私は屋上に行って全てを終わらせようと思っていた。だがそれは無理だった。
何故なら三つ編みの先客がそこにいたから。
私は靴を脱ぎかけていたが、その先客に声をかけてしまった。
「ねぇ、やめなよ。」
口をついて出ただけ、本当はどうでもよかったんだ。
でも先を越されるのが何となく癪だった。
事情を聞くと三つ編みの子は言った。
「運命の人だった。どうしても愛されたかった。」
────どっかで聞いたような話だった。
気がつけば何故か私の口は勝手に動いていた。
「ふざけんな…!そんなことくらいで私の先を越そうだなんて──」
「欲しいものが手に入らないなんて奪われたことすらないくせに!」
言ってしまった。だが、先客の反応は私の予想とは違った。
「話したら楽になったよ。」
そして三つ編みの先客は消えていった。
次の日。今日こそはと靴を脱ぎかけたら、背の低い女の子がそこにいた。
そして私はまた声をかけてしまった。
「何故あなたはここに来ているの?」
私は聞いた。そしたら背の低い女の子は、
「無視されて、奪われて、クラスに私の居場所はないの。───」
「だからその孤独をなくすためにここに来たの。」
彼女は私と──いや───
「ふざけんな…ッ!そんなことくらいで…私の先を越そうだなんて!」
背の低い女の子は驚いた顔をして振り向く。
私は続ける───
「それでも、うちでは愛されて…あたたかいごはんもあるんでしょ…?」
驚いた顔をした女の子は泣きながら、
「おなかがすいたよ…ッ…」
と言って消えていった。
わたし自身の痛みは誰にも言えないままなのに、消えていった先客のように、背の低い女の子のように、他の何人かの先客にも声をかけて追い返した。
そうしていくうちに似たような悩みの子を初めて見つけた。
まるで私みたい───。
彼女は黄色いカーディガンを着ている子。彼女は語る。
「うちに帰る度に増え続けてく痛みを消し去るためにここに来たの。───」
「だって、ここから飛び立つだけで嫌なことが全て無くなるんだよ──────?」
ホントはどうでもよかったのに、思ってもいないことなのに、でも声をかけたんだ。
「ねぇ…やめてよ…──」
口をついて出ただけなんだ。でも私はすぐわかった。
(ああ…どうしよう。この子は止められない、いや、私に止める資格は無い。)
それでも私は言った。
「私に止める資格は無い、だって私も同じ思いをしてきたから。でも…それでも───ここからは消えてよ。」
私は心の中にある感情を口で表した。
「───君を見ていると苦しいんだ。」
「じゃあ、今日はやめておくよ。」
黄色いカーディガンの子はそう言って目を伏せながら消えていった。
また私はここに来た。今日こそは誰もいない。私一人だけ。
誰にも邪魔をされることはない、邪魔してはくれない。
カーディガンは脱いで、長い髪の三つ編みは解いて、背の低くて孤独な私は、
今から全てを終わらせる。
──────今からとびます。
(そう、今まで説得していた女の子は全員私。私だったんだ。
自分に余裕を持つために自分自身を説得していただけだったんだ─────)
この話はフィクションです。決してこのような行動を推進している訳ではありません。
読んでくださりありがとうございます。