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#山中柔太朗
Freesia
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夫婦の喧嘩は犬も食わない ※Wカプ
「太ちゃーん!」
舜太が俺の膝の上で泣いとる。
泣いてるふりではなくて、ガチ泣き。
「俺やなくて、素直に言えばええんやないの?」
頭を撫でながらそれも難しいんかと呟くと、舜太は顔を膝に押し付けたままコクコク頷いた。
「それなら俺が柔太朗に聞いてこようか?」
勇斗がそう言って立ち上がったので俺は首を振った。
「柔太朗と舜太のことやから口出しするところやないやろ。そこは二人とも分かってるやろうし」
せやろ? と言うと顔を上げてぐちゃぐちゃの舜太は素直に頷いた。
「えうっ、でも、柔怒ってるし……、えぐっ」
咽ている舜太は泣きながら困った顔をした。
そこで仁人がそっと出ていったのを、俺も勇斗も止めんかった。
世話が焼ける末っ子たちだ。
そもそも事の発端は俺と舜太にある。
舜太が撮影場所のたわんでるコードに足を引っ掛けて倒れた先が俺で、舜太の声に気付いて抱き留めた。
しかしメンバー一鈍臭い俺が抱き留めたから一緒にコケてしまった。
そのとき舜太が下になって俺が上に乗っかる状態になったのを目撃した柔太朗が苛ついてるわけだ。――勇斗も太智もいたけど。
柔太朗だって不可抗力なのはその場にいたから分かっている。
でも結果的に組み敷いた形になったのは本当だから俺はすぐに離れて、舜太にもみんなにも謝ったし、舜太もすぐに起きて大丈夫とか、心配させてごめんとみんなに謝ったけど、柔太朗は「大丈夫」と言っただけで外に出て行ってしまった。そして楽屋には帰ってこなかった。
俺は楽屋を出て柔太朗を探していると、なぜか俺たちが使った撮影スタジオの中にいた。
何で中にいるんだ? と思って中に入ろうとすると、スタッフさんが柔太朗に頭を下げていた。
「僕たちは怒ってませんから……」
柔太朗が困惑した顔を見せている。
「しかしコードの処理をちゃんとしなかったのは我々なので……」
「次から気をつけてくれれば大丈夫ですから、頭を上げてください」
どうやらさっきのことを詫びられているらしい。
今がタイミングだと思って中に入った。
「何かあったの?」
「あ、仁ちゃん。実は……」
柔太朗は先にスタジオを出たあと、楽屋とは違う方向に行ったらしく、俺たちが去ったあと柔太朗に気付いたスタッフさんに呼ばれてスタジオに戻ったそうだ。
そして堂々巡りの謝罪と許可のやり取りを今までしていたらしい。
それを理解したうえで、今後の対策を柔太朗とスタッフと三人で確認し、これ以上は時間が勿体ないからと柔太朗を連れてスタジオを出た。
「ありがとう、助かった」
柔太朗がいつも通りに俺に笑ってくれる。
「怒ってないのか?」
あまりにも普通だったのでそう聞くと、柔太朗が気不味そうに目を逸らせた。
「あれは……、俺自身に腹が立っただけだよ。八つ当たりみたいになってごめん……」
ペコリと頭を下げられた。
「え、どういうこと?」
意味が分からずにいると、柔太朗はゆっくりと口を開いた。
「あのとき、コケた二人の直ぐ側にいたのは俺だったのに、俺はびっくりして咄嗟に動けなくて……。その代わりに走り出したのは勇ちゃんだった。舜と仁ちゃんを起こして頭を打ってないか心配してて……。俺は舜も仁ちゃんも心配するべきだったのに何も出来なかったのが情けなくて……」
俺の名前を出してはいるが、舜太を真っ先に助けたかったんだろう、その悔しさを言葉にも顔にも出していた。
「頭を冷やそうと思って、楽屋と反対の方向にいたら、スタッフさんに呼び止められて。あとはさっき話したとおりで、そういう訳だから楽屋に戻るのが遅くなっちゃった」
改めてごめんと、再び頭を下げられた。
「そういうことね。なら、すぐ楽屋行くぞ」
「え?」
「舜太が泣きすぎて困ってる」
手首を掴んで足早に歩く。
柔太朗はキョトンとしながら引っ張られていた。
「怒ってないから泣き止んで……」
まだびえーんと泣いている舜太に柔太朗が抱き寄せて頭を撫でてる。
「だって、びえっ、柔、すぐどっか行ってもうたやん、ぐずっ」
俺が一言言おうとしたところで仁人に止められた。
俺がすぐに行動をしたお陰で柔太朗が動けなかったことが原因なので、俺が行けば火に油だろうという意味と察した。
「だからそれは、俺が舜をすぐに助けられなかったことだから……。って、これ三回目の説明なんだけど……」
最後の一言を聞いてついに太智が吹き出した。
「アカン、舜太が完全に子供や!」
落ち着きや、笑いながら舜太の頭をガシガシ撫でている。
「柔の前なら子供でええわ」
言葉の一文字ずつに濁点がつきそうな声で話している舜太。
ついに仁人も俺も笑い出してしまった。
「いや、よくないだろ!」
「泣き虫なのはいいけど、俺ら三人の前で大泣きされても困るし」
「でも仁ちゃんだってよく勇ちゃんとくっついとるやんか」
ズビッと鼻を啜ってから俺らを見る舜太。
柔太朗と太智はそんなこと知らないというような目で、仁人は顔を赤くして俺を睨む。
「え、どこでもハグしとるん?」
「俺らのこと言えなくね?」
「いや、それは……」
「見えない位置だからって油断するなっていつも言ってるよなぁ……」
言葉を遮ってきた仁人の目は明らかに怒っていた。
「待て待て待て、ちゃんと確認してる!」
「確認してたら舜太は知らないだろ!」
「この前、Aスタジオの物陰でハグしとっ……むぐっ」
舜太の言葉に柔太朗が手で押さえた。
あれはハグじゃない、キスしてた。
いや、そうじゃなくて!
「勇斗ぉっ!」
「落ち着け、話し合おう!」
「柔太朗、舜太、着替えて帰ろかー」
俺と仁人を置いて、三人は舜太の涙を拭いてから楽屋を出て行った。
ああ、俺はきっと暫く仁人に触れなくなる……。
「柔、もうええって」
明日、お互いにオフだからということで柔の部屋に来た。
「ダメ、俺の気が済まない」
柔はコケたときに俺をすぐ助けられなかったことをまだ気にしとって、荷物を置くなりずっとこうして俺を抱き締めとる。
「動けない俺も情けないし、勇ちゃんのカッコよさに嫉妬したり。その上舜も泣かせるし。俺、最低じゃん」
ぎゅうっと更に抱き締める。
「嫉妬してるってことは、それだけ俺のことが好きってことやろ? 俺は嬉しいけどなぁ」
ポンポンと背中を叩くと、ふっと柔が息を吐いた。
「筋力的には勇ちゃんに叶わないかもだけど、舜を守るために精神的にもっと強くなる。だから俺の嫉妬で舜を泣かせるかもしれないけど、もうちょっと我慢してくれる?」
すぐには無理かもだからと素直に言ってくれる柔に、俺からキスをした。
「勿論やで。俺もつい泣いてまうかもしれんけど、こうやって少しずつでも話して寄り添っていこうな? それが『付き合う』ってことやろ?」
な? と笑ってみせると、柔はきつく抱き締めてから、俺にいっぱいキスしてくれた。
「有り難う」
「ええよ。俺もいっぱい泣いてごめんな?」
「ううん、全然」
こうして俺と柔仲直りした。
勇ちゃんは大丈夫かなぁ……。
まあ、なんとかなっとるやろ。
今俺は柔のあったかさを噛み締めたかったから、勇ちゃんたちのことを考えるのを辞めた。
大好きやで、柔。
終
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