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《本日の予定:撮影 9:30 》
今日は朝から撮影がある。
先に現場につき、メイク道具やヘアメイクの準備を始めた。
すると間もなくして次々とメンバーが到着した。
「仁ちゃんおはよー」
「着くの早ない?笑」
「仁ちゃんおはー」
「みんなおはよう。早速メイク始めちゃうから1人ずつここの席座ってください」
着々とメイクをしていき、衣装に着替え早速撮影が始まった。
ライブとは違った緊張感が場をピリつかせているのを感じた。
「なんか勇斗さんいつもより緊張してません?」
「私もそう思う笑動き固いよね」
「ライブの方が緊張すると思うのにな」
「ライブはね、み!るきーずのみんなの顔が見れるから意外に大丈夫なんだと思うよ」
「確かに…、、そろそろ俺勉強するのに楽屋戻りますね」
「分かったよ、私も次の準備当たらないと…じゃ、勉強頑張れ!」
「ありがとうございます」
机にテキストを広げ黙々と勉強を始めた。
時々休憩を挟みながら確実に定着するまで
休憩中にはもちろんM!LKの動画や曲を聴いたりしている。
すると休憩に入ろうとしたときドアが開き、反射的にそちらに視線をやった。
楽屋に入ってきたのはスタイリストさんだった。
身長は高くオシャレでいかにもそう見える。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様!あれ吉田くんがメイクしてるんでしょ?すごいねぇ」
「いや、全然…まだまだですよ」
「そんな謙遜しなくても笑」
徐々に近づく靴の音、
伸びてくる手
「てか、吉田くん初めて見た時から思ってたけど、ほんと綺麗な顔してんね」
そう言いながら顔に触れる手に動揺した。
震える手をなんとか動かし、手を払い除けた。
「冗談はやめてくださいよ笑」
「いや、冗談じゃないよ笑ほんとに、それこそメイクしたらさらに映えそう。…ねぇ、この後暇?ご飯一緒に行かない?」
「誘って頂けるのは有難いんですが、すみません。」
「別に今日じゃなくてもいいんだよ?」
「すみません、忙しくて、、」
「あーそう。」
先程とは打って変わって、ワントーン下がった声と冷たい口調に恐怖を感じた。
すると再び手が伸び、俺の体へと撫でるように触れた。
その手がどうしようもなく気持ち悪くて、強めに払い除けた。
「え、、ちょっと何するんすか」
「いいから黙ってろよ」
どこかで聞いたことのあるような言葉。
忘れかけていた記憶が、奥底の引き出しに閉まっておいた記憶が、徐々に這い上がってくる。
(あぁ、、病院か…)
そう思った時にはもう力が入らず、押し返そうとした力は弱々しかった。
「やめ、、て…くだ、、い…」
「何、それで抵抗してるつもり?笑可愛いねぇ」
「…い、、や…,,」
「他のやつらは撮影中だし、まだまだ時間はたくさんあるよ」
あぁ、またあの時のように堕ちていくのだろうか。
深い底に、誰も届かない絶望と無の奥底に。
それでも昔のように何もせずにただひたすら終わりを待つことだけは嫌だった。
今の俺には安心していられる居場所があるから。
『なぁ仁人…俺が言うのも変だけどさ、もしこの先そういうことをされそうになったら俺呼べよ?もしかしたら前みたいに体が動かない時もあるかもしんねぇけど、一回だけでいい、諦めずに声張れ。俺がすぐに駆けつけっから。俺はどんな時でもお前の味方だからな。』
なによりも、こんな俺を受け入れてくれる人達がいる…
"勇斗!!!!"
…
「お前、俺の仁人になにしてんの?」
「え、、?あ…いや、、」
「さっさと失せろよ。」
あぁやっぱり勇気持って良かった…
「仁人大丈夫か?何もされてない?」
「仁ちゃん!?大丈夫??」
「仁ちゃん怖かったな、ごめんな」
「仁ちゃん体は動きそう? 」
頬を伝うこの涙は恐怖から逃れた安堵からなのか、はたまたみんなが来てくれた安堵からなのか…
「大丈夫です。こうやってみんなが来てくれたから、、声が届かなかったらどうしようとか、呼んだところで来てくれなかったらどうしようとかは思ってたけど」
「大丈夫、お前の声ならどんなに小さくても聞こえっから。呼んでくれてありがとう。それに前にも言ったろ?俺はお前の味方だから、安心して呼べ」
「うん、、」
「実を言うとね、俺たちは仁ちゃんの声聞こえんかったんよ。撮影中勇ちゃんがいきなり走り出したから慌ててついてっただけで、、 」
「そうそう笑ほんまにこいつ凄いわ」
「勇斗の目見た時'あ、こいつ殺されるわ'って思ったわ笑」
「それは僕も思いました」
「いーから、仁人は1回寝ときなさい。疲れたろ?俺たちここに居るから、安心して寝な」
「え、、でも撮影…」
「大丈夫だよ。言うてあと少しだし、仁ちゃんの方が大事」
「みんなありがとう」
「いーえ」
「ほら、仁人こっちおいで?」
「…う、うん、、」
訳も分からず、ソファーに座っている勇斗の方へ向かい、横になった。
すると、優しく脈打つような振動が伝わってきた。
「おやすみ仁人」
「おやすみ」
仁人、お前が俺の名前を呼んでくれた時嬉しかったよ