大森side
次に目が覚めた時は
また知った白い天井だった。
身体を動かそうと思ったら両手が重い……
見ると左右に若井と涼ちゃんが俺の手を握ったまま眠っていた
大森「若井……涼ちゃん……」
若井「う、……うぅん」
藤澤「うぅーん……も、ろき……?」
大森「涼ちゃん……もろきってなんだよ」
藤澤「だっ、……も、元貴!」
大森「おはよ、涼ちゃん」
藤澤「若井!若井!起きて!元貴が目を覚ましたよ!」
若井「う……、えっ、あっ、もと、きっ!」
大森「おはよ……若井」
藤澤「僕先生呼んでくるっ……いったっ」
前回と同じ様に扉にぶつかりながらも涼ちゃんは病室を出ていった
若井「元貴っ、大丈夫か?!」
大森「大丈夫、なんで病院なのか知りたいくらいだし」
若井「あ、それは」
若井が現状を言いかけた時、入り口から、涼ちゃんじゃない聞きなれた声がした。
医師「それは僕から説明しますよ。大森さん、おはようございます」
大森「あ……、おはようございます」
若井「……俺たち席、外しますね」
医師「そうしていただけると助かります。」
そう言ってふたりは病室から出ていった
医師「いかがですか?」
大森「大丈夫、です」
医師「気分が悪いとか、目眩がするとかもありませか?」
大森「大丈夫です」
医師「後で看護師が体温と血圧、念の為の採血をしに来ますので対応お願いします」
大森「はい」
タブレットを片手に先生は淡々と述べながら何かを書いている。
医師「大森さんがここに来たのは私の指示です」
大森「え、先生の?」
医師「はい。以前に、若井さん、藤澤さんのお2人には、もし、同じ様な事があった場合、ケアが不可能なら即救急車、ケアが出来るならケアを。その後、私に連絡をしてくださいと伝えてありました。今回は若井さんがケアして、大森さんが眠った後に連絡をくれました。そして念の為ここに来てくださいと言ったのであなたは今ここなんです。これがあなたがここに来るまでの流れです、何か質問はありますか?」
大森「いえ、……大丈夫です」
医師「それと、今回あなたに一体何があったかの一通りは、若井さんから伺いました。災難……でしたね……。そちらに関しての詳しい事はおふたりかマネージャーさんの方から聴いてください、僕の専門外の事ですので」
大森「あ、はい……」
相変わらず淡々としてるなと思いつつ、俺は先生の話を聞く
医師「今回は若井さんの機転のおかげと、大森さん自身の成長のおかげですね」
大森「いや……俺は何も成長なんて……」
医師「成長したじゃないですか、前回にくらべて……素直になれたじゃないですか」
素直
先生にそう言われ、恥ずかしくなる
医師「とは言え、身体への負担がない訳ではありません。前回、今回と大森さんの意思に反した事とは言えです。特に大森さんの様にパートナーを持たない人はケアが出来ない場合が多く、とても危険だと言う事を忘れないでください」
大森「……はい」
医師「賢い方なので多くを言わなくてもあなたなら分かると思うので今日はこれくらいで。すぐに帰宅準備をしていただいても構いません……ですが、他言無用のお話があると思いますのでこの部屋を使っていただいて構いませんよ」
大森「あ、ありがとうございます」
医師「ただ、看護師の事は忘れないでくださいね、注射、嫌いかも知れませんが」
大森「う、バレてたんですか……」
医師「これでも僕は心理的な医者ですから、わかりますよ。…………あ、最後にひとつ、いいですか?」
大森「えっ、あ、はい」
医師「失う怖さ……少しはマシになりましたか?」
先生なら多くを言わなくても
いや、もうわかってて質問したのかもしれない
大森「……はい」
医師「それなら良かったです。大森さんがここに来なくなる日も……近いかも知れませんね」
大森「………………っ?!、ちょ、ばっ、先生」
医師「では、次の通院日に」
大森「え、せ、先生、まっ、て」
医師「10分後におふたりを戻しますのでそれまでには顔色を戻されるのが懸命ですよ」
爆弾発言を落とすだけ落として去っていった先生……
俺はあの人には一生勝てない気がする
コンコン
藤澤「元貴、入るよ」
若井「先生はなんて?」
大森「帰っていいって……迷惑かけてごめん」
藤澤「元貴が無事でほんとによかったぁ」
大森「あ、先生が聞かれたら困る話があるだろうからここ使っていいって」
藤澤「そっか……元貴は……聞きたい?」
大森「……うん、どうなったか聞きたい」
聞けば俺が聞きたいと言うのを分かっていたようで、ふたりが目を合わせ小さく頷き、若井が教えてくれた
若井「アイツは……捕まった。俺が元貴を抱えて部屋に戻る時に、コンシェルジュに伝えたんだ」
大森「……あの時、か」
うる覚えの記憶で、若井がコンシェルジュに何か話していた記憶を思い出した。
藤澤「当然の結果……だよね……逆恨みで今更元貴を襲うなんて……若井が近くにいてほんとに良かった……」
確かに、あの時若井が近くに居なければ俺は……アイツに連れ去られてた
考えるだけでゾッとする
藤澤「元貴、大丈夫?」
大森「あ、うん、ほんとに若井が居て良かったなって……アイツ俺を連れ去ろうとしてたから」
藤澤「っ!」
若井「っ!アイツ……」
大森「でも若井が来てくれたしアイツが捕まったなら俺はもういいよ、それより……噂になってないか心配」
藤澤「それは大丈夫。元貴が言い合ってた場所が少し見えにく場所だったのと、変装もあってバレてはない。見た人が居てもパートナー同士のただの痴話喧嘩くらいで思ったと思う」
若井「マネージャーにはこの話は伝わってて、SNSも確認済み。ちなみにマネージャーはここにも来たけど、もしかしたらの事を考えてSNSに張り付いてんのと、上への報告があるからって俺たちに任せて帰った」
大森「そっか……色々迷惑かけて本当にごめん」
若井「アイツは当分出ては来れない……有名人に手を出した事と前科有りって事で」
大森「有名人って」
若井「街を普通に歩けないって事は有名人なんだよ俺たち。後、用心のために元貴の引越しの検討、火消しが完全に出来たのが確認出来るまではマンションに帰宅もダメ」
大森「マジかよ……」
藤澤「あ、その後の話は僕が居ない方が話しやすいと思うから……元貴、僕はここまでね」
大森「え、なに突然?」
突然の涼ちゃんの言葉に俺は意味がわからず戸惑う
それでも涼ちゃんはあえて俺を無視してるかのように話を続ける
藤澤「僕は元貴の手続き済ませて帰るから、若井、後はよろしくね」
若井「ああ、ありがとう涼ちゃん」
大森「え、ちょ、まって、俺把握でき」
藤澤「じゃあ、元貴、またね」
涼ちゃんは言うことを言うだけ言って帰ってしまった……
この展開は俺の知らないところで話が出来ていたんだ。
多分、俺が眠っている間に。
若井「元貴、俺らも帰ろっか」
大森「うん……え、俺ら?状況把握が」
若井「さっきの話聞いてた?元貴は自宅に帰れないんだ、だから俺ん家」
大森「いやいやいや、だからって何で若井ん家なんだよ、ホテルでいいじゃん」
若井「別にホテルでも良いけど俺も一緒だからな」
大森「え」
若井「え、じゃない。当時、アイツだけじゃないだろ?多分今回はアイツ独断の行動だろうけど、もし、他のやつらともまだ連絡取ってたりしたら考えたら?それがわかるまでは元貴をひとりには出来ない。万が一、仲間意識で今回みたいに他のやつが襲ってきた時に、元貴の周りで立ち向かえれるのは……俺しか居ない」
そう……俺の周りにdomは若井しか居ない
いくら優秀なswitchの涼ちゃんやマネージャーだと負けてしまう可能性が高い
domに立ち向かえれるのはdomだけ
だから若井なんだ
若井「元貴?」
大森「ううん、大丈夫。言われてみればそうだよな、納得した」
若井「ごめん、昔の事を思い出させる事を言って」
大森「本当に大丈夫、帰ろうか」
若井「やっぱりホテル取ってもらおうか?」
大森「いや、お前ん家行かせて」
若井「……わかった、タクシー呼んでもらうわ」
それから俺たちはタクシー乗って、若井の家に帰宅した。
コメント
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時差コメ失礼しますーー!! ちらっと覗いたら神作すぎてここまで一気見してしまいました……💘 天才的な文章と挿絵がすきすぎて、、 続き楽しみにしてますっ!!