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……森田くんに、聞くしかない。
「「あの」」
声が重なった。
「あ、ごめんなさい。嶋村さんからどうぞ……」
「い、いや、森田くんからどうぞ!」
やってしまった。勇気を出して口にしようとした言葉が、宙に消えてしまった。
「あ、遊びに来てくれて、ありがとう……ございます」
「い、いえ、こちらこそ……」
森田くんも、どこかぎこちない。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙。
せっかく二人きりになれたのに、うまく会話をつなげられない。
「……えっと、嶋村さんは?」
「え?」
「いや、その……何を言おうとしてたのかなって……」
「あ、ああ……さっきの電話のことで……」
聞かれてしまった以上、正直に答えるしかない。でも、この先の言葉をどう続ければいいのか分からなかった。
(『かわいすぎる』……って)
聞き間違いだったかもしれない。そうだったら、恥ずかしいことこの上ない。言い出すのをためらっていると、森田くんが先に口を開いた。
「あ、電話。いきなり電話しちゃって……すみません。迷惑でしたよね」
「あ、いえ、それは全然大丈夫です!そうじゃなくて、その……ちょっと、聞こえてしまって……」
「聞こえた……?」
「あの……
し、嶋村さん、かわいいって……」
「……え?」
「…………」
やばい。言ってしまった。
森田くん、困っているかもしれない。自意識過剰な女だと思われたかもしれない。
「……聞こえ……てた?」
森田くんは、目を少し見開いたまま、動きを止めた。
「あ……いや、その……」
視線が泳いで、落ち着きなく指先がズボンのポケットを探る。
「ご、ごめん。独り言のつもりで……」
そう言って、気まずそうに笑った。
「でも……聞こえちゃったなら、もういいか」
森田くんは小さく息を吐いて、わたしのほうをまっすぐ見た。
「ほんとに、嶋村さん、かわいいって思ってました。中学生のときから」
ーー止まっていた時計が、動き始めた。