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あ……私の作品にも主人公のパートナー作ろう、そうしよう。むむ、でも、私のところの主人公は少し…と言うかかなり人間離れした考えを持つようになるし、シリアスな展開にもなるし闇深いし…よし、そんな主人公を支えるツッコミ役を作ろう。そうしよう。長文失礼しました!
十二年後。
少女は、自室で本を読んでいた。
さらさらとした艶やかな黒髪、それによく映える真っ白な肌、瞳は温かみを帯びた撫子色で、それを縁取る睫毛は、そのきめ細やかな頬に影を落とすほど長く濃い。整った鼻梁、薄桃に色づく唇に、華奢な身体。
誰もが見惚れる美少女だ。
と、部屋の扉がコンコン、とノックされる。
「どうぞ」
少女は可憐な声で答えた。
開いた扉から覗いたのは、少女の母たる女性だった。
「ルティ」
「お母様!」
少女――ルティリアは本を置いて、女性に抱きつく。
女性はそんなルティリアを受け止め、抱きしめ返した。
「あらあら、ルティったらもう十歳にもなるのに、まだまだ甘えたさんね」
そう言いつつも、女性はどこか嬉しそうに微笑む。
ルティリアも、照れくさそうにふふっと笑った。
「ルティリア、リリアーナ」
「ルウィルク様」
「お父様!」
突如現れた女性の夫、もとい、ルティリアの父たる男性に、ルティリアもリリアーナも、同時に名前を呼ぶ。
ルティリアは、男性を抱きしめた。
男性もルティリアを抱きしめ返す。
三人で抱きしめ合っている構図になり、女性はひとり笑みを深めた。
「何をしてたんだ?」
男性は妻にそう聞く。
「そろそろお夕食の時間なので、ルティリアを呼びに行こうかと思いまして」
女性がそう答えると、男性は拗ねたような顔をした。
「……俺は?」
その声に女性はきょとんとしたが、少し嫉妬したのだとわかり、くすくすと笑う。
「ごめんなさい。次から気をつけますわ」
少しおかしそうに言う彼女に、その夫はますます顔を歪ませ……、女性の唇を奪った。
それはかすめるような一瞬だけの口づけであったけれど、確かに唇同士が触れ合ったものだった。
女性は目を見開き、かと思うとその白皙を赤く染める。
「ル、ルウィルク様……」
子供の前なのに…、と言葉を続けられずにいる彼女に、男性はどこか楽しそうに言った。
「罰だ」
その様子を見ていたルティリアが口を開く。
「お父様とお母様、いちゃいちゃ?」
「ち、違うのルティリア。い、今のは……」
あわあわと全力で否定する女性の姿に、男性は愛しげに目を細めた。
「そ、そうだわ。ルティリア、ルウィルク様。早くお夕食を食べに行きましょう?ほら、ふたりともお腹がすいているでしょう?」
火照った顔のまま女性は立ち上がり、ふたりの手を引っ張る。
女性のその手の力に、にふたりとも立ち上がった。
「そうですね。お父様、お母様。行きましょうか。リエルもきっと待ちくたびれているわ」
そう言って両親の手を引くルティリアに、男性は口を開く。
「いや、ルティリア。ちょっと待て」
「ええ?どうしてですか?」
ルティリアはことり、と小首を傾げた。彼女のその愛らしい仕草は、まるで彼女の母と全く同じだ。
「俺は少しリリアーナに用があるから、ルティリアはそこで少し待っていてくれ。目をつむってな」
「わかりました」
首を傾げつつも、ルティリアは父の言うとおりに自分の目を手で塞ぐ。
その瞬間、女性は何か嫌なものを感じた。
残念ながら、彼女のそれは当たってしまう。
「いい子だ」
男性はそう言うと、もう我慢できないという風に妻の腰をぐいっと引き寄せ……、口づけた。
「…んんっ……ふ…」
そのままルウィルクは、リリアーナの唇を深く貪る。
重すぎるけれど、彼のこの愛に浸っていたい。
ふたりに愛され、自分もふたりを愛していたい。
この平和を守ろう。いつまでも続くように。
リリアーナは唇を塞がれながら、そう思うのだった。