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ピピピッピピピッ
元貴「ん、」
不快なアラーム音を消して 重たい身体を起こす。時刻は早朝の5時半、また憂鬱な一日が始まる。
元貴「はぁ…」
カーテンの隙間から覗く日差しが眩しかった。
窓を開けてベランダに出ると、冷たく乾いた風が全身に当たる。
外の空気を吸って、部屋に戻る。
本当はもうちょっと長居したかったけど、
身体が勝手に柵を乗り越えてしまいそうで怖かった。
元貴「ばかだな、、」
シーンとした部屋に 低く気だるそうな声が響く。膝を抱えてしばらく瞑想した後、 俺はリビングへ向かった。
ワンワンッ!
お腹を空かした愛犬が俺の足に飛びついてきた。
元貴「はい、いっぱいお食べ。」
顔を洗いに洗面所へ行くと、目がドス黒く濁ってて、クマが酷く、疲労しきった男が鏡に映し出された。
元貴「はっ、酷い顔。」
思わず乾いた笑いが出た。確かに周りの言う通り、死んだ魚のよう。
ピンポーン
廊下にキーンとしたチャイムが鳴り響く。
こんな早朝に誰だ?
元貴「ぁ、はーい…、」
ガチャ
若井「あっ、元貴、おはよう。」
元貴「若井、どうしたの?朝早くから。」
若井「いや、これと言った理由は無いんだけど、、なんか心配になっちゃって。」
誰かにそばに居て欲しい時、タイミング良く来てくれる若井にいつも救われてる。
元貴「そっか、、ありがとう。」
若井「当たり前でしょ、友達だもん。 」
“友達”という肩書きがいつも俺を苦しめる。
心に何かにつっかえてる様な。ドロドロとした感情が俺を支配する。
ピコン
元貴「あ、マネージャーからだ、」
若井「あぁ、もう仕事行かなきゃだね。」
元貴「やだなぁ、」
若井「なんでよ、笑」
今日も大量にやる事がある。
でも俺だって一人の人間だ、全て投げ出して逃げたい時だってある。このまま、若井と一緒に遠くに逃げれたら良いのに。
若井「もとき、」
若井は俺の手を握って優しく名前を呼んだ。
若井「一緒に行こ。」
なんか、昔に戻ったみたい。中学生の頃もこうして「一緒に行こう。」って誘ってくれたな。
元貴「うん、」
好きって言ったら若井は離れて行っちゃうのかな。俺の事嫌いになるのかな。15年と築き上げてきたこの友情は一瞬にして崩れてしまうのかな。
若井「あ、雨降ってきちゃった…」
まるで俺の感情に左右されてる様にぽつぽつと小雨が降ってきた。
元貴「傘1本しか無いけど、一緒でも良ければ使う、?」
若井「ありがとう、俺が持つよ。」
乱雑に掛けられたダウンジャケットを羽織り若井と外に出た。
元貴「相合傘だね。」
若井「ははっそうだね、笑」
地面に当たる雨の音、雨を弾いて散らばるように濡れた傘。俺と若井の足音。
しっとりしてて、静かで。じめじめしてるけど若井と居るおかげか、少々心地良かった。
続きます。
コメント
8件
こういうの大好き…続きが楽しみです!神ですね☆*:.(≧▽≦)
こう、、切ない片思い小説❓❓がもう好物なのありがとう😆😆 がんばれもともと
んんんん、神作品ができる予感しかしないですね...続き待ってます...✨