限界メンバーに嫌われるバージョンです。
※これはend1の後半ではありません。
※限界だーいぶ酷いので、注意です。
※↑ガチで注意です。自分でも解釈違いだと思うほどメ ンバー最低です。そしてぐちさんがその分可哀想。
※今だかつてないくらいキャラ崩壊してます
※BADEND…?
※中途半端に終わります!!!!てか終わりとして成り立ってない…
※長い割にオチも何もない(起承転結でいったら起で終わる)
これの続きはガチで思いつかないんで、出ないと思ってもらった方が良いです🙇
没作品なのでなんでも許せる方だけ読んでくださると幸いです…
rdside
やっとぐちつぼが落ち着いてきた。
起きてからずっと泣きっぱなしだったぐちつぼの目はもうすでに赤く腫れてしまっていた。
あとで冷さなきゃな、と思ったが今はそんなことしている暇は無い、今は聞きたいことがいっぱいありすぎる
「…落ち着いてきた?」
そう尋ねるとコクリと小さく頷く。
さっきと比べたら落ち着いてはきているものの、体はまだ震えている。
「もし大丈夫だったらさ、なにがあったか話せる?」
また小さくコクリと頷くと、普段の彼からは考えられないほど小さなか細い声で、ポツリポツリと話し出した。
「…ぉれ、なんか知ら、ないうちにっ、炎上してて…」
「ちがう、って言っても、誰も信じてくれなくて、」
「…こわッかった、、」
「…ッ辛かったね、早く気づいてあげられなくてごめん」
「…っふ、…ぅ、…ッ…」
「大丈夫、ゆっくり落ち着いて」
小さく丸まった背中を擦りながら、出来るだけ声色を優しくして慰める。
わかっていた出来事ではあったが、ぐちつぼの声で聞くとより犯人が許せなくなる。
そういえば、限界メンバーとは話したのだろうか。
今ぐちつぼを1番心配しているのはメンバーのはずだ。
リーダーがデマで炎上させられてて、連絡も取れないとなるとめちゃくちゃ心配だろう。
なのに何故彼らは俺より先に家に居ないのだろう。
普通は、連絡が取れないとなると家に尋ねるのではないか。
もしかしたらさっきまで家に居たのだろうか。
でも、この状態のぐちつぼを一人で放っておくわけが無い。
じゃあなんで彼らは居ないのか。
…もしかして連絡とってない…?
「ぐちつぼ、限界メンバーには連絡とった?」
そう尋ねた瞬間、一瞬で空気が凍てついた。
察しの悪い俺でも分かる程に。
ぐちつぼの体はカタカタと物凄く震えだし、さっきよりも大粒の涙を零し出した。
俺が家に入ってきた時のように、何かにものすごく怯えたような、絶望したような目は、恐ろしく思えるほどだった。
ヒュゥヒュゥと息を吸えてないような呼吸音さえ聞こえてくる。
「…ひゅっ、はっ、はぁ、ぁ…ぅ、はぁ…」
「はっ、…ひゅ、ぅ、、やっ…ッ」
「ぐちつぼ!?、落ち着いて、」
「ゆっくり深呼吸、俺に合わせてすーはーすーはー」
「ひ…ぅ、す、ッぅ、はぁ、っ、ひゅ、…は、ぁ」
「そう、上手上手、もうちょっと落ち着いて」
「ッ…すっ、はぁ、ッ…すぅ、は、ぁッ」
呼吸と同時に、体の震えも少し落ち着いてきた。
しかし、綺麗な紅色の瞳から溢れ出す大粒の涙は、いまだ、留まることを知らなかった。
『限界』という単語を出しただけで、こんな酷い反応を見せるのを見たら、限界メンバーと何かがあったということは明白だった。
でも、こんな状況のぐちつぼに無理やり聞き出したくはない。
今は弱ったぐちつぼを出来るだけ慰めることしか俺はできなかった。
「大丈夫、俺はずっとぐちつぼの味方だから」
我ながら、自分の言葉は薄っぺらいものだと思う。
この状態のぐちつぼが大丈夫な訳が無い。
それでも俺のかけられる言葉はそれしか思いつかなかった。
結局俺は無力なんだ。
ぐちつぼをこの業界に引き込んだのも俺なのに。
そんなことを考えているとぐちつぼの涙もだんだん治まってきていた。
すると、物凄くか細く、耳のいい人でないと聞こえないほどの声量でぐちつぼが声を発した。
「…は、なす、…」
ずっとゆらゆらと不安定に揺れていた瞳が、覚悟を決めたように、それでも不安そうに俺を捉えてきた。
「ホントに?…俺はめっちゃ嬉しいけど、無理しなくていいんだからね?」
「全然気持ちが落ち着いてからでいいよ?、ホントに大丈夫?」
俺の問いに対してぐちつぼは、小さく頷いた。
まさかぐちつぼの方から話してくれるとは思っていなかった。
でも、いざ話出そうとすると、言葉が出てこないのか、はたまた声に出したくないほどのことなのか、ぐちつぼの口は、はくはくと開いては閉じてを繰り返してる。
収まっていた涙や体の震えもだんだんと戻ってきてしまっている。
「ゆっくりでいいよ、落ち着いて」
そう伝えて背中を撫でると声をつまらせながらも話し出してくれた。
「…えんじょぅ、して、べんめいツイートしたあと」
「もう、こわくて、きもちわるかった、から、」
「はやめに、ねて、…つぎのひ、おきたらッ、」
「ピンポンきて、見たら、…メンバー、だったから」
「…ちょっと、はなしたい、とおもって」
「でてみたら、みんなおこっててッ、」
「…っふ、…ぅ、だれも、おれを、しんよう、してくれなくてッ、」
「ぼうっげんとか、はかれて、なぐられて、ッ…」
「おまえ、についていったのが、ばかだった、とか、さいてい、とかいわれて、」
「おれっ、こわくてないちゃって、それでも、ひがいしゃぶるの、きもちわるいって、いわれてッ」
「あやまれ、っていわれて、おれはやってない、っていったら、また、なぐられて、」
「…ッくるし、かった…」
「…っ、」
想像を絶するほどの出来事だった。
苦しそうな表情をして、泣きじゃくりながら、息がつまりながら話していたこいつを見て、俺まで涙が滲み出てきた。
こいつがどんだけ苦しかったか。辛かったか。
俺には計り知れないほどだった。
「…ぉれ、なにしたらいいかわかんないッ、…」
「…もぅ、死にたいッ、」
その言葉を聞いた瞬間時が止まったようだった。
今のぐちつぼからの死にたいは本気で言ってることが嫌でも伝わってくる。
でも今の俺に慰めてあげる以外のできることはなかった。
「うぅ、ふっ….ッ、」
ぐちつぼは変わらずにずっと泣いている。
俺はぐちつぼが限界を作った時のことを思い出す。
こいつは、今じゃ沢山の人とコラボしているが、前はそんなんじゃなかった。何故か昔から俺の事を慕ってくれていたから、俺とのコラボはあったが、それ以外は、あまり人とのコラボを好まないイメージだった。
そんなぐちつぼがメンバーを連れて俺のところに来て、「俺こいつらとグループみたいの作る」と言ったときは驚いて仕方がなかった。
俺はあの時のぐちつぼの顔が忘れられない。
今までにも見たことがあるか、というほどの満面の笑みで、声にさえ嬉しさが乗っていた。
なのに今は、真逆の表情をしている。泣きじゃくりながら、すごく絶望したような顔して俺に抱きついている。
これも全部あいつらのせいだ。
グループなんて組ませない方が良かったのかもしれない。
「…大丈夫、ぐちつぼの味方はいっぱいいるから」
慰めながらそう伝えると、俺を抱き締めてくる力が強まった。離さないと言わんばかりに。
そこからは小一時間程ぐちつぼのズタズタになった心を癒すために慰め続けた。
ぐちつぼがまた少し落ち着いた頃、さっき殴られた、と言ってたことを思い出した。
一つ一つのことが大きすぎて忘れかけていた。
あぁ、家に入った時に見た、このぐちつぼの頬の痣は、限界メンバーにつけられたものだったのか。
そう考えるといっそう胸が痛み付けられた。
もしかしたら他にも痣があるのではないか。
そう思い、傷の治療が最優先かもしれないということに気がついた。
「ぐちつぼ、この家って救急セットとかってある?」
「…たぶん、ぁる、とおもう、」
ぐちつぼに何処にあるのかを聞いて、救急セットを取り出す。
幸い、この部屋の中の棚にあったため、ぐちつぼからは離れずに済んだ。
「ごめん、ちょっと服まくるよ?」
そう断りを入れてから、服をまくると痛々しい痣が広がっていた。
それは予想外の酷さだった。
1発2発ではこんなにならないだろう。
ぐちつぼは心配かけないように大分端折って説明してたようだ。
怪我についてとかよく分からないから、少しスマホで調べてから応急処置を行う。
少し顔を顰めた場面もあったが、終わった今は少し楽になったかのように見える。
これで一旦一安心。
…といきたいところだが、まだやることは山積みだった。
「ぐちつぼはさ、…まだメンバーの誤解ときたいと思う?」
そう問いかけると、少し暗い顔をして俯いてしまった。
でも、少し考えているような素振りがあったため、話しかけずにぐちつぼの返答をじっくり待つ。
限界としてまだやっていきたいか、俺はそういう意味も兼ねてこの質問をした。
俺からしたら、ぐちつぼのことを信用せずに裏切るような奴らとはもう二度と会わせたくないし、話させたくもない。
でも、ぐちつぼが誤解だけは解きたいとかまだ限界として活動していきたいとか言うんならまた話は別だ。
少し考え込んでまた泣きそうになっているぐちつぼをもう一度抱きしめ、ゆっくりでいいからね、と伝える。
「…ぅ、ッ、…ぉれはっ…しん、じてほしぃっ…」
まぁそうなるか。
ぐちつぼらしいといえばらしいかもしれない。
裏切られても尚、メンバー想いなのは変わらずで本当に良い奴だ。
そんな一途なぐちつぼを裏切る真似をしたメンバーは本当に許せない。
本当なら今から殴り込みに行ってぐちつぼが味わった痛みをあいつらにも味あわせたいところだが、そんな事をしてもぐちつぼは喜ばない。
今はぐちつぼの意思を尊重して、ぐちつぼがやっていないということを証明しなければならない。
でもどうすればいいのか。
実際に会うのは、ぐちつぼの精神状態的に無理があるだろうけど。
まぁ1番丸いのは通話か。
ぐちつぼの背中をポンポンと優しく叩き、落ち着かせる。
「…じゃあ、メンバーと通話する?」
「もちろん俺も一緒にいるし、何か言ってくるようだったら俺が何とかするから」
「みんなは、こわい…」
いつの間にか涙も止まり、しっかりとした言葉を発せるようになったようで、俺の事を強く抱きしめながらそう言った。
確かにメンバー全員を呼ぶとなると1対5の体制を作りかねない。
そうなってしまったら通話をする意味もない。
「そっか、じゃあ誰か1人だけ呼んでやってみる?」
「ぅん」
そこで、全員ではなく誰か1人だけ呼び出すことにした。
でも誰か1人といったら誰がいいのだろう。
焼きパンなんかぐちつぼを裏切る気がしないし、未だに裏切ったことが信じられない。
たらちゃんもそうだ。
ずっとぐちさんぐちさんって、なんだかんだぐちつぼのことが大好きだったのに。
ぐちつぼが限界メンバーの中で1番仲良かったのはたらちゃんだろうし、たらちゃんがいいかもしれない。
でも逆に、もし信じて貰えなかった時の精神的なショックが強いのもたらちゃんかもしれない。
そうなると、たらちゃんではない方がいい気もする。
…結局色々考えた結果、1番メンバーの中でまともそうなこんそめにすることにした。
ぐちつぼにも意見を聞くが誰でもいいとの事だったのでこんそめにした。
それと、早く信じてほしいとの事だった為、明日には通話をする事にした。
gtside
「ぐちつぼはさ、…まだメンバーの誤解ときたいと思う?」
らっだぁにそう問われて、自分の考えないようにしていたことが頭に浮かび出てくる。
“もしこのままずっと信じてくれなかったら”
メンバーが家に来て、殴ってきた時、俺は何度も説得しようとした。
俺は本当にやってないって、信じてくれって。
でも、そんなことは耳に入ってないと言わんばかりに誰も俺の事を信じてくれる人はいなかった。
それでも俺はメンバーを信じたかった。
あいつらは今、あの投稿主に騙されているだけだ。
その誤解さえ解ければすぐに前みたいに、一緒に配信して、一緒にふざけ合うことが出来るんだって、そう信じている。
でももしその誤解が解けなければ。
俺はあいつらの中で最低な人として終わることになる。
そうは絶対なりたくない。
でも怖い。
もう信じない方が楽なんじゃないかと思ってしまう程に辛い。
でも、でも俺は
「…ぅ、ッ、…ぉれはっ…しん、じてほしぃっ…」
俺はそれでもあいつらのことが大好きだし、前のように戻りたい。
でも、流石に会うのは怖かった。
また暴力を振るわれるかもしれないというのもあったけど、1番はもう一生メンバーのあのゴミを見るような目を見たくなかった。
俺のその思いを察したのか、らっだぁが通話をしないかと提案してくれた。
確かに通話なら顔も見えないし、実際に会うよりは恐怖を感じなくていい。
それでも流石にメンバー全員で詰め寄られるのは怖いため、全員じゃない方がいいと伝えると、誰がいいかと聞いてきた。
正直、もう誰がいいかなんて分からない。
1人残さず俺をゴミを見るような目で見てきた。
だからもう誰を信じていいかなんてわかんない。
結局らっだぁが考え込んだ結果こんそめとなり、明日通話をすることになった。
通話でも怖いものは怖いが、らっだぁが居てくれるから大丈夫。
そう自分のメンタルを保っていると、らっだぁが俺を抱き抱えたまま寝っ転がった。
「今日はもう寝よ、ぐちつぼも疲れただろうし」
当たり前のように、俺から離れず、俺が怖がらないようにしてくれているらっだぁに喜びを覚え、ひたすら離れないようにと強く抱き締める。
rdside
ぐちつぼを寝かしつけた後、俺はこんそめに連絡を入れることにした。
起きてる?とメッセージを入れると、起きてます!と一瞬で返ってきたため、discordで通話を掛けた。
「あ、もしもしこんそめ?」
『どうしましたか?』
「ぐちつぼの話なんだけど、」
『あぁ、…はい』
ぐちつぼという名前を出しただけで明らかに声のトーンが下がり、興味を示さなくなった。
「明日、ぐちつぼと通話で話してほしいんだけど」
『え?通話して欲しい?』
「いい?」
『嫌ですよ、だってあいつは俺らを裏切ったんですよ?』
「それが勘違いだって、誤解をとくために通話がしたい」
『勘違い?てかなんでらっでぃがそんなこと知ってるの?』
「俺はぐちつぼのことを信じてるから」
『…ッ、証拠見てないんですか?』
「見たけどね」
『じゃあなんでッ、』
「普通に考えてぐちつぼがそんな事する訳ないし」
『俺らもそう思ってましたよッ!でもあいつは裏切って…』
「はぁ、…まあいいけど」
「これ以上は明日ぐちつぼと通話で話してよ」
『一対一で?』
「いや、俺も聞いとく、話しはしないけど」
『まぁ、それなら…』
「ん、じゃあまた明日」
こんそめはまだ何か言いたげではあったが、無理やり通話を切って、ぐちつぼが寝ている横に入り込んだ。
近くで見てみると思っていたよりも童顔で寝顔が可愛らしかった。
頭を撫でると、無意識なのか頭を手に擦りつけてくるような動きをし、少し嬉しそうな表情になった。
もしかしたら悪夢でも見て起きてしまうかとも思っていたが、安らかに眠るぐちつぼを見て安心する。
今日は色々なことが起きすぎて、流石に俺でも疲れていた。
まぁ、明日も大変な一日になりそうだから寝よう。
そうして、何時もより早めに寝る事にした。
gtside
午前6時頃。
しっかり目が覚めてしまった。
らっだぁは隣でまだ寝ている。
ベッドに入ったのは3時頃だったから、まだ3時間程しか寝ていない。
疲れたから寝たいという意思はあるのだが、頭が冴えてきてしまった。
すると途端に寂しくなってきてしまって、隣にいるらっだぁを抱きしめた。
相変わらずらっだぁは寝ているが、そうしているだけですごく心が休まった。
大丈夫、俺にはらっだぁがいるから。
らっだぁが信じてくれてるから大丈夫。
そう自分に強く言い聞かせ、より強く抱きしめるとらっだぁが少し身じろいで目を開いてしまった。
「…ッごめ、起こしちゃって…」
「ん、もっとこっち来な?」
今までは少し控えめに、起こさないようにと腕だけで抱き着いていたけど、今度はらっだぁが大きく腕を広げて、胸へと抱き寄せてくれた。
眠そうな目と声に申し訳なくなるが、そんなことを気にしてられないほど嬉しく、気持ちが落ち着いた。
「目覚めちゃったの?」
「…ぅん」
「どうする?もう起きたい?」
「ぃや、まだ、寝たい…」
「じゃあ、もっかい一緒に寝よ」
らっだぁのその落ち着いた声に少し眠くなってくる。
そして、背中に回された手が俺の背中をポンポンと優しく叩いてくる。
子供を寝かせつける母親のように、その手からは愛情が伝わってきた。
あんなに目が冴えてしまっていたのに、直ぐに眠くなってきた。
「ん、ぐちつぼおやすみ」
そんな声が聞こえた瞬間、俺はもう一度意識を手放した。
rdside
次の日の朝。
朝というか昼。
やっぱり俺もぐちつぼも、昨日の事ですごく疲れていたようだ。
もう12時だが、目が覚めたらまだぐちつぼは隣で寝ていた。
起き上がると自分のお腹が凄く減っていることに気がついた。
そういえば昨日は、夜ご飯を食べ損ねた。
否、そんなことを考えている余裕は無かった。
でもよく考えたら、ぐちつぼは今までもずっとご飯を食べていないだろうからしっかりと食べさせなければいけない。
「でも俺、料理苦手なんだよなぁ」
そもそもこの家に料理をできるような材料なんてものが存在しない。
「やっぱウーバーか」
もうそれ以外の選択肢が見つからない。
ぐちつぼのために料理をしてあげたい気持ちはあるのだが、寝ているぐちつぼを置いて材料を買いに、という訳にも行かないだろう。
そう考えたらやっぱりウーバーが最適解だ。
ウーバーのサイトを開き、いい感じのごはんがないか探してみる。
注文する店を決めたら、2人分のご飯を頼み、スマホを閉じる。
すると、のそのそとぐちつぼも起き上がってきた。
「おはよう、ちゃんと寝れた?」
「ぉはよ…久しぶりに寝れたわ」
「良かった、もうすぐご飯届くからもうちょっと待ってて」
「食べれなそうなら全然残していいから、ちょっとでも食べな?」
「わかった、」
「ん、いい子」
昨日の夜のように頭を撫でると、ぐちつぼは嬉しそうな表情をして少し笑った。
俺はそれが嬉しくて強くぐちつぼを抱き寄せると、バランスを崩したぐちつぼが倒れ込んでくる。
「もう絶対離さないから」
物理的な意味ではなく、今回起こったことに対して、俺に捨てられることを恐れていたぐちつぼに対してそう言うと、ぐちつぼにもちゃんと伝わったのか、
「…絶対、見捨てないでね」
と、小さい声が聞こえてきた。
「見捨てるわけない、俺はずっと味方だから」
自己肯定感の低いぐちつぼに何度も言い聞かせるように言う。
昨日よりも精神が安定してきたぐちつぼに安心しながら会話をしているとチャイムがなった。
ご飯が届いたようだ。
俺が取りに行こうとすると、ぐちつぼも手を握って着いてきたため、一緒に出て、リビングへと運んできた。
「よし、じゃあぐちつぼ食べよ」
いただきます、と2人で言い食べ進める。
ぐちつぼも少しづつではあるが、しっかりと食べていた。
「美味しい?」
「うまい」
短い会話ではあるが、ちょっとずつ前のように戻ってきたように思えて、嬉しくなる。
量が少なめのを選んだからか、ぐちつぼもしっかりと完食してくれた。
ずっとこんな時間が続けばいいのに。
そう願うが、そういう訳にも行かない。
ぐちつぼがメンバーに信じて欲しいと言うならば、しっかり誤解をとかなければ。
「ぐちつぼ、ちょっと休憩したら通話する?それとももっと後にする?」
「休憩の後で、いいよ」
「わかった、じゃあちょっと休憩しよっか」
それからはずっと他愛ない会話をしていた。
このゲームが面白かった、だとか、この前こういうことがあっただとか。
ぐちつぼからも話してくれたし、段々と笑顔も増えてきた。
会話が少し落ち着いた頃にはもう1時間も経過していた。
「ん、そろそろ通話する?」
そう尋ねると覚悟を決めたような表情で、コクリと頷いた。
パソコンを起動し、Discordに入り通話の準備をする。
ぐちつぼの方に目をやると、怯えたような瞳でこっちを見ていた。
「ぐちつぼ」
ぐちつぼの方へ大きく手を広げると、ポスッと腕に収まってきた。
優しく抱き寄せ、背中を撫でてやると、泣き出してしまったようだ。
「、ぉれ、…もぅきらわれてるっ、から」
「…つぅわしてもッ、むりかも、」
「…でもっ、らっだぁは、ずっと…ぃっしょ?」
普段のあの語彙力からは考えられないほど、言葉足らずで、幼児が喋っているようだった。
でも、大事な部分はちゃんと伝わってきた。
「うん、俺はずっとぐちつぼの味方」
「絶対離れないから大丈夫だよ」
ぐちつぼの問いに対し、そう返答すると、嬉しそうに涙を拭った。
少し経てば完全に落ち着いたようで、手を握って来た。
「よし、じゃあ通話するか」
こっち通話の準備はもう出来ているため、こんそめに連絡を入れ、通話に入ってくるのを待つ。
すると、数分後にこんそめが通話に入ってきた。
「….こ、んそめ…?」
勇気を出して震えた声でぐちつぼが話しかけた。
…しかし、返事はなかった。
か細い声ではあったが決して聞こえない声ではなかったはずだ。
そのせいで、ぐちつぼが俯いてしまった。
「おい、こんそめ?」
今度は俺が話しかけた。
折角ぐちつぼが勇気を出したのにさすがに返事しないのはないだろ。
すると、ずっと黙っていたこんそめが話し出した。
「…らっでぃ、ごめん」
「やっぱ、いくららっでぃの頼みでもこいつと話したくないわ」
「こいつはもう俺らを裏切ったから」
「声も聞きたくない」
そう言いきった。こいつになら話が伝わると思っていたのに。こんな様子じゃ説得するまでもない。
「….ッはぁ、もういいよ」
そう俺が言うとピロンという音を立ててこんそめがいなくなった。
「ッ……..ぅ….ッふ…」
おれがぐちつぼを抱き締めると胸に顔を埋めてきた。
「大丈夫、いっぱい泣いていいよ」
「ごめッ….」
「いいんだよ、大丈夫、ぐちつぼが謝る必要はないから」
ぐちつぼの背中を撫で、落ち着かせた。
なんで通話なんてさせたんだろう。
あんな奴らのことなんか放っといていいのに。
そんな後悔ももう遅い。
ぐちつぼの淡い期待ももう砕かれ、あいつらを説得するのはもう無理だと嫌でも分かってしまった。
そうして数時間が経った。
それでも尚、ぐちつぼは泣いている。
流石に目が腫れる。
そう判断し、ぐちつぼが不安にならないように抱っこして、保冷剤を取りに向かった。
保冷剤をガーゼに包み、ぐちつぼの目に当ててあげる。
すぐにガーゼは涙でびしょびしょになったが、確実に涙は治まってきていた。
すると、ポッケットに入っていたスマホから着信音がなる。
取り出してみると、『原人』の文字。
なんの用だ?と思いつつも、ぐちつぼに許可を取り、電話に出る。
「もしもし?」
『あぁ、もしもしらっだぁ?』
「うん、で?何の用?」
『今どこ居んの?』
「質問を質問で返さないでくれる?要件は?」
『はぁ、まぁいいや、こんそめに話聞いたんだよ』
『ぐちつぼがらっだぁに迷惑かけてるって』
「何のこと?そんなことないけど」
『わかるよ、現実を受け入れられないのは』
『でもあいつは、人の事殴るような奴なんだよ』
『証拠もある。だからあんな奴のこと放っとけよ』
その言葉を聞いた瞬間、俺はツーツーと電話を切った。
あんなやつの話を聞くんじゃなかった。
もう、メンバーからの電話は出ないことにした。
それより、ぐちつぼの方に戻らないと、そう思い、急いでぐちつぼの方へと向かった。
もう涙が完全に治まってきたようで、不安げな瞳でこちらを見ている。
今すぐにでも消えてしまいそうな儚い雰囲気だった。
そんなぐちつぼを壊さないように優しく優しく抱きしめる。
「俺はずっと味方だから」
「あんな奴らのこと忘れて俺と楽しく過ごそう?」
ぐちつぼの紅い瞳をしっかりと捉えてそう問いかけると、未だに不安げに揺れていた瞳に水がはっていく。
「…ら、っだぁは、ぉれのことっうらぎらない?」
震えたその声は親に捨てられた子供のようだった。
到底ぐちつぼから出た声だとは思えないほど弱々しかった。
「俺は絶対に裏切らない、約束できる」
俺がそう応えると、ぐちつぼの冷たい手が控えめに俺の背中に回された。
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