学校が終わるまで働いて、なるべくアンナを家で迎えるようにしている。低学年のうちは、あっという間に帰ってくるけど、アンナには寂しい思いをさせないようにしようと、悠人と話し合って決めた。
そんな勤務体制でも、シャルムのみんなは理解してくれて助かっている。私は若い人達に交ってパートのおばさん状態になってるけど、でも、悠人には考えがあって……
今、自宅の敷地内に、美容院を作ってくれてる。
そう……それは私のお店。
嘘みたいだけど、今年の結婚記念日に悠人がその話をしてくれ、お店をプレゼントしてくれた。
こんな素敵なプレゼント、最初は申し訳なくて戸惑った。だって、自分の努力でお金を貯めてお店を出すわけじゃないから……やっぱり気が引けた。
でも、悠人は、絶対にそうするべきだと強く背中を押してくれて……だから、私は悠人に甘えることにした。
お店が完成したら、私はシャルムを辞める。
ここでオーナーとして経営もしながら、美容師として頑張っていこうと思っている。
悠人の、私へのどこまでも深い想いに、本当に……感謝しかなかった。
「穂乃果が今までシャルムで頑張ってきたことを、俺は誰よりも知ってる。お前の才能は一流だ。その才能を埋もれさせるのはもったいない。それに穂乃果は、誰かを綺麗にすることが好きなんだろ?」
悠人のストレートな褒め言葉がものすごく嬉しかった。
一流なんて、まだまだだけど、悠人がそんな風に言ってくれたら何だか自信がつく。
「お客様を綺麗にしたい気持ちはもちろんだけど、でも、お店を開店させるまでにはお金がかかるし……。私、やっぱり申し訳なくて」
「そんな心配はしなくていい。俺がしたくてしたプレゼントだ。穂乃果は、美容師をしながら、アンナの子育て、家事を一生懸命やってくれてる。その対価は、美容院の1つじゃ足りないくらいだ」
「悠人……」
「それに、俺の奥さんとしても、お前は100点だから。いや、それ以上だ。いつも変わらず可愛くいてくれて、本当に嬉しいよ」
ダメだ、泣きそうになる。
そんな優し過ぎる言葉……悠人、ズルいよ。
「俺は、お前を愛してる。穂乃果は誰にも渡さない」
優しいキスと共に、あなたがくれたその想い。
ずっとずっと心に刻んで、これからも私、いろんなことに前向きに頑張っていくね。
そう決意してから、あっという間にお店が完成し、準備も整って、その年の秋には無事にオープンした。
私は、悠人の好意で美容院のオーナーになったんだ。
すごく緊張もしたけど、経営については悠人や私の両親もアドバイスしてくれて、とても勉強になった。
きっと大丈夫。
そうやって、自分に何度も言い聞かせた。
お店の名前は……
『anna』
アンナに決めた。
アンナは、自分の名前が店名になったことをすごく喜んでくれてる。いつか、自分も美容師になりたいって。将来、本当にアンナとこの店で一緒に美容師として頑張っていけたら、そんな嬉しいことはないなと、すごくワクワクしてる。
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