大森side
若井「元貴!!!」
大森「あ、……あぁ、ぁ……」
ギリギリの意識で若井に話しかけても出てくるのは言葉に全然ならない
若井「ごめん元貴!!」
いつものキリッとした眉は、逆に弧を描く様に垂れ下がって、今にも泣き出しそうな顔で俺に謝る若井。
若井のせいじゃないのに……
お前のせいじゃない、違う、
と喋れない代わりの意思表示に俺は首を横に振った。
ほんの一瞬、眉間に皺を寄せた後、優しい顔で若井は、着ていたジャケットを脱ぎ、俺に掛けてくれた。
若井「ヤバい……涼ちゃん、マネージャーに連絡…………いや…………、元貴ちょっと揺れるけど我慢な、気持ち悪くて吐くなら俺のジャケットに吐いて…………後、元貴ん家、入るからな」
俺を横抱きしてマンションへと入り、何かコンシェルジュと話をして上へとあがる。
若井「ごめん、鞄探るな?鍵、出すから」
そこからは断片的な記憶しかなく、気づけば俺ん家のリビングのラグの上で、かき集められたクッションを背もたれに寝かされ、若井に名前を呼ばれていた。
若井「─────元貴、元貴、」
大森「わ、……か」
若井「元貴!元貴、look」
大森「っ!」
突然の若井のコマンド
ぼやけた視野で声がした方を見ると
若井「Goodboy、ちゃんと見れたね」
Goodboy
この言葉を聞いた瞬間、身体がぶわっと熱くなる感じがした
大森「あ、あ、あ、……」
声にならない声が出て、反射的に若井から目を逸らしてしまう
若井「ごめん、ごめん……今元貴を助けるにはこれしかないんだ……元貴、目を逸らさないで……look」
大森「ゔ、ゔゔ……」
若井「うん、ちゃんと見れて偉いね、Goodboy元貴、」
視野が少しずつ鮮明になり、若井の表情がわかると、今にも泣きそうな顔で俺を見ながら優しく頭を撫でる若井の手は暖かく、さっきまでのアイツの強制的なコマンドと違い、褒めてもらえることに身体が胸がら熱くなる
若井「そのままで……そのままでいいから意思表示だけして……元貴、hug」
hugのコマンドにラグとクッションの上で寝かされている俺は、手をゆっくりと広げる
従う気持ちがあると意思表示をした
優しく微笑んだ若井は俺の脇に手を入れ、上半身をぎゅっと抱きしめてきた
若井「もう1回……元貴からもhug」
その言葉に、ゆっくりと若井に腕を回し抱きしめた
若井「元貴、Goodboy、ちゃんと出来て偉いね、本当にいい子」
抱き締め返され、頭を撫でながら俺の耳元で若井が俺を褒めてくれる
もうそれだけで溶けてしまいそうな感覚になる
ずっとずっと聞きたかった
もう一度、若井から言って欲しかった言葉
元貴、Goodboy
さっきまでのグワングワンと揺れていた視界も、吐きそうな気持ち悪さも少しずつ軽くなって、今度は胸が張り裂けそうな程高鳴って、身体が熱い
もっと褒めて欲しい
若井に褒めて欲しいと願う俺がいる
大森「わ、かい……」
若井「ごめんな……イヤかもしんないけど……ごめん……ごめん……」
俺を抱きしめる力を強めながら何度も何度も謝る若井
あの時、何も言えなかった
何も言えずにいた
今度こそちゃんと言わなければ
大森「……もっと……」
他にも言いたい事は沢山ある
でも、俺から出た言葉は続けて欲しいの意思表示の言葉、
若井からコマンドが欲しい
若井「え、も、とき……今……」
大森「もっと……大丈夫だ、から……コマンド(命令)……して……」
急に抱きしめられていた腕が離れ、顔を合わせる距離になったと思えば、
若井が驚いた顔をしてこっちを見ている
若井「元貴、本当に?本当に……俺でも、コマンドいい……の?」
恐る恐る伺う若井に
こくんと頷けば、
若井「……元貴、hug」
微笑を浮かべながら両手を広げ、ここに来いと
若井に腕を回し、胸元に収まれば、さっきまで広げていた手はぎゅっと俺抱き締め返してくれた
若井「上手、元貴はGoodboyだね」
もっとコマンドを欲しいとは言え、今の俺の状況では、出せるコマンドは限られている。
それなのにコマンドを要求した俺を怒らず無理させずにコマンド出した上で褒めてくれる若井
外からの若井の温かさと、コマンドによる体内に溢れる嬉しい温かさ
若井「今、気持ち悪い?大丈夫?」
若井の問いに首を横に振れば
若井「そっか、でも言葉で言えるかな?今元貴がどんな気持ちか……say(教えて)出来る?」
大森「……気持ち悪いのは……良くなってる」
若井「うん、それから?もう少し詳しくsayして?」
大森「吐きそうだったのは治まって、今は……」
若井「今は?」
大森「今は……胸がぽかぽかしてる」
若井「そっか、よく言えたね、Goodboy
体勢はキツくない?」
ラグの上で上半身を起こしているだけの俺が体勢がキツいわけがない。
どちらかと言えば、若井の方が体勢がキツいはずなのに俺の事を心配してくれる
体勢はキツくない
でも…………
大森「きつい……」
俺は嘘をつく
若井「どうする?横になる?」
首を横にふり、
大森「もっと……若井とくっつきたい」
そう、俺は
若井と離れたくなくい、もっとくっついていたくて嘘をついた
俺の言葉に背中をトントンとしていたリズムが少しズレた
若井「元貴、少しだけ動ける?」
今度は首を縦にふれば
若井「俺の上……元貴Come(おいで)」
俺が動きやすいように抱きしめられた手が少し緩められて、俺は若井の膝の上へ登った。
若井「よく来れたね、Goodboy。 いっぱい褒めてあげないとね」
若井と顔が交差しているから、若井の声が耳のすぐそばで響いてて、いつもより……少しゆっくりでいつもより……少し低い声が心地よくてたまらない
今までも涼ちゃんやマネージャーからコマンドプレイしてもらってもこんな気持ちにまではならなかった
身体が蕩けてしまう
そんな初めての体験に俺はどうしてしまうのかと言う恐怖と、このまま身を委ねたいと思う気持ちが俺の中で交差する
若井「元貴大丈夫?」
大森「あっ、ぅ……」
この気持ちを、感覚を言葉にして良いのかも分からない
うまく若井に伝えられない
若井「大丈夫、落ち着いて、大丈夫、大丈夫だから
焦らずゆっくりでいいから」
どうしてわかるのかと思うくらい今俺が欲しい言葉をくれる若井
大森「こわ、い……」
若井「怖い?」
大森「…………今、からだが、わかんなくな、てて、……しらない、わからなっ、」
若井「大丈夫、ドロップしかけてたから反動が大きいだけだよ」
大森「ふわふわして、あったかくて」
若井「うん」
大森「こんなの……今まで知らない」
若井「うん」
大森「……こわい」
若井「大丈夫、そのまま……元貴は今、スペースに入りかけてるんだよ……だから気持ちいいままでいいんだよ……」
サブスペース
domの支配下にsubが入った時におこる現象
身体も心も追いつかないのも無理は無い
俺はスペースに落ちるのが初めてだから
大森「ス、ペース……」
若井「そう、サブスペース。元貴はスペースに入りかけてるんだよ」
大森「わかんな、い……」
若井「大丈夫、俺が全部してあげる。何が起きても俺が居るから……だから元貴は安心して……」
大森「うん……わか、い……」
若井「うん?」
大森「もっと……ちょう……だい……」
若井「おねだり出来てえらいね、……じゃあ元貴、少しだけShush(静かに)して……目をclose(閉じる)ようか…………」
大森「…………」
若井「そう……上手だね、Goodboy元貴……そのまま……目は閉じたまま……そう……俺の声だけ聞いて…………………………」
若井に褒められたのを最後に俺は意識を飛ばした
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お久しぶりのコメント失礼します🙂↕️ 段々と緊迫した空気が甘ぁくなってきてきゅんきゅんしているところです…🫠 でもやっぱり少し切ない、、、
…溶けそうです🫠 甘い…なんか知らないけど此方までゆっくり甘くて脳溶けそうです…

更新待ってました!やっと気持ち話せてよかった😢次回も楽しみです。