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千原城市役所の小会議室。マスク以外はコスチュームのままのチバラキVの5人と北野が机に座っている。
北野「ちょっとよく分からないな。貧困状態の子どもなのに、ちゃんとした服装で痩せてもいなかった?」
沙羅「あのなあ、みんな勘違いしてるよ。どんな様子の子ども想像してたんだ?」
玲奈「それは穴の開いた服とか、継ぎはぎだらけの服とか」
智花「ガリガリに痩せていて顔色も悪くて」
瑠美「顔が垢とか煤で真っ黒とか」
沙羅「あのなあ、ここは日本だぜ。一応先進国だし、経済大国だろ。そんな様子の子どもいるわけねえだろ」
倫「だったらいない事になるんじゃないかい? 貧困な子どもなんて。でも13.5%もいるって話だったよね」
開きっぱなしのドアをコンコンとノックする音がして近藤が入って来る。
近藤「すみません、今の話聞こえてました。結論から言えば沙羅さんの言っている事が正しいんです」
北野「ああ、そうだった。近藤さん、今日は子どもの貧困問題を研究している東京の大学の研究発表会に行ってたんですよね。何か詳しい事分かったんですか」
近藤は開いている席に座り、カバンから資料の束を取り出す。
近藤「他の方たちがイメージしているのは絶対的貧困と言うんです。今、日本のような先進国で問題になっているのは、相対的貧困という事なんです。沙羅さんが言っているのは、まさに相対的貧困なんですよ」
瑠美「ソウタイテキヒンコン? 沙羅、それ何の事?」
沙羅「あたしもそんな難しい言葉知らねえよ。けど今の時代の日本の貧困とか貧乏とか、それは分かる」
近藤「OECDという国際機関が定めた定義があるんです。今の日本の全人口が1億2千万ちょっととして、所得が高い順に上からずらっと並べたとしますよね。で、ちょうど真ん中の、6千万人目あたりの人の年間所得を推計します」
倫「平均所得って事かい?」
近藤「いえ、平均でなく中央値です。ちょうど真ん中と平均は違うんですよ。格差が大きいほど、平均値が中央値より高くなるそうです。そして、中央値の半分未満の手取り所得しかない層を、相対的貧困層と言うんです。子どもの貧困問題というのは、この中央値の半分未満の所得の家庭で暮らしている子どもたちの問題なわけです」
玲奈「え? いまいち分からないんですけど。手取りの年間所得がいくら未満だと相対的貧困って事になるんですか?」
近藤「政府のデータだと、127万円です。何年か前の数字ですけど、今でも大きくは変わってないでしょうね」
智花「てことは、月に10万円ちょっと? いや、それは暮らしていけないわ」
瑠美「この辺りは家賃が安いといっても、最低月に4万円前後だよね。残りは6万円ちょいか。あたしもアパートに住んでるから分かるぜ。そりゃ生きてくだけでギリギリだな」
倫「その家賃って6畳一間とかの場合だろ? 親子3人とか4人だともっとかかるよねえ。あるいは6畳一間に親子3人とかで住んでたら、子どもにとってはひどい家庭環境だろうねえ」
近藤「服とか毎日の食べ物とかは何とかなるでしょう。そういう日用品や食品でも百円ショップで売っている時代ですし」
智花「私もお菓子ぐらいは百円ショップで買う事あるけど、毎日そんな食事してたら栄養バランスが悪いですよね」
沙羅「栄養バランスがどうのこうの言ってられる時点で恵まれてんだよ、そんな家は。とにかくある物で腹を膨らます。だから痩せちゃいないけど、糖質が多過ぎて逆に肥満気味になるんだ」
近藤「沙羅さんお詳しいんですね。何かそういうボランティアとかなさった事でも?」
沙羅「そりゃ詳しくもなるさ。経験者だかんな、あたし自身が」
他の一同一斉に
「え?!」
沙羅「あたしはその、相対的貧困だっけ? まさにそういう貧乏な母子家庭で育ったんだよ」