テラーノベル
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未来の平穏な光景の裏側で、現代の物語はもう一つの、逃れられない終焉を迎えていた。剛田武――かつてのガキ大将としての威圧感は、跡形もなく消え失せていた。彼はドラえもんが放った精神の牢獄に囚われたまま、現実世界でも「もう一人の少年」によって完全に管理されていた。出木杉英才である。
出木杉は、その明晰すぎる頭脳でジャイアンの犯した罪のすべてを把握していた。しかし、彼はそれを警察に突き出すような「正義」は選ばなかった。彼は自ら開発した超小型の次元隔離シェルターの中にジャイアンを拉致し、世間からは「行方不明」として処理させた。
「剛田くん、君のしたことは、論理的に言っても万死に値する。でも、死なせるのは効率的じゃない」
冷徹な観察者の瞳をした出木杉は、未来の禁じられた生物工学を独学で再現していた。シェルターの中に放たれたのは、意志を持たず、ただ「対象を侵食し、快楽と苦痛を同時に与え続ける」ことだけを目的に設計された触手型の人工生命体だった。
ジャイアンの巨体は、うごめく無数の触手によって壁に固定され、逃げることさえ許されない。触手は彼の皮膚を割り、粘膜を侵し、神経系に直接リンクして、脳が焼き切れる寸前の感覚を24時間休むことなく流し込み続けた。
そして、出木杉自身もまた、その凄惨な光景の一部となった。彼はのび太が味わった屈辱を物理的に、かつ冷酷にジャイアンへと「返済」させた。ジャイアンがかつて弱者に振るった暴力的な支配は、出木杉という圧倒的な「知の暴力」によって、より陰惨で徹底的な蹂躙へと塗り替えられていった。
「痛いかい? 苦しいかい? でも、君がのび太くんに教えた『力こそがすべて』というルールに従えば、今の僕は君の神様だ」
出木杉の冷ややかな声が、触手の蠢く湿った音の中に響く。ジャイアンの瞳からは意志の光が消え、ただ生理的な涙と唾液が溢れ続ける。彼はもはや人間としての言葉を失い、ただ与えられる刺激に反応するだけの「肉の塊」へと成り下がっていた。
ドラえもんたちが未来で築き上げた「光の物語」の対極で、このシェルターの中だけは、永遠に明けることのない暗黒の円環が続いていた。出木杉は、ジャイアンが死ぬことさえ許さない。高度な栄養補給装置と再生医療を組み合わせ、彼がこの地獄を数十年、あるいは数百年と味わい続けられるよう、精密なメンテナンスを繰り返していた。
のび太たちが笑い、新しい命を祝うその瞬間も、この世界の片隅では、かつての加害者が声にならない悲鳴を上げながら、異形の生物と冷酷な天才の手によって、終わりなき辱めを受け続けている。
光が強ければ強いほど、その影に潜む罰もまた、深く、逃れられないものとなっていた。
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