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#バレンタイン
チームVのタワーにて。
やはり、気持ち悪いくらい大きな建物だ。
その中にはポルノスタジオがあり、ヴァレンティノがオーナーとして管理している。エンジェルもここで働いている。
シャットは息を吐くように独り言をつぶやいた。
シャット「…フッ…あなたは覚えてないと思いますがね」
本当はやりたくない仕事だ。
でも、やらなければ自分の居場所がしっくりこない。
そして、殺さなければ、私はアラスターの隣に立てない。
シャットは気持ちを整え、ゆっくりと中へ入る。
室内には香水や精液、ローションの匂いが混ざり、吐き気がした。
シャット「……」
(気色悪い…こういうのは慣れてないのに)
シャット「…こんにちは」
??「え?だれ?」
シャット「…私の読みは合っていました。やはり覚えてませんね。パトラ」
ヴィンテージ「なんで俺の本名知ってるの?生前の名前だし」
シャット「…まぁ、そうですね」
ヴィンテージ「あなたの名前は?」
シャット「…シャルロット」
ヴィンテージ「…シャルロット?カメラマンやってた?」
シャット「そうですね」
ヴィンテージ「どうしたの?俺と復縁したいの?」
シャット「いいえ…本当に理不尽なことなんですがね。死なないでほしかったし、浮気もしないで欲しかった」
ヴィンテージ「それで?もう俺、君のこと好きじゃないよ?」
シャット「えぇ、私もあなたのことは好きじゃないです。お互い、もう好きな人がいますもんね。まぁ、あなたは叶ってないのでしょ?」
ヴィンテージ「ハハッ…よくそんな酷いこと言えるね」
シャット「…ヴォックスのこと好きなのはいいですよ。彼は優しいから。叶わないのは私のせいですからね」
ヴィンテージ「どういうこと?」
シャット「…彼は私の生前のことを知ってますからね。あなたのことも話しました。浮気するようなやつに好かれたくないそうです」
ヴィンテージ「…それを言ってどうするの?」
シャット「…まぁ、落ち着いて」
影がヴィンテージの逃げ道を消す。
ヴィンテージ「…なにこれ」
シャット「ところで、あなたの立場は?」
ヴィンテージ「俺は今、有名な男優だ。立場どうとかはないし、シャルロット。そんな口調で俺と話してていいの?」
シャット「ふふっ…その言葉、そっくりそのままお返ししますよ。あなたこそ私にそんな口を聞いていいんですか?」
ヴィンテージ「…え?」
影がヴィンテージの首に巻き付き、締め上げる。
ヴィンテージ「なにこれ…そういうプレイ?」
シャット「あなたは今、地獄の上級悪魔と話してるんですよ?理不尽で申し訳ありません。では、さようなら」
シャットはヴィンテージの胸元に手を置き、電流を流す。
ヴィンテージ「まッ!!」
その瞬間、短い悲鳴が部屋に響くが、気づけばシャットとヴィンテージは消えていた。
そして、ヴィンテージはそれ以来、見つからなかった。
残ったのは血の跡だけ。
いつも死体は人食いタウンに捨てているから、残らないのは当然だった。
シャットは心の中で少しだけ震えた。
「仕事」と呼べるものでもない。
だが、これをやらなければ、自分が本当にアラスターの隣に立つ資格を持てないという焦燥感があった。
やりたくない。だが、やるしかない――。
人食いタウンにて。
シャット「…ごきげんよう…ロージー」
ロージー「まぁ!シャット一人が来たということは」
シャット「えぇ」
死体を放り投げる。
シャット「どうぞ」
ロージー「まぁまぁの体つきだけど、味はどうかしらね」
シャット「どうでしょうね。では、さようなら」
シャットは影に隠れる。
ロージーは不気味で陽気な笑みを浮かべる。
ロージー「もう…死体じゃなくてあなたの魂が欲しいのにね…」
シャットは内心で思った。
「もう疲れた。あの女に会いたくない。近づいてくるなよ。死体を持ってきただけだし。私からアラスターを奪わないでよ…」
ホテルに戻ると、アラスターが声をかける。
アラスター「おかえり。袖に血がついてるよ」
シャット「え?」
さっきまで後ろには誰もいなかった。
だが、後ろからアラスターに声をかけられ、ハッとする。
シャット「いつから?」
アラスター「今来ました。ほら、早くジャケット脱いで、私の着なさい」
シャット「え、あ…はい。あの…何か用ですよね?」
アラスター「さすが!ご察しがいい」
シャット「それで?」
アラスター「まぁ、ありえない話ですがね。もし私が天使に負けたとしましょう」
シャット「えぇ、そうですね」
アラスター「負ける前提に話進めないでください」
シャット「まぁ、勝てるとは思いませんよ」
アラスター「まぁ、それは置いといて。まぁ、殺されそうになるとしましょう」
シャットは察した。
もし殺されたら、次はあなたが戦ってくれ、と言おうとしているのだろう。
シャット「でもあなたは私が殺すから意味ないですよ…そんなこと…言わないでよ…」
アラスター「あなたが大切な人は自分に殺されて欲しいというのは十分理解してますよ」
シャット「…あなたは自意識過剰すぎでしょ…一言もあなたのことを大切なんて言ってないです」
アラスター「100年以上の付き合いなのに?」
シャット「四捨五入しすぎです」
アラスター「いいえ〜100年は一緒にいるよね?」
シャット「えぇ、いますね」
アラスター「100年一緒にいるのに大切じゃないの?」
シャット「…どうでしょうね」
シャットは心の中で少し顔を赤らめ、目を逸らす。
――大切だからこそ、100年も一緒にいるのだ。
それを口に出すのは、いつも恥ずかしい。
アラスター「んー?」
シャット「…大切じゃなければ…100年も一緒にいませんよ」
アラスター「ふーん、大切じゃなければ100年も一緒にいないと」
シャット「そうですよ。何回も言わせないでください」
アラスター「1回しか聞いてませんよ」
シャット「…まぁ、あなたは私の笑顔も泣き顔も、世界で1番見てますからね」
アラスター「生前も言ってましたね」
シャットはいつも通り、アラスターの前での自分を作るために笑顔を作った。
だが、心の奥底では、今日の疲労や罪悪感をアラスターにそっと預けていた。
抱きしめられると、ほんの少しだけ、安心できた。