第13話「努力は相応の実を成して」
Kr視点
いよいよ迎えたSTARs☆芸能事務所主催の合同ライブ当日。この日の為に借りられた会場はとてつもなく大きく、新人が立つにはあまりにもプレッシャーのかかる場所だ。
そしてこのライブのメインは勿論事務所の顔でもあるBlack-X。彼らを見る為にチケットの抽選倍率は上がり、その後の一般販売も即完売。なんなら控え室の窓から見える待機中の人々のほとんどが彼らのグッズを身に着けている。
当たり前だが、こんな大きなライブとなればぱっと出てきた新人より普段もっと倍率の高いトップアイドルを見たいのだろう。きっと俺たちなんて眼中にない。
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「何暗い顔してんだよ!本番だからって緊張してんの?」
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「いや、そういう訳じゃないけど。」
🐼
「じゃあもっと喜べって!こんな大きなステージで出来ることなんて早々ないんだからさ!」
そういってにかっと笑うNakamu。その笑顔が逆に最近下がり気味だった俺には眩しく感じた。
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(やっぱ、こういう奴がアイドルに向いてるんだろうな…)
はしゃぐNakamuを他所にそんなことを考える。
脳裏をかすめたのは名前とはまるで正反対に無表情な彼、厳密に言えば表に出てこないだけで感情が豊かな彼。
👓
(そういやスマイルはNakamuとは違うタイプのアイドルだな…)
絶対本番前に考えることではないけど、どうしても頭の中がスマイルでいっぱいになる。それも本番前だけじゃない、あの日きんときと話してからずっとこうだ。
──あの人は俺の女神様。
それは俺だって同じ。スマイルは俺にとっての女神様で、唯一の推しで、俺が世界で1番愛を捧げている人だ。同担拒否ってわけじゃないけど、あんな風に釘を刺されるのも気に食わないし、そんなことを考えているきんときがスマイルの隣に堂々と並べていることが悔しくて仕方ない。
俺だって、スマイルの隣に並びたいんだ。
🦈
「怖い顔すんなって。ほら、そろそろ本番前の振り確認するぞ。」
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「…あぁ。」
いまいち上手く集中できないまま俺はシャークんに続いて控え室を後にする。俺はこのままなにも問題が起きないことをただただ祈るばかりだった。
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──次は期待の新星White Tailsによるステージです!
司会による登場の呼び声がかかる。それと同時にリーダーであるNakamuが飛び出していき、Broooock、シャークん、俺が続いていく。各々の位置につき、Nakamuによる挨拶を済ませればいよいよステージが始まる。
大丈夫、大丈夫だきっと。沢山練習したんだ。個人練習期間にスマイルに頼んで何度も振りを見てもらったし、その後も鏡を見ながら何度も反復して、このステージにふさわしいレベルに仕上げてきた。
👓
(きっと上手くいくはず…)
一度照明が消え、ステージが真っ暗な闇に包まれる。数秒後には曲が始まり俺達はタイミングを揃えて踊りだす。
スマイルに言われた通り指先まで意識して伸ばし、動きに緩急を持たせる。メリハリをつけた動きを意識しつつ発声する声一つ一つに張りを持たせる。大声を出せばいいってわけじゃないから7、8割を目安に声を張り、Nakamuの歌とは被せない様に注意を払って歌う。
スマイルと積み上げたものが歓声となって昇華されていく。ファンの笑顔が作られていく。これがアイドルなんだ、これが喜ばせるってことなんだ。気分が高揚し、じわじわと口角が上がっていく。楽しくてしょうがない。
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「やんさん、今日めっちゃノリノリじゃん!」コソッ
フォーメーションチェンジの間にBroooockがウィンクしながらコソッと耳打ちする。1番近くにいる仲間から見ても俺はいつもより調子がいいらしい。自分よりも実力のあるBroooockが言ってくれたという事実に嬉しくなった。
そのまま曲が流れ、俺達のステージは終盤へ差し掛かった。後は最後のフォーメーションチェンジをしてラスサビを通すだけ。
問題はそこだった。
👓
「…..ッ!!」
最後のターンをする為に右足を軸にした瞬間、右足がつるりと滑った。なんとか倒れずに次のステップを踏み出したが、右足首の角度が異常に曲がってしまったせいかズキッと痛み出す。しかしそれでもファンに悟らせる訳にはいかないので、なんとか笑顔を張りつけて練習と同じように踊っていく。
最後の決めポーズも難なく合わせ、大きな歓声と拍手が沸き上がった。温かい空間に包まれる中、俺たちはステージから降りていく。
最後のターンの位置を横目で確認すると、そこにはここまでのステージの努力の結晶である汗が数滴ほど滴り落ちていた。
To be continued.
コメント
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うおあっっっってぃまじですかぁ、(??) やんさんちょっとスマさんに看病してもらいまshow((( とりあえず栄養補給ありがとうございます、、、((((
いギャッ!!やんさんが怪我したはずなのにこっちは心が痛いぞぉ~...大丈夫?!なわけないのはわかるっ!あぁぁぁスマさん!出番やぁ!ここで出なくて男とは呼べぬぞよぉお! まぁ?すいませんけどやんさんが傷んでるときにあたしは楽しみにニヤニヤしておきます( -`ω-)bモチロンッ
👓さん大丈夫か!?いやいや😊さんもす............っごく大丈夫だけどまずは自分の事を大事にしてくれぇぇぇぇ😭そして👓さん体幹つぇー...僕は氷の上以外は滑って仕方がありません...雪と友達... とりあえず転ばない練習してきます…