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第15話 隊長会議
療養棟の夕暮れ。
静かな病室。
佳代はベッドに腰掛け、包帯を巻いた腕を見つめていた。
隣では西円寺が本を読みながら、そっと彼女に話しかける。
「…..夢に見るの?」
「…..はい、また……あのとき、あたし…..みんなを一ー」
「気にしない。あれはあんたのせいじゃない。悪いのは…..アイツ」
「….ありがと、西円寺さん……」
佳代の目には涙がにじむが、静かに頷く。
この頃、各部隊の隊長と組織の長,藤原が本部に集結して会議が開かれていた。
光希はまだ傷が癒えていない為、念の為車椅子を使って会議室へと向かった。
救護班の実里が光希の車椅子を押していた。
さらに、残りの点滴などの医療器具も全て管理していた。
「光希さん、無理はしないでくださいね」
「うん。ありがとう。
でも、…..悪いが、これは出なきゃならない会議だ」
実里と話をしてから何分か後に光希は本部に着いた。
もう藤原以外全員揃っていた。
人物は以下の6人。(+藤原)
第一部隊:光希(この組織のトップ部隊の隊長。)
第二部隊:蓮人(冷静沈着。)
第三部隊:近松(白髪の老将。古くから伝わる刀で戦う。光希の稽古をつけていた時期がある。)
第四部隊:林(腕に包帯。今日はどちらかっていうと落ち着いた雰囲気)
第五部隊:堀井(医療に詳しい救護班のリーダー)
第六部隊:清水(女性、武器を使わず、体で敵に立ち向かう。)
光希は円卓の位置に着いた。
「おいおい、光希、やられすぎやろ。」
「どーせ、また無茶でもしたんやろ!?
ああ!?」
清水が痛い一撃を言ってきた。
「うん。そうだよ。」
堀井がビシッと言った。
「そんなことないですよ、清水さん。
ただ仲間を救おうとー」
「だ・か・ら!」
光希は言い返すも反論されてこの後もずっと2人で言い争っていたみたい。
藤原が入ってきた。
みんなは一斉に立ち,敬礼をした。
「みんな、こんにちは。
今から緊急隊長会議を始める。」
「ーーでは、安東について。人間に擬態していた悪魔であり、我々の中に長く潜んでいた。まず、意見を聞きたい」
藤原が問う。
「事実関係を整理すべきだ。奴は潜伏の間、我々の戦力と指揮系統を分析していたはず。目的は”内部崩壊”」
林が冷静にいう。
「それにしては動きが雑じゃった。あれは陽動……本命は”佳代”と見ていい」
と近松。
「同意します。”暴走”を引き出すための一手だったと考えるべきです。
彼女は組織にとっても特殊な存在。放置はできません」
と清水が言う。
「じゃあ組織のためにも佳代を殺すべきなのでは?
結局は彼女も悪魔ということなのだから、差別できんな。」
藤原もこの意見に乗っていた。
「…..言葉を選んで下さい。佳代は被害者であり、さらには利用されたんだ。責任を問うならーー」
光希は抑えているが相当頭に血が昇っていた。無理もない。
いきなり勢いで椅子から立ってしまったものなので、それの反応で咳き込んでしまった。
「光希、落ち着け。君の言い分も分かる。だが今は冷静に事実を確認していかねばならん。」
「現時点で”安東=悪魔”の証拠は十分ある。問題は、奴が”幻夜”の手下である可能性」
「それはもう既にうちの部隊で確認済みだ。
安東が使った術式の痕跡は、過去に幻夜が用いた術式と酷似している。かなり核心に近い」
「一一つまり、幻夜の動きが再び始まった可能性が高い。これまで潜伏していたが、何らかの意図で動き出した」
「藤原さん、問題は、その”意図”です。佳代を起点に何か仕掛けようとしているとしか思えない。」
「では以下の方針を確認する」
【会議 決定事項】
1. 安東の追跡と処分命令を第一部隊へ再委任
2.“佳代”の制御力訓練を特別プログラム化(第六部隊監修)
3.幻夜に関する情報を全隊共有。潜伏悪魔の捜索体制を強化(第四部隊、推理のプロ西円寺中心)
4.“暴走因子”の再研究(第四部隊支援)
「異論は?」
(全隊長、黙って頷く)
「最後に…..”佳代”について。
彼女が暴走したにも関わらず、第一部隊、第四部隊を中心に複数隊員が彼女をかばった。
それは”信頼”の証だ。ーーこの信頼に応えるか否かは、彼女次第だろう」
「…..あいつは、もう立ち上がってる。あとは俺たちが”居場所”を守るだけだ」
光希も静かに言った。
数日後。
光希は昔稽古をつけてもらっていた近松のところまで療養という形で行った。
佳代は第六部隊に送られ、メンタルコントロールの訓練に参加することとなった。
「今から。今からだ…。」
藤原はポツリと言い残して円卓のある会議室から出ていった。