コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
弱々しく見せるために眉を下げ、悲壮感を漂わせた状態で電話に出る。証拠が自らやってきたのだ。いい映像を撮ろう。
ビデオ通話で録画ボタンを押して応答した。「もしもし、美晴です」
『美晴さんッ? あなたどういうおつもり? 幹雄ちゃんにご飯も食べさせられないの!?』
いい大人なんだから自分で食べるご飯くらい用意しろ、と言いたいが我慢する。いつか証拠を叩きつけた時に言いたいことは全部言ってやろう。それまでの我慢だ。
「仕事で遅くなってしまいまして。つい、お義母さまを頼ってしまいました。幹雄さんはお義母さまの料理が大好きだといつもおっしゃっていますし、私もお義母さまのように上手に料理を作れるように頑張るつもりでいたのですが……申しわけありません」
今、言い返してもなにもいいことがない。お世辞も随分達者になったと自分で感心した。
『まあそういうことなら仕方ないわね。美晴さん、明日は私を送迎なさい。ダンスクラブがあるから』
毎週月曜日と木曜日は義母のダンススクールへの送迎がある。前までは不定期だったが、最近講師が変わったらしく、その彼がいる曜日にしか義母は行かなくなった。
お金があるのだからタクシーでも呼んで自分で行け、と言いたい。義母の送り迎えのせいでパート先のシフトが午前中しか入れないのだ。アシ代のひとつでも欲しいところだが、そんなものは愚か、お礼を言われたこともない。やってもらって当然のスタイルの彼らにそんな常識は欠如している。
「はい。いつものお時間ですね。お迎えにあがります」
従順な嫁のフリをしておいた。
『わかっているじゃないの。だったらいいわ。遅れたら承知しないからねッ!』
「早めに伺います」
結局美晴に文句が言いたかっただけのようだ。一日一回は嫌味を言わないと気が済まないのか。
つまらない人間たちだ。これまでいいように使われてきたのが悔やまれるが、人生まだまだこれからだ。
証拠を集めて今まで散々虐げられてきた分の慰謝料をもらって、完全勝利で離婚し、復讐してやる――
※
それから美晴は今までと変わらぬ日々を過ごした。口うるさい義母からの嫌味、夫のモラハラ、性的DV等、証拠はたくさん揃ってきた。
更に久次郎について情報を集め続けた結果、念願の500Pまで貯めることに成功した。ついに愛人の情報閲覧ができる!
パートを終え、大急ぎで家に帰って早速復讐アプリを開いた。
500Pを利用し、愛人情報の閲覧をタップする。
画面が切り替わり、愛人のステータスが画面に映った。
そこには――…