テラーノベル
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十五年前――。
ZERO本部。
脅迫。
器物損壊。
放火未遂。
それでも蓬萊は活動を止めなかった。
会議室には緊張した空気が流れている。
蓬萊はメンバーを見渡した。
「今日から。」
「一人で行動することは禁止します。」
「必ず二人以上で行動してください。」
全員が静かに頷いた。
「皆さんの命も。」
「未来を守るために必要です。」
-–
会議が終わる。
義一は蓬萊へ近付いた。
「蓬萊さん。」
「少し相談があります。」
蓬萊は振り返る。
「どうしました?」
義一は真剣な表情だった。
「ここ最近の事件を見ていて思いました。」
「今の警備では足りません。」
蓬萊は黙って聞いている。
「もしよければ。」
「うちの警備会社から応援を出せます。」
「休日になりますが、何人か協力してもらえると思います。」
蓬萊は少し驚いた。
「そこまでしていただく訳には……。」
義一は静かに首を振る。
「これは仕事じゃありません。」
「俺自身が、この活動を守りたいんです。」
少し沈黙が流れる。
蓬萊は深く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
「皆さんにも相談してみます。」
義一は小さく頷いた。
-–
その頃。
能力犯罪対策準備室。
担当者たちが資料を広げていた。
「ZEROへの脅迫。」
「器物損壊。」
「放火未遂。」
20
あまね🍡💠
75
一人が静かに言う。
「能力犯罪は、人だけではありません。」
「思想を標的にする事件も増えています。」
別の担当者が頷く。
「社会の分断が始まっています。」
会議室は静まり返った。
-–
午後。
詩織は資料を届けるため、一人で研究所へ向かっていた。
歩きながら小さく笑う。
「義一さん。」
「心配しすぎなんだから。」
その時。
背後で小さな足音がした。
詩織は振り返る。
誰もいない。
「……気のせいかな。」
再び歩き始める。
少し離れた電柱の影。
一人の青年が静かに立っていた。
帽子を深く被り。
表情は見えない。
青年は詩織を見つめたまま動かない。
やがて詩織が見えなくなると、小さく呟いた。
「……まだだ。」
-–
夕方。
山奥。
中村一徳は伐採作業を終えていた。
切り倒された木々を見渡す。
「能力って。」
「本当に便利だ。」
軽く手を振る。
鋭い風の刃が飛ぶ。
枝が音もなく切り落とされた。
一徳は静かに笑う。
「能力を否定する人間に。」
「未来なんて語る資格はない。」
新聞記事を見つめる。
『ZERO 能力教育講演』
その文字を握り潰した。
「能力は。」
「人を幸せにする。」
「邪魔する奴はいらない。」
その瞳には、揺るぎない信念が宿っていた。
-–
夜。
ZERO本部。
義一は一人、建物の外を巡回していた。
街灯。
駐車場。
裏口。
非常口。
異常はない。
だが。
胸騒ぎだけが消えない。
「……誰かいる。」
義一は振り返る。
建物の影で何かが動いた。
「誰だ!」
義一は一気に駆け出した。
路地を曲がる。
階段を駆け上がる。
屋上へ飛び出す。
しかし――。
誰もいない。
風だけが静かに吹いていた。
義一は辺りを見渡す。
「……逃げられた。」
その頃。
少し離れたビルの屋上。
青年が静かに義一を見下ろしていた。
義一は、その存在に気付いていない。
青年は小さく笑う。
「勘はいいな。」
「でも。」
「もう遅い。」
青年は夜の闇へ静かに姿を消した。
義一は屋上に一人立ち尽くしていた。
胸騒ぎだけが、さらに大きくなっていく。
第64話へ続く
コメント
1件
第63話、読みました。十五年前の出来事から現在の緊張感まで、一気に引き込まれました。特に蓬萊さんの「一人行動禁止」のシーンは、この活動の危険度がひしひしと伝わってきて胸が締め付けられました……。詩織さんが一人で歩く場面、あの「誰もいない」足音が本当に不気味で、読んでいるこちらまで背筋が冷えました。義一さんの警備の申し出も、彼の誠実さが滲んでいて好きなシーンです。そして中村一徳の登場。「能力を否定する人間に未来なんて語る資格はない」という言葉の危うさが、ものすごくリアルで怖い。次が気になります!