俺は衝動を、欲望を抑えきれず元貴を抱いた
逃がさない様に顎を掴み存分にキスを堪能する
空いている手は服の裾からするりと入れると肌へと触れる
滑らかな感触だ
肌が…見たい
きっと綺麗な白い肌だ
興奮しまくった思いで 服を首までまくしあげると綺麗な肌が俺の前に現れる
俺は欲望のあまり手で肌に触れ舌で舐めあげる
汚れないその白く綺麗な素肌に触れると俺はどうしようもないゾクゾクした気持ちに襲われた
…支配したい
俺がこの身体を支配したい
俺だけモノにしたい
なんだ…俺はどうしてしまったんだろう
俺ってこんな奴だったのか?
こんなに自分勝手に人一人を支配したいなんて…
だが意に反して俺はとんでもなく興奮している
こんな気持ちになったのは本当に初めてだ
そこでやっと元貴を床に寝かせるとズボンと下着を脱がせもう大きくなってしまった俺自身をそこへとねじ込む
早く射れたい
一つになりたい
そんな焦りの気持ちで なかなか入らないものの
無理やり入れると力ずくで腰を動かす
「あっ…」
元貴はその綺麗なしなやかな身体を仰け反られた
白い肌がほんのり色を染める
快感を感じている…俺を感じてくれている
入口がなかなか入らなかったのは久しくそういう行為をしてなかった証拠だった
こんなに魅力的なのにみんな見る目がないな
「元貴の…中…すっげえ熱い…」
元貴は目を潤ませ身体を震わせる
俺は元貴の足を抱え深く深く差し込む
あ…もう出そうだ
「中に出していい…?」
俺がそう言うと元貴は言葉にならずひくひくと頷く
俺はそれを確認すると一気に熱いものを元貴の中に放出した
*
行為が終わるとそれぞれシャワーを浴び汗を流した
本当は一緒に入りたかったが何しろ風呂が小さく大の男二人が入ってイチャイチャ出来るスペースがなかった
俺は着替えなんて用意しているわけがなく当然のように元貴の服を借りる羽目となった
用意してくれていたスェットに袖を通す
うーん、少々小さいけどまあいいか
ていうかいい匂いがするな
そこで部屋をぐるりと見渡す
広めの1Kってとこか
一人暮らしには丁度いいのかもしれない
物は少なく綺麗に整理整頓されている
こういうのは本当に性格が出る
そこに沢山の専門書の入っている本棚の上に元貴と犬の写真があった
俺は思わず近寄るとその写真立てを手にとった
あ…これ俺じゃん
自撮りだったんだろう
アップで寄り添って笑顔で写っている2人の写真だ
一瞬時が止まったかのような感覚に襲われる
本当にあの頃は楽しかったな…
ぼんやり眺めていると丁度風呂から出てきた元貴が俺に気付く
「いい写真でしょ」
と背後から嬉しそうに言う
ずっと俺を思ってくれてたんだな
嬉しいな
「…ねえ」
と、元貴が俺に話しかける
俺は振り返ると元貴は手に持っている物を俺に見せた
「これ…持ってて」
それは鈴付きの犬のマスコットのついたキーホルダーだった
ちりん、と綺麗な音が鳴り犬が揺れている
「…俺だと思ってて」
元貴は微笑み俺の手にそれをそっと乗せた
*
元貴宅で1泊させてもらうと俺は急いで東京に戻った
もちろんこれが最後というわけではなくちゃんと再会を約束して…だ
だが…うきうきしている場合ではない
東京で待っている元貴と久々に会う事が嬉しさより罪悪感の方がかってしまっていた
それは…違う元貴とセックスしたからだ
同じ名前で同じ顔だったし 犬の感情も重なってそりゃそうなるだろって…そりゃ仕方ないだろうって何とか自分に言い聞かせた
だがそんな言い訳を元貴には出来るはずもない
だって…これは明らかに裏切り行為だ
会う瞬間俺はとにかく緊張しまくっていたものの当の元貴本人は
「体、戻って良かったじゃん」
と、特に感動の再会はなくあっさりそう言われた深く追求されることもなく、だ
だが逆にそれが俺を不安にさせる
勘のいい元貴はきっと気づいている
でも俺からは言えなかった
言えるはずがなかった
*
あれから俺は後ろ髪をひかれつつもあっちの元貴に毎日同じ時間帯に電話をするようにした
いつもは俺から20時くらいに電話を鳴らすのだが今日は初めてあっちの元貴から電話があった
その時は 電話が取れなくて後からかけ直す形になったわけだが初恋にも似た気持ちで電話をした
「出れなかった!ごめん」
『ううん、忙しかった?』
「あ、今は大丈夫」
『パソコンで見たんだけど…本当に有名人だったんだね』
俺の事調べてくれたのか…嬉しいな
「…今帰り?」
『うん、今日は色々やることが多かったから』
いつもだったら家にいる時間なのにな
じゃり…と土を踏む音が聞こえる
歩きつつ電話しているのがわかる
「明日…会えるな」
『うん…気をつけて来て』
そう、明日やっと会えるって思うと嬉しくて顔が緩む
1週間振りだ
思ったより早く再会出来るなんて本当に嬉しすぎる
もちろんこっちの元貴には了承済だ
何処行こうか
遊園地とかベタなデートコースもいいけど普通に海も見に行きたかったりする
たわいもないことを喋って…
ああ、妄想が止まらない
「じゃまた明日」
『うん、また明日…』
惜しみつつ俺は電話をきった
*
「俺もついて行こうかなー」
元貴が俺ん家へ強引に泊まりにきてそう言う
明日の事で俺があまりにもニヤついているからそう茶化してきたんだろう
「え…マジで?」
俺はその言葉に焦りすぐに振り返ると元貴は悪い顔をし笑っていた
「行かねーし」
…なんてヤツめ
いや別に元貴がついて来てもいいけど…いや、やっぱりどうせなら二人きりで会いたい
「なあ、若井」
「ん?」
「明日以降でいいから話しよ」
すぐに嫌な感じがした
それって…もしかして別れ話じゃねえの?
「それってさ…大事な話?」
「うん、そう」
大事な話の割には元貴本人はあっさりしている
「若井がいいなら今でもいいけど」
俺は即答出来ずにいた
いや、やっぱりこういうのは早い方がいいのか
俺も中途半端な気持ちで接するのも良くないってずっと思っていた
逃げずにちゃんと話合わないと…
その直後に俺のスマホが鳴る
相手はあっちの元貴だった
少し出るのを躊躇ったが少し不審に思い
「…ちょっとだけ待って」
と、元貴に一言言う
だがあれからまだ3時間程しか経ってないのに電話してくるなんてどうしたんだろう
「あ、あの若井さんの携帯で間違いないでしょうか?」
「え…はい、そうですが?」
「あ、あの私保護犬施設の職員の者なんですけど…」
と直ぐに年配の男性の声がした
…なんで元貴じゃないんだろう
なんで施設の人なんだ?
え、これ元貴の番号だよな
それも気になったがそれよりも電話の後ろが騒がしく気になってしまった
「え、はい…なんでしょう?」
「元貴くんが…仕事帰りに不審者に襲われてたった今…病院で亡くなって…」
俺はその言葉が直ぐに飲み込みなかった
死んだ?
誰が?元貴が?
嘘…嘘だろ
今さっき…話したばっかりじゃないか
あの後襲われたって事なのか?
「ご迷惑かなと思ったんですけど連絡はした方がいいかなと思って…あの、もしもし…?」
もう…二度と会えないのか
もう俺に微笑んでくれないんだ
まだまだ話をしたかったのに
もっともっと君の事を知りたかったのに
これは…俺への罰なのか
呆然と立ち尽くす俺に背後から元貴が声をかけた
「若井?」
「死んだ…」
「…え?」
「元貴が…死んだ」
急に目の前が真っ暗になってしまった
20250316
コメント
1件
やばい…好きすぎる…💕 続きめっちゃ楽しみにしておきます…!