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第1話
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rimn
付き合っていて同棲している設定
R18シーンなし
配信中の画面には、伊波ライの柔らかい笑顔が映っている。童顔であどけなさの残る顔立ちに似合わず、言葉は歯切れよく、視聴者を軽くあしらうようなトークで盛り上げていた。
「おいおい、俺のこと可愛いとか言ってんの誰?……まあ、ありがと。けど俺、可愛いんじゃなくてかっこいいから」
そんな強がりにチャット欄は「草」「はいはいかっこいいね~」と沸き立つ。ライが小さく鼻で笑った、その時。
――カチャリ。
配信部屋のドアが開く音が、マイクに拾われた。
「ライ~、コーヒー入れ――あっ」
はっきりとした、マナの声。関西訛りの明るい響きが、視聴者の耳に届いてしまった。
一瞬、チャットが止まる。
数秒後、爆発したようにコメントが流れ始めた。
「今の声マナくん!?」「え、え、なんで???」
「えっ聞き間違いじゃないよね?」
「絶対そう!!!」
ライは固まったまま、マナの方を見た。ドアの隙間から覗いている顔は、ばつが悪そうに眉を下げている。
「……ごめん」
小さな声がマイクに乗らないよう口パクで伝えられる。
ライは一度、深く息をついた。ここで誤魔化すことはできる。放送事故として笑い飛ばすこともできる。でも、マナが萎縮した顔をしているのが、どうしようもなく嫌だった。
「……あー。隠しててもしょうがないな」
ライは椅子に背を預け、画面越しに視聴者へ視線を向ける。
「マナと俺ね、付き合ってんの。…で、まあ気づいたと思うけど、俺ら同棲してんだよ」
チャットが一気に流れを変える。
「やっぱり!?」「きゃー!!」「おめでとう!!」
「尊すぎる」「推しカプ公式化したw」
ライは小さく笑って、背後のマナを手招きした。
躊躇していたが、結局マナも画面に顔を出す。視聴者に向けて、気まずそうに手を振った。
「ばれちゃったなぁ。……あ、えっと。ほんまに、ライと付き合ってて一緒に住んでます。内緒にしててごめんな」
正直に告白する声は、少し震えていた。けれど、その震えさえも真剣さを伝えていた。
「俺ら、配信は配信で真面目にやるつもりやから。そこは信じてほしい。けど、プライベートでは恋人同士なの」
その言葉に、チャットは祝福の嵐となった。
「お幸せに!」「二人とも大好き!」「推せる」「最高のカップル!!」
ライはマナの肩に自然と手を回し、画面外へ引き寄せる。
「な、言ったろ。隠すの向いてないって」
「うっさいわ。ライが急に言うからやん」
「……でも、これで堂々と一緒にいられるな」
小声でそう囁いたライに、マナは真っ赤になって唇を噛んだ。画面越しに映るのはただ仲良く肩を寄せ合う二人。けれど、その指先は机の下で強く絡められている。
配信を終えてから、ソファに並んで腰を下ろした。
「なぁ……ほんまに、よかったんかな」
「よかったに決まってんだろ。みんな祝ってくれたじゃん」
ライはマナの頭を自分の肩に押し付ける。マナは抵抗せず、そのまま身を預けた。
「……もう、隠さんでええんやな」
「うん。俺たち、堂々とイチャイチャできる」
「配信中はすんなや」
「配信外なら、何してもいいの?」
そう言ってライが頬に軽く口づけを落とすと、マナはくすぐったそうに笑いながらも、逆に首筋へ甘く噛みついた。
「お前のそういうとこ、ずるいわ」
「マナも同じじゃん」
二人の笑い声が、静かな部屋に溶けていった。秘密は暴かれた。けれどそれは、隠していた鎖を解く鍵になった。
今まで以上に、甘く、強く。
二人はこれからを共に歩むのだと、互いに確かめ合っていた。