テラーノベル
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ハンスへの追加発注――光学迷彩ユニットと、対ルシアン戦用の超高圧C4指向性地雷の代金を確実にするため、俺は深夜の『黒骨の渓谷』へと足を踏み入れていた。「――ねえ、クロード! 待ちなさいってば!」
案の定、不快そうな顔を隠しもせずに背後からついてくるのはセリスだ。
「またついてきたのか。不法侵入で撃ち抜くぞ」
「ふん、誰がアンタの監視を怠るものですか! それに……アンタばかりが最新兵器だの資金調達だので調子に乗っているのが気に入らないのよ!」
セリスは腕を組み、氷の針をピキピキと足元に散らしながら、対抗心を剥き出しにして俺を睨みつけてきた。
「どうせモンスター狩りで稼ぐつもりでしょう? いいわ、勝負しなさい! 今から一時間で、どちらがより高値で売れる魔石と素材を多く稼げるか! 私が勝ったら、アンタは二度と私に『勘違い女』みたいな口を利かないこと!」
「断る。体力の無駄だ」
「負けるのが怖いの!? ハーフの分際で私に怯えてるのね!?」
「……はぁ」
挑発のレベルが低すぎる。だが、放っておくと隣で氷魔法をぶっ放して獲物を散らされかねない。俺は盛大に欠伸を噛み殺しながら、気怠げに消音拳銃のセーフティを外した。
「……いいだろう。だが俺が勝ったら、決勝戦が終わるまで一切俺の前に現れるな」
「望むところよ!」
勝負が始まった瞬間、セリスは氷結魔法を全開にして渓谷の奥へと突進していった。
俺は溜息をつきつつ、コンマ01秒の『時間干渉』と静音拳銃を使い、巨大モンスターの急所だけを正確に撃ち抜いて手際よく高価な部位だけをナイフで削ぎ落としていく。
三十分後。
足元に山積みになった高価な魔石と素材を前に、セリスが氷の剣を手に得意気な笑みを浮かべて戻ってきた。
「ふふん! 氷漬けにして状態良く狩った大型モンスター三頭分よ! どうかしら、私の——」
「俺はこれだ。高純度コア魔石十二個と、希少毒腺が六つ」
「なっ……!? なんでそんな短時間で急所だけ綺麗にくり抜いているのよ!?」
セリスが目を剥いた、まさにその時だった。
「あーっ! やっぱり二人はここにいたーッ!」
「ちょっとシャーロット、大声出すとモンスター寄ってくる……って、二人とも血生臭い素材広げて何やってるの?」
「……深夜の山中で、二人きりの秘密の共同作業……。間違いなく、親密度の急速上昇……」
暗がりから突如として姿を現したのは、爆破のシャーロット、雷鳴のエレナ、そして風のシエルの三人組だった。
「お前たち……なぜこんな深緑の渓谷にいる」
俺が眉をひそめると、エレナはニシシと意地悪い笑みを浮かべて前に出てきた。
「そんなの決まってるじゃん! 昼間の『付き合ってる疑惑』の真相を確かめるために決まってるでしょ! 街でクロードを探してたら、セリス様と一緒に渓谷に入っていくのを見かけちゃったんだよね〜!」
「ち、違うわよエレナ! 私はこいつと『どちらが多く稼げるか』勝負をしていただけで——」
「え〜? 深夜のデートで『どっちが愛が大きいか勝負』〜? ラブラブだね〜!」
シャーロットが冷やかすように指を指す。
12,578
n a ♡︎︎ *
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蒼月
769
グリルタ
72
「ち、違うと言っているでしょうバカッ! 『愛』じゃなくて『資金』よ!!」
「……言い訳が苦しい、セリス様。……勝負にかこつけて、二人きりの時間を作ろうとした……乙女の深層心理……」
シエルがボソリと追撃を叩き込む。
「~っ!? シエルまで何言ってるのよッ!!」
真っ赤になって氷の結晶をパチパチと飛び散らせるセリス。
それを見て大盛り上がりする三人組。
夜の静寂に包まれた『黒骨の渓谷』が、一瞬にして地獄のゴシップ追及会場へと変貌を遂げた。
「ねえねえクロード! 正直に言いなよ! 結局どっちが告白したの!?」
「試合の合間に二人で山に籠もるなんて、もう隠す気ないでしょ!?」
「……手は繋いだ? キスは……? どこまで進んだの……?」
根掘り葉掘りほじくり回してくる三人に対し、俺は盛大な欠伸を吐き出すと、大量の魔石が入った袋を肩に担ぎ直した。
「……セリス。勝負は俺の勝ちだ。約束通り、しばらく俺の視界に入るな」
「なっ……!? ちょっと待ちなさいクロード! 逃げる気!?」
「逃げるんじゃない。ハンスに兵器代金を振り込みに行くんだ。……おい暇人共、あいつの脳内勘違いに付き合ってやってる暇があるなら、睡眠でもしてろ」
俺は足元にコンマ01秒の『局所加速』をかけ、呆気にとられる四人の視線を切るように、影から影へと音もなく滑り込んだ。
背後から「あ! また逃げた!」「待ちなさいバカクロードーッ!!」「……風の追跡、失敗……」という騒がしい悲鳴が響き渡る。
(……やれやれ。モンスターよりあいつらの方が何倍も体力を削る)
俺は冷えた夜空を見上げ、通信端末を操作しながら冷酷な思考へと切り替えた。
(……これでハンスへの資金調達は完了だ)
ルシアンとの最終決戦に向けて、冷徹な暗殺者の準備は着々と整いつつあった。
コメント
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27話、読み終わりました!深夜の渓谷で繰り広げられるクロードとセリスの「勝負」、そこに現れた三人娘のゴシップ追及がもう面白くて面白くて(笑)。「愛じゃなくて資金よ!」って叫ぶセリス、真っ赤になってるのに全然説得力ないのが可愛いすぎます。クロードの「暇人共」と冷たくあしらうスタイルも安定の立ち位置で、この緩急の効いたやりとりが本当に楽しかったです。最終決戦前の準備が着々と進む中、こんな賑やかな日常が挟まれるのが嬉しいですね。次も楽しみにしてます🌷