせいで、うまく言葉が口から出てこなかった。
「大胆なんですね…永瀬さんて…」
笑い顔を不気味に歪ませて、彼女が同じ台詞をくり返す。
「……どこまで、知ってるの?」
場合によっては、もしかしたらまだ話を上手くかわすこともできるのかもしれないと思い、聞き返した私を、
「……深い、付き合いですよね……意外と」
彼女は、こちらの表情を探るように、上目遣いにじぃっと見据えた。
「……そんなに、深くなんか……」
その場をなんとか取り繕おうとするけれど、
「嘘なんて言っても、ダメですから……。私、本当に知ってますんで」
彼女は、全てを見透かすような口ぶりで話して、
「…何も、かもね…」
と、意味ありげに付け加えて見せた……。