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百済るくあ【colorful】
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うわ……読み終わってしばらく動けなかった。古峰さんの豹変ヤバすぎるし、何より日ヶ谷さんの家庭事情がこんなに壮絶だったなんて……ヒールで頭踏まれる描写、手に血が滴るところ、本当に生々しくて吐きそうになった。でも最後に「助けて」って宵宮さんに連絡するシーン、どんなに自分を責めても生きようとするその一歩がすごく響いた。いじめの構図が逆転していくこの展開、もう続きが気になって仕方ないよ……
いじめてた子に依存することになる話 3
「ん、んんっ…」
宵宮さんとの会話を終え、そのまま家路を辿っていた時、突然背後から布を口に押さえつけられた私が次に目を覚ましたのは、薄暗くて何かの写真がびっしり貼り付けられた見知らぬ部屋。
「どこ、ここ…イタッ」
椅子に座らされていた私は拘束具をつけられていることに気付かず手を動かした。
両腕を手錠で拘束されており、まるで昨日宵宮さんにした仕打ちが再現されているかのようだった。
「あ、起きたんだ。おはよう日ヶ谷さん、頭とか打ってない?」
タイミングを見計らったかのように扉の外からやってきたのは古峰さんだった。
この感じからして、私を襲ったのは古峰さんなのだろう。
「襲っておいてよくそんな心配できるね?どうしてこんなことしたの?」
「簡単だよ。日ヶ谷さんが私との約束破ったから。どーして宵宮さんと放課後話してるの?宵宮さんは私と一緒に帰るはずだったのに日ヶ谷さんがあんなことするから一緒に帰れなかったじゃん。」
「宵宮さんが私のこと心配してくれてたみたいだから安心させてあげただけだよ。」
「宵宮さんが貴女の心配?アハハッ、……勝手なことしないで。宵宮さんの心身のケアは私がするんだから。余計なことしないでくれる?」
学校で見せるあの聖人ぶりは見る影もなく。声も低くて威圧的。文学少女がこんな形相になるだなんて知らなかったし知りたいなんて思わなかった。
「はいはい。もう宵宮さんとは関わらないって本人にも伝えてるから安心してよ。だから早く手錠取って?」
どうしてここまで宵宮さんに惚れ込んでいるのかわからなかったが、そんなのはどうでもいいことだ。手短に彼女が安心できそうなことを話して手錠を外すよう促す。
「もうちょっとお話しようよ。私日ヶ谷さんのこと知りたいんだ。特に……ご両親のこと、とか」
「……」
私は意地悪なことを言ってくる古峰さんを睨む。今になって私のことを知りたいだなんてどうかしている。しかも私自身のことではなくよりにもよって両親のことを知りたがろうとしている。バカにしているのだろうか。
「ふふふ、そんな顔してたらせっかくの綺麗な顔がもったいないんじゃない?」
「誰のせいだと思ってるの」
「わ〜、怖い怖い。それでそれで?早くご両親のこと教えてよ」
「教えるわけないでしょ」
どうしてそんなにあの二人のことを知りたがるのか。少なくとも私はあの二人にいい印象を持っていない。なんなら悪い印象しかない。
思い出すだけでも悪寒がするのにそれを誰かに話なんてもってのほかだ。
「え〜…。じゃあこうするしかないのかな」
「あうっ!?」
古峰さんは私のお腹にスタンガンを押し当てた。気絶するほどの電力ではなかったものの、痛みは想像を絶するものだった。
「なんで…そんなもの、持ってるの……」
「もしもの時のためにね。まさかこんな拷問みたいなことに使うことになるとは思ってなかったけど」
昨日の宵宮さんとまさに同じ状況になっていることに気付いたとき、自分がしたことの惨さを理解することができた。
「……。どれだけやっても私は絶対答えないから」
「えぇ……。それじゃあ学校に連絡しちゃおうか」
「…っ」
どうしても親には私がしでかしたことを知られたくなかった。だから学校に連絡されることも避けたい。けれど、私の両親のことを古峰さんに教えるのはいやで。これを教えてしまったら、私は彼女の操り人形のようになってしまうから。
「さぁどうする?教えるなら今のうちだけど」
「……言わない。」
私は言わないという選択を選んだ。学校に連絡が行き、それが両親に伝わり、私は”あの時”みたく……いやそれ以上に叱られる。そんなのごめんだったが、ここで抵抗したところでいつかバレるんだと半ば諦めながらこの選択をした。
「そっか。それじゃあ手錠外すね」
手錠を外し、拘束から解放した古峰さんは楽しげな表情をしながら私を見た。
「明日以降が楽しみだよ。日ヶ谷さんがどうなっちゃうのか」
「……」
私は右手に力を込めて弄ばれていることに対して抱いた苛立ちを抑える。
今すぐにでもこのイライラを古峰さんにぶつけてしまいたいが、それで更に問題が悪化してしまってはかえって自分が痛い目を見ることになる。だからこの負の感情は、いつかその時までとっておくことにした。
────────────────
帰路に着いている間、私は生きている感じがしなかった。たくさん人やものが行き交っているのに全く音が耳に入ってこず、さらには私は今ちゃんと歩けているのかどうかすらわからなくなっていた。
「……………………………………」
家に帰りたくない。
そう思うのは一体何年ぶりだろう。家の中では両親の操り人形にされ、なにか少しでも2人の意思と反することをすれば罵詈雑言に暴力。常に神経を張り巡らせていなければいけない生活を強いられ、生きている心地がしなかったのを今でも覚えている。
「……さん」
「……………………………」
「……さん!」
「……………………………………………」
「日ヶ谷さん!!」
ガシっ、と中々強い力で肩を掴まれる。一体なんの用だろうか。もしも下心満載な奴だったらビンタの一つや二つ平気で食らわせてやる。
「なんです…………か…?」
振り返ると、そこには彼女が愛してやまない宵宮さんがいた。
「宵宮さん?どうしてこんなとこに?」
「晩ご飯の買い出しで。日ヶ谷さんは帰り?」
「うん。そうだよ」
買い出し。そういえば昨日も片手に食材が入ったエコバッグを持っていたような気がする。
「宵宮さんの家ってこの近くなの?」
古峰さんの家は私の家の真反対。私より後に学校を出たはずの宵宮さんが既に私服に着替えていることから、きっとこの辺りに宵宮さんの家があるのだろうと想像がついて。
「あっ……えっと、うん。そうなんだ」
宵宮さんはそれはそれは気まずそうに答えた。
なんとなくで聞いた問いかけだった。いじめをしていたのにも関わらず、私のことを気にかけてくれていたからちょっとしたことを聞いてもいいんだと思っていた。勘違いしていた。都合のいいように考えていた。恥ずかしい。
「へ〜。それで、どうして私に声をかけたの?」
「日ヶ谷さんが心ここに在らずみたいな感じで歩いてたから心配で…」
この子はよく分からない。心配してくれるのはとても嬉しい。でもいじめをしていた相手をわざわざ気にかけるなんてお人好しにも程がある。
「そうだったんだ。ごめんね心配かけて。でも、大丈夫だから。宵宮さんも早く買い物済ませて帰りなよ。寒くなるよ」
「………わかった。もしなにかあったら連絡してよ。いつ手に入れたのか知らないけどストレス発散以外の連絡だったら出るから」
「……………うん」
そうして宵宮さんは私の横を通り過ぎて買い出し先に向かっていった。
私はまた家へ向かって歩き始めた。
─────────────────
家に着くと、数ヶ月ぶりに見る赤色の自動車が駐車場にあった。
こういう時だけ帰ってきて、ほんとうに帰ってきてほしい時には帰ってこない。
いや、帰ってきて欲しいなんて思ったことなんてないか。あはは。
「ただいま」
心臓が痛いくらいに脈打っている。これから何をされるのかを考えてみる度に心は恐怖に支配され、身体の自由は奪われる。
「おかえりなさい陽乃。そこに立っていないで早くこっちに来て?」
リビングから姿を見せたお母さんは、玄関に立ち尽くしてしまっている私を自分の下にくるよう催促する。
足が震えて動かない。早く行かないといけないのに、意思に反して一向に動こうとすらしてくれない。
「足が、動かなくて……」
「それは大変。」
バチンッ!!!!
玄関に立ち尽くす私の元へ近付いてくれば、母は大きく手を振りかぶり、頬にビンタを落とした。
私は一瞬、何が起きたのかわからなかった。
「…………ぁ」
「ただでさえ迷惑を掛けているのに余計な心配までかけようとしないでくれる?」
「ご、ごめんなさい」
「謝るくらいなら最初からやらないで!!」
「うっ!?」
母は私が玄関にいることを利用して足で私のお腹を押さえつけ、扉から離れられないようにした。
「あなたのせいで私の大切な時間がこうして失われているの。それに、病院のみんなにも迷惑をかけているのよ。あなたがしでかした失態がこうして多くの人の迷惑になっているの。あなたは一体どうやってこの責任を取るのかしら?」
「…わ、わから——いっ!???!」
母は自身が履いていたであろう紅くて汚れひとつ見せないヒールで私の頭を殴った。
側頭部に鋭い痛みが走り、私は両手で側頭部を抑える。骨が折れていないか気になるが、それよりも心配すべきなのは
・・・・・・・・・・・
ヒールが汚れていないかだった。
「イタい!やめて!やめて!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「うるさいわね、私が聞いているのは責任の取り方。それ以外の発言は求めていないわ」
(責任の取り方なんてわかるわけない。だってもうやってしまったことだから。謝ればいいの?謝ってアナタは許してくれるの?許さないでしょ?アナタはアナタのキャリアに傷がつくのがイヤなだけ。責任がどうこうなんて私をいたぶるための都合のいい理由付けでしょ)
バチンッ!!
もう一度強烈なビンタが私の頬に落ちた。まだジンジンして痛かったのに重ねて落とされてより痛みが増した
「あ、謝る!会社の人に謝ります!」
心でどれだけ母に悪態をついても口は情けない言葉を吐き捨てるしかできなかった
「………。」
「だからもう打たないで……っ!?」
「謝るくらいなら最初からやらないで………って、さっきも言わなかったかしら?」
母は手をパーからグーに変え、私の頭を殴る。ヒールで殴られた場所を抑える手に血が滴っているのが目に入り、母の手に触れては更に状況が悪化すると確信した私は、どうにかそこに手を置き、頭を守った。
「ほんの少し前に言ったことを忘れるなんて……あなたの脳は小さいの?それとも聞いていなかったのかしら?」
「ぅぅ……っ、き、聞いて、ました…」
「そうよね?でもそれって尚更タチが悪いと思うのよね。だって言われたことをちゃんと聞いていたのにも関わらず、反省もしないでもう一度同じことをしたということだもの」
「……」
「私たちがどれだけ完璧な子になるよう努力してきたと思っているの?まさか一度言われたことを繰り返すような子になっているなんて……しばらく私たちが居ない間に腑抜け過ぎじゃないかしら」
「ごめ…ん、なさい」
「あなたみたいな子はこの家にはいらないわ。だから出て行ってくれる?そして二度と私たちの目の前に姿を見せないで」
そんなの願ってもいないことだった。それが出来たならどれだけ楽だったろう。だが生憎私はまだ学生だ。家出なんてしたって警察に連れ戻されるだけ。そしたらまた今みたいなことになる。自分勝手な親だから。
「ごめん……なさい。もう、しないので、まだここに居させてください。お願いします……」
私は頭を床につけて懇願する。この家に居させてくれと、自らこの地獄に居させてくれと。
あぁ……おかしくなっちゃいそう。なんでこんな思ってもいないことを口にしないといけないんだ。しかも土下座なんてしながら。
「…………」
「思ってもないことを口にしなくていいのよ?そもそも私はあなたに出て行くように言っているの。あなたにここに残るなんて選択肢はないのよ」
「ッ!ッ!ッ!」
母は私の頭を足で踏みつけ、その足で頭を何度も何度も踏み続けた。
「そうね〜……話をろくに聞けないあなたはもう喋らないで?あなたの声を聞いていると虫唾が走るっていうか気分が悪くなるのよね」
「ーーーーーーいッ!?!!!?」
いつ履いたのか、今度はヒールを履いた足で何度も何度も頭を踏みつけられる。
頭が割れてしまいそうな痛みに私は声を漏らしてしまう
「やっ、やめて!×んじゃう……っ!」
「×ぬの?それなら好都合じゃない。アナタの姿を見なくて良くなるんだもの」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
足を止めたくても痛みに耐えるので精一杯で手を動かすことが出来なかった。
今になって宵宮さんの気持ちがちゃんと分かった気がした。×が近づいてくるようなこの感覚。でも抵抗出来ないからそのままその時を待つだけになる無力感。どうして自分がこの立場になるまで気付くことが出来なかったんだろうと、今更後悔する。
「うるさいわね……さっさと×にな─────」
ブーブー
「………電話?はいもしもし」
「っ!!」
タイミングよく鳴った着信音。電話に対応するために足を退けた隙を狙い、私はジンジンする頭で家を飛び出し、宵宮さんに連絡する。
外は既に日が暮れており、辺りを照らすのは街灯と月明かりだけ。そして、私の心を描いたかのように大雨が降り注いでいた。
『もしもし日ヶ谷さん?どうした─────』
「お願い……。助けて…………。」
ほんとに情けなくてどうしようもなくて都合がよくて救いようのない自分にうんざりした。
なんで私なんかがいっちょ前に助けを求めちゃってるの。そんなことしていい存在じゃないのに。
なんで泣きそうになってるの。泣く権利なんて私にはないのに。
なんでまだ生きてるの。私に生きる資格なんてないのに。