テラーノベル
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らんは鏡の前でため息をついた。
男だったはずの自分の身体が、今や柔らかく、丸みを帯びた女性のものに変わっている。
不思議な夢から目覚めたら、全身が妙に重く、胸に違和感があった。確認すればするほど、どこからどう見ても“女”になっていた。
「……これ、絶対何かの呪いとかだろ…」
誰にも相談できず、頭を抱えた末に思い浮かんだのが、ひまなつだった。
何を考えてるかわからないような脱力系男子。けれど、意外と秘密は守るし、話しても茶化さず真面目に聞いてくれる——たぶん。
夕方、人気の少ない公園のベンチに腰掛けて、らんは変装用のパーカーのフードを深くかぶりながら待った。
やがて、片手に缶コーヒーを持ったひまなつがやって来た。
「……急に呼び出してごめん。ちょっと……相談があって」
「いいよ。なんか、声変じゃね?」
「……見ればわかる。あのな、引かないで聞けよ」
フードを下ろす。
ひまなつの目がすっと細まり、一瞬だけ驚いたように見開かれた。
「らん、……女になってる?」
「……見たまんまだ。なんか、気づいたらこうなってて……意味わかんねぇけど、どうしたらいいかわかんなくて」
ひまなつは無言で缶コーヒーをベンチに置き、らんの顔をじっと見つめた。
その視線が、いつもよりずっと鋭くて、らんは背筋をぞくりと震わせた。
「へぇ、なるほどね。……こんな姿、俺に見せるなんて、無防備すぎ」
「は? ちょ、おい、なんで近づいて——」
次の瞬間、手首を掴まれてベンチに押し倒されていた。
ひまなつの顔が間近に迫る。静かな目が、欲を孕んでいた。
「本当にらんかどうか、ちゃんと確かめないとね」
「お、おい! 冗談だよな? なつ、やめ——っ」
パーカーの中に滑り込む手。触れられるたびに、女の身体は勝手に反応してしまう。
「変わっちゃったなら、責任取ってもらわないと……らんが可愛すぎて、我慢できないかも」
「っ……っく、相談しに来ただけなのに……!」
「俺に相談なんて、しちゃったのが悪いんだよ」
くすりと笑ったひまなつの声が耳元で囁かれ、らんの抗議の声は甘く溶けていった。
コメント
2件
…最高すぎる!(lll-ω-)チーン