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「玲沙、何処行くんだ?」
「お墓参りですけど」
「墓?」
「·····一緒に来ます?」
“雪乃”
其の名だけが彫られた墓。墓には、沢山の花が飾ってある。屹度、全て事務所の皆の物だろう。彼女の墓参りに来る人は他には居ない。
「前に中也さんと話した、昔の楼閣破壊の話覚えてますか?」
「嗚呼。お前が詳しく知っていたやつだよな」
「そう。あの時私、偶々其の記事を見ていたと云いましたが、其れは嘘です。あの新聞記事は今でも持っています。絶対に忘れられません。私はあの時、其の楼閣の中に居ました。彼女も」
「は?」
「そもそも、爆弾を仕掛けたのは私達でした。当時の組長からの命令で、組に攻撃を仕掛けてきた奴等の楼閣を破壊せよと。然し、失敗したのです」
「予想以上に敵が多く、皆、多かれ少なかれ負傷しました。中でも雪乃は、相手の長との戦闘で深手を負ってしまって。助けようとした私にこう云いました」
「ごめん、足をやられてちゃって。あたしのことは置いて行って」
「置いて行くなんてっ、そんなの出来る訳無い!」
「でもあの爆弾、もうすぐ爆発でしょう?玲沙だけでも逃げて。お願い」
「でも·····」
「あぁ、あたしも含めて死体は残したら駄目だよ。玲沙の異能で凍らせて、熱で溶けるようにしてね」
「結局、私は彼女の云う通りに、死体が残らないよう楼閣ごと凍らせました。流石に楼閣は全て溶ける事はありませんでしたけど」
「·····悪いな。厭な事思い出させちまって」
「いえ、大丈夫ですよ。悲しい事ばかりではありませんでしたから」
「他にも何かあるのか?」
「はい。其の後の事、事務所の事です」