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キーンコーンカーンコーン
教室には昼休みを知らせるチャイムが鳴り響く。それと同時に授業が終わり、クラスメイトはお弁当を持って各々動き出した。
今日は教室に残っている人が普段より多い。
その理由はおそらく……
「響くん!一緒に食べよ?」
観月くんと一緒に食べるためだ。
現に今、観月くんをお昼に誘っている声が聞こえる。
僕はその光景を横目に見ながら、弁当箱を開けた。
「響くん!お願い!」
「ごめんな、俺一緒に食べたい人がおるんよ」
「えぇー!」
観月くんと話している女子は学年の中でも一位、二位を争う美人と言われている立川さんだ。
丁寧に手入れされた艶々な長い髪、まつ毛がくるんと上がっているくりくりな目、守りたくなる雰囲気が人気なんだとか、
そんな立川さんの誘いを断る人が今までいただろうか、そのレベルの人の誘いをいとも簡単に断る観月くんは何者なのだろうか。
「また今度、一緒に食べたるから、」
「…うん、わかった、約束だよ?」
「わかったから、約束な」
ようやく話が終わったのか、立川さんと立川さんの友達は観月くんの机から離れて行った。
(観月くんは誰と一緒に食べるのだろうか)
そんなことを考えながら、僕は一口目を食べようとした。
「まだ、一口も食べてないやん」
「…うわっ!」
「はははっ、ごめんな驚かしてしまったな、てかうわってなんや」
「……あわわ」
僕の箸からはお母さん手作りの唐揚げがポトンと落ちる。
そうなる理由はただ一つ。
観月くんが喋りかけてきたから。
僕に話しかけるなんて誰が予想しただろうか。
どう見たって内気な僕だ。こんな僕に話しかけるなんてどういうことなんだ。
僕の頭には大量のハテナが浮かびまくっている。
「あわわって言うんや、おもろいな」
「……あわわわわ」
観月くんはそう言いながら、僕の頭をゆっくりと撫でた。
僕の頭はハテナが浮かびすぎて真っ黒だ。
「そんなあわわせんくてもええやん、まだ取って食ったりせんから安心せぇや」
「……ぁ、うん、ん?」
まだって聞こえたのはきっと、いや絶対気のせいだ。
気のせい気のせい、
「てか、一緒に昼食べてくれるよな」
「…えと、観月くんは一緒に食べる人がいるんでしょ?」
「さっきの会話聞いとったんや」
「……は、はい」
観月くんは笑顔で僕に詰め寄る。
その行動が怖くて椅子をめいっぱい壁に寄せた。
それでも観月くんは近寄ってくる。
「そんな怖がらんでもええやん」
「……ご、ごめんなさっ」
僕は謝った。
それでも観月くんは近寄ってくる。
心臓がバクバクと鳴る。
(これ嫌だ、)
僕はこの感覚を知っている。
中学の時のあの感じ、
「観月くんごめん、謝るから許して」
僕は急いでそう言った。
急いで言わないと中学の時みたいになってしまいそうだったから。
それなのに、観月くんは黙ったまま、
「観月くん…」
「謝って欲しい訳じゃないねん」
「…ぁ」
「ごめんな、怖がらせた」
「…いや、そんなことは」
観月くんは少し冷静になったのか、僕から離れ、謝罪をしてきた。
その謝罪からは観月くんの気持ちがしっかりと伝わってくる。
きっと観月くんは僕が思っているような人じゃない。仲良くなれそうな気がする、
「ごめん、お昼一緒に食べんくてええから」
観月くんは悲しそうな顔で教室から出て行こうとする。
「待って!」
僕は普段なら出さない声量で呼び止める。
その途端、教室に居るクラスメイトは僕の方を驚いた表情で見た。
でも、一番驚いた表情をしているのは観月くんだった。
僕は急いで観月くんの方に向かう。
「観月くん、僕と一緒にお昼食べよ」
「でも、さっき嫌われたやろ?」
「そんなことないって」
「ほんまに?」
僕は大きく頷いた。
その行動を見た観月くんはとても嬉しそうな顔をしている。
「じゃあ、食べよか」
「うん」
観月くんは僕の手を引いて席に戻って行った。
一緒にお昼を食べれる、そう思うと胸がポカポカしてきた。きっと、僕は凄く嬉しい。
キーンコーンカーンコーン
教室に入った途端、お昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴る。
「鳴っちゃった」
「せやな」
僕たちはお互いを見合い笑いあった。
話している時間でお昼休みが終わってしまったみたいだ。
久しぶりに学校で笑った気がする。
学校で笑えたその当たり前のように思える事実が僕の中では堪らなく嬉しかった。