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――戦場。
白いガンダム《シラヌイ》は、
三方向から迫る影に囲まれていた。
黒紫の機体。
苔色の量産型、二機。
「……くそ……!」
朝倉恒一は、
必死に姿勢を立て直す。
白い刃を振るう。
一機を牽制。
だが——
反撃が、早い。
装甲に衝撃。
火花。
「——っ!」
(重い……!
動きが……)
思考が、
追いつかない。
——違う。
追いついていないのは、身体だ。
《警告
出力制限、上限付近》
赤い表示が、
モニターの隅で明滅する。
「……このままじゃ……!」
黒紫の機体が、
一歩、前に出る。
距離。
角度。
完全に——
狩りの位置。
(このままじゃ、
押し切られる……)
恒一の指が、
一つのスイッチにかかる。
——リミッター解除。
(やるしか……!)
その瞬間。
⸻
《またせた!》
割り込む通信。
聞き覚えのある声。
「……!」
《朝倉恒一、
そのまま持ちこたえろ!》
神崎艦長。
次の瞬間——
地面が、揺れた。
⸻
「……なに……?」
敵も、味方も、
一斉に動きを止める。
轟音。
地鳴り。
戦場そのものが、
悲鳴を上げる。
そして——
地下が、割れた。
⸻
――秘匿戦艦《アマノハシダテ》・艦橋――
「浮上距離、残り一〇〇!」
「五〇!」
「地殻耐圧、設計値以内!」
神崎は、
静かに前に出る。
「——全員、聞け」
「秘匿戦艦——」
「《アマノハシダテ》」
「——発進!」
⸻
爆音。
衝撃。
巨大な艦影が、
地上へ姿を現す。
粉塵。
崩れる地形。
戦場の“前提”が、
一瞬で書き換えられた。
⸻
「……戦艦……!?」
苔色の量産機が、
混乱する。
黒紫の機体——
レイブンは、即座に状況を理解した。
(来たか……
橋が)
⸻
「副砲、発射!」
次の瞬間。
閃光。
戦艦の副砲が、
戦場を横断する。
一機。
二機。
苔色のモビルスーツが、
回避もできず吹き飛ばされた。
爆炎。
衝撃波。
「——っ!」
シラヌイも、
衝撃に煽られる。
(なにが……
起きてる……!?)
戦艦の砲撃。
敵の混乱。
味方の支援火線。
戦場は、
一気にカオスへと傾いた。
⸻
《退艦回廊を作る!》
神崎の声。
《今だ、朝倉!》
恒一は、
スイッチから指を離す。
(……解除しなくていい……?)
《アマノハシダテ》の火線が、
前方を薙ぎ払う。
守られている。
明確に——
守られている。
「……了解!」
シラヌイが、
一気に加速する。
爆炎の中。
崩れる地形。
その“隙間”を縫うように——
白いガンダムは駆け抜けた。
⸻
レイブンは、
退いていく白い機体を見送った。
追わない。
——追えない。
「……今は、ここまでか」
通信が、
静かに入る。
《小隊、撤退》
「了解」
この小隊で、
彼は二番目。
だが、
確信だけは残った。
(あの白……
まだ、本気じゃない)
⸻
戦場に残ったのは、
地上に立つ巨大な戦艦《アマノハシダテ》と、
その影に退く白いガンダム。
そして——
戦いが、
“次の段階”へ入ったという予感だけだった。