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くられがそっと身じろぎをした瞬間、ツナっちは目を覚ました。
「……ツナっち…?」
まだ少し掠れた声で、くられがこちらを見る。
ツナっちはすぐに反応し、眉をひそめる。
「もしかして、起きようとしてます?」
ブランケットを押さえながら、低く短く制す。
くられは微かに肩をすくめ、弱々しく返した。
「昨日寝たしね……まあ、もう大丈夫だよ」
頭の重さや微かなめまいは隠せていないが、本人は完全に回復したつもりらしい。
くられはゆっくり腰を上げ、体を起こそうとしてよろめいた。
「…あれ?」
軽く戸惑いの声が漏れる。まだ体は完全に安定していないことに気づかず、くられは無意識に「大丈夫」と自分に言い聞かせているようだった。
ツナっちは咄嗟に手を添え、肩と腰を支える。
「…先生、無茶しすぎです」
くられはわずかに肩をすくめ、弱々しく笑った。
「大丈夫、大丈夫。ちょっとよろめいただけで、心配しなくていいよ」
ツナっちはため息をつき、少し強めに言葉を続けた。
「…何度“大丈夫”って言うんですか、先生。昨日に無茶しないって約束しましたよね」
くられは小さく息を吐き、肩をすくめる。
「うん……まあ、善処します……」
約束したつもりはないらしい。
ツナっちは眉をひそめ、ブランケットを押さえながら言った。
「善処じゃなくて、約束ですよ、先生。大丈夫って言い張っても、体は正直です」
くられは小さく笑い、わざとらしく肩をすくめた。
「…だって、もう大丈夫なんだもん。ほら、寝てばかりもいられないし」
「寝てばかり、じゃなくて、まだ立っちゃダメです!」
なおも起きようとするくられを即座に制し、ツナっちはくられの腰をそっと支える。
くられは少し視線を逸らし、微かに苦笑した。
「……そうだね、まあ、昨日の事もあるから、善処ってことで…」
ツナっちは深く息を吐き、ブランケットを整えながら軽く頭を振る。
「善処じゃなくて、本当に約束です。何度言わせるんですか、先生」
くられはゆるりと目を閉じ、微かに頷いた。
「…わかりました、もう、無理はしません」
その声の端にはまだ少し強がりが残るが、ツナっちの手の温もりに、少しずつ心を委ねていく。
簡易ソファのある休憩スペースには、朝の光が柔らかく差し込み、二人だけの静かな時間が流れる。
ツナっちは小さく息を吐き、心の中でそっと呟いた。
――先生、もう少しだけ、このままで。今度こそ、本当に“大丈夫”になるまで。
くられの呼吸が少しずつ安定していくのを感じながら、ツナっちはその余韻を大事に見守り続けた。
やがて、研究室に漂う朝の光と、二人の間に残る静かな温もりだけが、穏やかに時間を刻んでいた。