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希良君の言葉にちょっと戸惑った。
『ごめんね、雫さんの仲間なのに』
「あっ、ううん。果穂ちゃんは何事にも一生懸命だから……」
『僕は、あの人のこと、そんな優しい言葉で片付けられない』
「希良君、何かあった?」
『あの人、言ったんだ。自分は東堂さんが好きで、でも東堂さんは雫さんに告白して……雫さんはその返事をしなかったって。だから、早く僕と雫さんが付き合ってしまえばいい……みたいなことを言われた』
「果穂ちゃんが? そんなことを?」
全部、希良君に話したんだ……
『僕だって、雫さんと付き合えるならそうしたい。でも、できないから待ちますって……あの人に言ったんだけど。あの人は東堂さんが好きだから待てないって』
希良君の声が、少し震えてるように聞こえた。
「果穂ちゃん、そんなことを……」
『ごめん。こんなことを話すために電話したわけじゃないのに。告げ口みたいになって、すごく嫌だ』
「ううん、謝らないで。希良君は何も悪くないんだから。そうだよね……希良君にも慧君にも、何も返事してなくて。私、ダメだよね。本当にごめんなさい」
希良君には見えないだろうけど……
それでも、私は深く頭を下げた。
『やっぱり責めるみたいになっちゃったな。雫さんを悩ませたよね。ただでさえ、雫さんはいろんなこと考えてるのに。ダメなのは僕だよ。本当に……メンタル弱い。男として全然ダメだ』
弱いとか、男としてダメだとか、そんなこと全然ないのに……
「希良君はいっぱいいっぱい頑張ってる。毎日毎日大学ですごく難しいことたくさん学んでるんだと思う。なのにバイトも頑張ってて。本当に尊敬するし、偉いよ。だけどね……希良君はまだ若い。今は、友達との楽しい時間も大事にして、ちゃんと青春しなきゃ」
『青春か……僕は、雫さんと青春したいな。恋が……したい。それが全てだよ。あなたの笑顔がいつも心のど真ん中にあるから、だから頑張れてる。あの日、テーマパークでデートした大切な想い出は僕の宝物だよ』
「希良君……」
キラキラした、眩しいくらいの思い出。
私だって忘れられないよ。
あんな素敵なデート、今までしたことなかったから。
ゲートをくぐって、夢の世界に足を踏み入れ……
一瞬一瞬のきらめきに心が踊って、最後の最後まで私達を楽しませてくれた。
一緒に時間を過ごせて、希良君には本当に感謝してる。
その気持ちは嘘じゃない、絶対、一生忘れない。
『ごめん、長々と話して。ありがとう、雫さん。体に気をつけて頑張って。イベントの成功祈ってるから。また……いつかデートしてね。じゃあ切るね、バイバイ』
「バイバイ」、その言葉が心にじわじわとにじんで、ちょっと胸が痛くなった。