第10話「貴方の仮面に手を掛けて」
Kr視点
👓
「ここの2人で前に出る時のステップ、なんかスマイルと揃わないんだよな〜 」
😊
「そこはオレが勝手にテンポ変えたからかもな、合わせ辛いなら戻すが…. 」
👓
「いやいいよ、スマイルが変えたってことはそっちの方がいいと思ったからだろ?なら俺が合わせるわ。 」
あれから俺達は全体練習以外でも時間さえ合えば集まって練習するようになった。
時間さえ合えばと言っても、俺がスマイルと一緒にいたくてわざわざ仕事終わりの1時間とか、オフの日に練習しようって誘ってるからまぁまぁな頻度だけど….
😊
「あ、きりやん。」
👓
「ん?」
😊
「ここの腕の動き、もっと角度変えた方がいい。」
そう言いながらスマイルは俺の背後に回りこみ、両腕を掴んで角度を調整する。その眼差しは鏡越しで伝わる程真剣だった。
けど距離が近い!!俺の方が多少背が高いからと言っても、耳の近くで話されると心臓がバクバクして集中できない!!
😊
「分かったか?」
👓
「わ、わわわ分かった!!」
このアイドル様、友達との距離が測りきれていないのか、毎回毎回距離が近いのだ。ほぼファンサしてるようなもん、なんならファンサより近い。普通に考えたらおかしいことは分かるはずなのに….
👓
「というかスマイル予定とかなかったの?」
😊
「ん?なんでだ?」
👓
「だって俺が練習に誘うと大抵付き合ってくれるし….忙しいのに無理して予定空けてないかなって。 」
😊
「そう思うなら誘わなきゃいいだろ。」
👓
「えっ!いや、そういう事じゃなくて!」
😊
「ふはっ笑わかってるよ、ただ心配してくれただけだろ?安心しろ、俺はきりやんとの練習が楽しいから誘いに乗ってるだけだ。 」
👓
「なんだよ、か、からかうなよ…..//// 」
顔が熱い、この鈍感王子様は俺の気持ちなど露知らず、弄ぶかのように言葉を並べる。
それくらい簡単に軽口を叩ける仲になれたと思うべきなのかもだけど。
あんなに崇拝して推してきた人が隣で友達のように笑っていることにはまだまだ慣れないが、好きになってしまった以上距離は詰めたい。
そんな下心を抱えながらも俺は今日もスマイルと練習する。
😊
「ぁっ…. 」
そんなことを考えていると、突然スマイルがバランスを崩した。
👓
「スマイルっ!大丈夫か?」
😊
「悪い、少し目眩がしただけだ…」
👓
「それ大丈夫じゃねぇじゃん….」
幸い数歩たたらを踏む程度で、倒れたり気を失ったりはしなかったが、あまりにも危険な状態であるのは確かだ。
👓
「もしかして体調わるかった?」
😊
「いやそういうんじゃない。」
👓
「何が悪いところあるなら病院にでも!」
😊
「落ち着けっ!」
国民的アイドルであるスマイルの身に何かあったら、そう考えると落ち着いてなんていられなかった。どうにかしてあげたい、彼には万全の状態でいて欲しい、そんな思いが先走る。
そんな俺の腕を掴んでスマイルは止めてくる。
なにか思い詰めたような表情をして、どこか遠い目をしながら。
😊
「違くて、これはただ俺が最近寝れてないだけで、そんなきりやんが思うほどヤバいやつではないんだ…. 」
👓
「いや寝れないって大分やばいだろっ!」
😊
「違くて!病院にも行ってみたし薬も処方された 。でもそれをこの間なくしちゃって、それで… 」
👓
「薬が飲めてないからってこと?」
😊
「まぁ、そういうこと。」
そう言われて、一つだけ思い当たることがあった。
数週間前、顔合わせの日に会議室に落ちていた半透明の小瓶。中は何となく錠剤らしいと思っていたから、誰かの何かしらの薬だと検討つけていた。
スマイルの話の内容的に嘘をついている可能性はない。というかスマイルが嘘なんてつくわけない!(過激派)
そう思って、俺は持ち歩いてるバッグのサイドポケットからその小瓶を取りだした。
👓
「もしかして、これ、スマイルの?」
😊
「えっ、なんでそれを…!」
👓
「数週間前の顔合わせの時に落ちてたんだ。」
😊
「ありがとう!助かる….!」
心底安堵したような顔でスマイルは口角を緩めた。
その表情に、この薬に頼らないといけないくらい追い詰められているのだと思った。
何が貴方を追い詰めてるの?
俺が見たあの光景は関係あるの?
貴方にとって苦しさを吐き出す場所はないの?
聞きたいことはいっぱいある。
俺は大きく深呼吸をした。
👓
「スマイル、」
😊
「どうした…?」
👓
「…何を悩んでるの?」
俺がそう口にするとスマイルは小さく肩を震わせ、緩まれた口角を引き戻し、俯いた。なんでもないと口を動かしてはいるものの、ほとんどそれは音になっていなくて、寧ろわなわなと震えているのが見て取れる。
👓
「その小瓶、拾って直ぐに渡そうと思ったんだよ。
そんで、その時見ちゃったんだ。 」
😊
「やめろ、言わなくていい。」
👓
「スマイルが、」
😊
「言うな、言うな!!!!」
👓
「スマイルが、他のメンバーからいじめられてる所を。 」
普段は爛々と輝くアメジストがいつの間にか涙に溺れていた。
端正な顔立ちは苦しそうに歪められて、耐えきれないとでも言うように嗚咽が零れた。
分かっている、踏み込まれたくないことくらい。
隠してきたんだろうな、とあの時感じた。
でも心配で仕方なくて。
俺にとってスマイルはそれくらい大切で。
少しでも俺がスマイルの居場所になりたくて。
こんな利己的な俺を許して欲しい。
👓
「ねぇスマイル、俺に話してよ。 事務所の先輩後輩だとしても、俺達友達じゃん… 」
都合のいい言葉を並べて囁かに微笑む。
騙しているみたいで心苦しいけれど、スマイルの居場所になりたいのは本当。スマイルを大切に思っているのも、生涯推し続けると決めたのもスマイルだけ。
だから俺の前くらい、その仮面を外してよ。
──他の奴らに目移りしないように。
To be continued.
コメント
12件
おぉぉぉぉぉぉい👓さん!拾ったものはすぐ返さないとだってェェェェェ! 😊さんと👓さんの関係が崩れないことを祈る今日この頃です
smさんが罪な男ってのは分かってたけど なんかもう凄いですね…?!(笑) krさんついに…次が楽しみです!!!✨
こっからのkrさんとsmさんの関係がすごく楽しみ🤭💭💕