テラーノベル
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時間は、
残酷なくらい静かに過ぎていった。
春が終わって。
窓の外の日差しが、
少しずつ夏に変わっていく。
その頃にはもう、
すちはほとんど起き上がれなくなっていた。
呼吸器が増える。
点滴の管も増える。
会話をするだけで、
息が切れる。
それでも。
こさめが来ると、
すちはちゃんと笑った。
🍵「……今日もかわいい」
もうほとんど息みたいな音なのに、
それだけは毎回言う。
こさめは泣きそうになりながら、
「うるさい……」って返す。
そのやり取りが、
二人の日常だった。
でも。
ある日。
廊下で、
医者に呼び止められた。
「……こさめさん」
その顔を見た瞬間、
全部分かってしまった。
聞きたくない。
でも逃げられない。
「……正直に言います」
低い声。
静かな口調。
「もう、長くありません」
世界の音が遠くなる。
こさめは何も言えなかった。
医者は続ける。
「数日か」
「もしかしたら、今夜急変してもおかしくない状態です」
数日。
その言葉が、
頭の中で何度も反響する。
あと少し。
本当に。
終わる。
🦈「……っ」
こさめは俯いた。
震える。
涙が落ちそうになる。
でも。
🦈「……ありがとうございます」
なんとかそれだけ言って、
病室へ戻った。
扉を開ける。
すちは眠っていた。
細い身体。
浅い呼吸。
前よりずっと、
消えてしまいそうだった。
こさめはゆっくり近づく。
ベッド横へ座る。
震える手で、
そっとすちの手を握った。
冷たい。
前よりずっと。
🦈「……すち」
声が震える。
返事はない。
それでも、
少しだけ指が動いた。
生きてる。
まだここにいる。
その事実だけで、
涙が溢れた。
こさめは俯いたまま、
すちの手へ額を押し当てる。
ポケットの中。
端末がある。
半年以上、
使わなかった。
約束したから。
覚えていたかったから。
でも。
🍵「……こさめちゃん」
小さな声。
驚いて顔を上げる。
すちが薄く目を開けていた。
ぼんやりした視線。
でも、
ちゃんとこさめを見て笑う。
🍵「……泣いてる?」
こさめは慌てて涙を拭く。
🦈「泣いてないし」
🍵「うそ」
弱々しく笑う。
その笑顔が、
今にも消えてしまいそうで。
こさめの胸が、
ぐしゃぐしゃに痛んだ。
コメント
1件
みぅ🤍🥀です …もう、本当に。 医者の「数日」っていう言葉が冷たく響いてくる場面、心臓がぎゅってなった。 すちくんが「泣いてる?」って聞くところ、もう何も言えなくて。 端末を使わなかった理由が「覚えていたかったから」って、それだけで泣きそうになったよ。 まだ終わらないでほしい…でも、すちくんの優しさが刺さる。 藍翠さん、この静かな切なさ、本当に胸に来ます。