テラーノベル
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『嶋村さん、まじでかわいい、ほんとに』
突然放たれたその言葉を、わたしはすぐには理解できなかった。
(き、聞き間違いだよね……?)
音の感じからして、携帯を少し顔から離しているのだろうと察せられる。
胸が落ち着かないまま、わたしはミュートを外した。
『あの……森田くん』
『あ、嶋村さん。友達はどうでしたか。参加してくれそうですか』
森田くんは、さっきまでとは違う、事務的な口調に戻っていた。さっきの言葉はいったい何だったのか。胸の奥に、もやもやとした感情が広がる。
『あ……うん、参加してくれるみたい』
『じゃあ、学校近くの公園で待ってます』
わたしは短く返事をして、そのまま通話を切った。
(…………)
心臓の鼓動が、やけに大きい。
部屋の静けさの中で、自分でも驚くほどはっきりと、胸の音が響いていた。
(森田くんが、わたしを、「かわいい」って……?)
頭がふわふわした状態のまま、家を出て友達と合流した。
友達と一緒に公園へ向かうと、すでに森田くんを含めた男子3人が集まっていた。
「さ、さっきぶり。なにを、するの……?」
自分でも分かるほど、言葉がぎこちない。
森田くんと、うまく目を合わせられない。
「特に決めてないんですけど……何がしたいですか」
いつもはお調子者の森田くんも、敬語で話している。
このメンバーで何をすればいいのか分からない。仲がいいのは、一緒に来てくれた友達だけだ。すぐに思いつくことは何もなかった。
「プリクラ撮ろーよ!」
友達がそう提案してくれた。内心ほっと息をつく。
(案を出してくれて、ありがとう……)
近くのゲームセンターに入り、プリクラ機を選んで中へ入った。
『両手でピース!』
機械の音声に合わせてポーズを取る。正直、プリクラはあまり撮ったことがなくて少し苦手だった。でも、森田くんと一緒の写真が残るなら、素直に撮りたいと思えた。
6枚ほど撮り終えて、落書きスペースへ移動する。
「5人だと、ちょっと狭いかも」
友達が言った。
「あ、じゃあ、わたし外で待ってるね。こういうの、よく分からないし……」
わたしがその場を離れようとすると、森田くんも同じように動いた。
「俺も、外にいようかな」
その一言に、「ありがとう」とだけ言い残して、残りの三人はさっさと落書きスペースへ入っていった。
(あ……)
気づけば、二人きりだった。
(…………)
(……どうしよう)
突然の状況に、頭が真っ白になる。もちろん、森田くんのことが好きだったから、という理由もある。でも、それだけじゃない。
あの言葉が、胸の奥で蘇る。
――今、聞くべきだろうか。
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