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6 - 四季家の憂鬱

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2023年01月11日

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タグ→冬、ドラマ、恋愛

自分で書いてて「こんな家族いるか?」って思ってしまいました。甘すぎるけど、寂しいのが現実。空しさ注意。



四季家の憂鬱



冬は嫌い。風が冷たいから、とても寒くて震えてる。

「最悪、手袋忘れた……」

仕方なく私は手を擦り合わせながら、スーパーに入った。暖房があまり効いていないけど、風が防げるだけましか。

こんな寒い日にはおでんか鍋がいいわね。

明日も最高気温が0度だったから、今日は鍋にして明日はおじやにしよう。


雪が降ってきた。

「わーい!雪だ!雪だよ!!」

「ママ!雪!!」

「はは、子供は元気でいいな」

「こら!美春(みはる)、秋兎(あきと)!ちゃんとあったかい格好をしてちょうだい!」

「えー?!ヤダー!!」

「やだー、じゃないの!ああもう!!」

私は娘と息子を追いかけまわし、ダウンを着せた。

冬は嫌い。風邪を引きやすいから。子供の元気がいいのはいいことだけれども、それで熱が出たらと思うと、不安で家の中に閉じ込めておきたいくらい。

はあ、と小さくため息をついた。それは白く染まって、空気中に溶け、すぐに見えなくなった。

不安も迷いも、この雪もため息と同じくらい直ぐに消えてしまえばいいのに。

「パパもママも、この雪が積もりますよーに!ってお願いしよう!!」

冗談じゃない。ただでさえ忙しいのにこれ以上仕事を増やされてたまるものですか。

息子の笑顔の前ではそんなことを言えるはずもなく、私はただ曖昧に笑うのだった。


冬は嫌い。嫌い。大っ嫌い。

苦しいの。

全ての視界が白色で塗り潰されて何処にも行けない。息をしたらマイナスの気温が喉を凍らせてしまいそうだと思えてしまう。呼吸すらままならないまま、ただ降り積もる理不尽に無駄な抗いをしている。

寒い。暖かい場所から出たくない。でも空気が重い。息が詰まる。外への買い物も、子供との外遊びも、雪かきも、本当はやりたくないのに。

ただただ、疲れる。無駄に体力を使わなきゃいけない。

冬は嫌い。お願いだから、早く春が来て。

「……冬は辛いかい?」

「……ええ。とても」

「そうか。でも、僕は好きだよ」

隣に寄り添った彼はそう言って優しく私を抱きしめる。

その体温は、温かかった。

「朝、子どもが寝てる間に君と見る虹色の朝焼け。より鮮明に君の体温を感じられる空気。君が作ってくれた家庭の暖かさも」

出会ったときは、あなたも冬が嫌いと言っていたのに。

人は変わるのね。

「そして何より、冬香(とうか)に出会えたから」

「……私はあの日と変わらず、冬は嫌いよ」

「大丈夫。春が来るまで、次の冬も越せるように、約束しただろ?一生側にいる、って」

「……ありがとう、夏帆(なつほ)。おかげでちょっと元気出た」

あなたがいるから、家族がいるから、私は寒い冬を越せる。

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