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「夜のフライトって宇宙を飛んでる気分になって,ロマンチックで良いですよね.」
「確かに.昼とは違う静けさがそれっぽさを演出してくれそうだな.」
最終出発便を格納庫から🌸は目を輝かせて見送る. 菊田も隣に立って,飛行機を見送る🌸を横目で見る.
「菊田さん.」
「ん??」
「この後見てもらいたいものがあるんですけど,お時間良いですか??」
「良いよ.何を見てほしい??」
「広報で新しく使うポスターを募集してるらしくて.それに出すポスターです.」
「わかった.終わって着替たら,玄関で待ち合わせようか.」
「はい.」
遅番勤務後の約束をしてからの菊田,更衣室にて.
「(今度は俺がメシに誘う番か…??そもそもこの時間に開いてる店あったっけ??)」
思考を巡らせ,玄関に向かうと先に🌸が待っていた.
「待たせたか.」
「いえ,さっき来たようなもんです.」
「立ち話もなんだから,どこか場所を移したいんだけど….」
「幹線道路沿いのファミレスはどうですか??」
「あそこたしか24時間だったな.そうしようか.」
「はい.」
話が決まると,駐車場と駐輪場に別れる.
「(俺も中型取ろうかな….)」
バイク通勤の🌸は,父のお古と言っているレーサータイプのバイクを颯爽と乗りこなしている.
「すごいなほんと.採用してくれると良いな.」
料理が提供されるまでの間,ポスターを見せてもらう.“私の憧れは…”というキャッチコピーに空港関係者全てが描かれていた.
「はい.あとは菊田さんに似せて描いた人がいるので,出す前に確認しておこうと思って.」
「…これがそう??」
「はい.」
「結構イケメンだな.」
「でしょ!!」
「全然,俺に許可とらなくても出して良いんだぞ??」
「最近そう言うの厳しくて.絵を描く身として,大変な思いしたことあるし.」
「そうか.イケメンに描いてくれるのが嬉しいから,俺でよかったらいっぱい使ってくれな.」
「ありがとうございます.」
提供された料理がなくなった頃.
「菊田さんって,恋愛相談されやすいタイプですか??」
「まぁ….今まで一緒に働いてきた野郎共の恋バナは大抵聞いてきたかな.」
「やっぱり.いや実はですね,最近一目惚れした人がいて.」
「ほう.どんな人なんだ??」
「初めて会うのに,ずっと前から一緒にいるような感覚になる人です.実はこのポスターが採用されたら,アクションを起こしたいと思ってます.」
「じゃあなおさら,ポスターが採用されるように願掛けしないとな.」
「はい.」
とお互い伝票入れに手を伸ばしたので…
「俺が払うから.」
「いえいえ,自分が頼んだものだけでも…!!」重なった手を動かさず数十秒.菊田はゆっくりと伝票入れを自分のほうに引き寄せ,その反動で🌸はコントをするみたく机に突っ伏した.
「ごちそうさまでした.いつもすみません.」
「気にするな.誰かと食事するほうが,気が紛れて良い.」
「普段は誰かと一緒じゃないんですか??」
「そう,なんだ.かれこれ10年独身だな.」
「そうだったんですね.」
「ところで,🌸は明日は夜勤だったな.」
「はい.」
「俺休みだけど,緊急性があるときはすぐ駆けつけれるようにしてるから.何かあったら連絡して.」
「はい.今日は色々とありがとうございました.」
「気をつけてな.」
駐車場で話した後,🌸の意中の人物が誰なのか気になりすぎて,変に胸が高鳴る菊田だった.
しばらくして.🌸のポスターは採用されなかったが,就活生へアピールするためのPVを刷新するための撮影要員として,整備士チームも抜てきされた.
「すごーい!!男のCAさんもいるんだ!!グランドスタッフの人もカッコいい!!」
格納庫で一部撮影ということで,続々と集まる関係者たちに🌸は興味津々だ.
「(誰だなんだ??🌸が一目惚れしたって奴は.)」
菊田は終始辺りを見回して落ち着かない.そんな中撮影は始まり,🌸はCAやパイロット達と堂々と踊っている.
だけど彼ったらわたしより
自分の飛行機にお熱なの
曲に合わせて,歌詞が脳内再生される.実はあれから気になって,何回か曲を聴いていた.
「(よっぽど🌸のほうが俺らより“飛行機にお熱”だよな.)」
誰よりもキレッキレで踊る🌸を保護者の如く見守った.
それからインサートで整備風景やトーイングカーを運転する様子を撮影し,無事終了となった.
撮影日から数日後,久しぶりに🌸と菊田の夜勤が回ってきた.
「今日は少し,時間にゆとりがありますね.」
「そうだな.このまま忙しくならないことを願うよ.」
「ですね.」
いつものコーヒーブレイクだが,どこか🌸は上の空.
「ポスター,残念だったな.」
「え…??あ!!そうなんです!!でも私がここの整備士だって知ってもらえて.この前の撮影を企画したんですって.」
「そうだったのか.裏でも大活躍だな.」
「はい.で,あれなんですけど.」
「うん.」
「ポスター採用されたら,意中の人にアタックするって前に話したじゃないですか.」
「うん.」
「採用されなかったけど,やっぱりどうしても気持ちを伝えたくて.」
「うん,その気持ちは無駄にしちゃいかん.思いきって伝えておいで.」
🌸はぎゅっと肩をすくませて考えた果てに,ポケットから封筒を差し出して.
「私,菊田さんが好きです.いきなり恋人通し,じゃなくてもいいので.イエスならこの封筒を受け取ってください.」
あんなにうるさい空間が静まり返ったような.そんな感覚になった菊田.
「意中の人が俺だったとは….封筒の中身は??」
「この仕事が終わったあとに乗る飛行機のチケット,往復2人分です.」
菊田は腕組みして天井を仰いだのち.
「俺がまだ10歳若けりゃ🌸と他のスタッフと楽しく仕事できたのになって,どっか後ろめたい気持ちがあったんだけど.」
そう言って封筒を受け取り.
「そういうこと思うのやめて俺も素直にならないとな.」
「受け取ってくれたってことは…??」
「俺も🌸が好きだよ.恋人通し,これからよろしくな.」
それからというもの、あっという間に時間は過ぎて.
まだ一緒にいたい気持ちを堪えつつ,日帰り旅行後の2人は家路に着いた.
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