テラーノベル
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翌日、午後4時30分。
私は屋上のドアを開けた。
そこにいたのは――
「……湊?」
昨日、私を振った男。
神崎湊が、フェンスにもたれて立っていた。
「遅い」
「なんであんたがいるの!?」
「お前に話があるから」
「私にはない!」
帰ろうとした、その瞬間。
「待って。昨日のDM、見ただろ」
……は?
「なんで知ってんの?」
湊の顔から、笑みが消えた。
「やっぱり、あいつか」
「誰のこと!?」
そのとき。
ガチャッ。
屋上のドアが開いた。
「ごめん、待たせた?」
振り返った私の目に映ったのは、学校一の人気者。
白石律(しらいし りつ)。
女子全員が憧れる、優しくて完璧な先輩だった。
なのに。
先輩は私を見るなり、こう言った。
「久しぶり、俺の彼女」
「…………は?」
いやいやいやいや。
彼女?
誰が?
私が!?
「ちょっと待って! 私たち、初対面ですよね!?」
「え、ひどいな」
先輩は悲しそうに笑った。
「俺たち、付き合ってたじゃん」
「付き合ってません!!」
すると、湊が突然、先輩の胸ぐらをつかんだ。
「お前、まだこいつに近づくのかよ」
先輩の笑顔が消えた。
「それ、俺のセリフなんだけど」
「……は?」
「お前が一番よく知ってるだろ。あの日、何があったか」
二人の間に、重い沈黙が落ちた。
私は震える声で聞いた。
「……あの日って、何?」
誰も答えない。
すると先輩が、私に一枚の写真を差し出した。
そこには、小学生くらいの私と、二人の男の子が写っていた。
一人は、今より幼い湊。
もう一人は――
「……え?」
写真の裏には、私の字でこう書かれていた。
『10年後、りっくんと結婚する!』
……りっくん?
先輩が、そっと私の頭をなでた。
「やっと見つけた」
「ずっと、探してたんだよ」
そして、湊を見て言った。
「お前だけは、こいつに会わせたくなかった」
湊は唇をかみしめた。
「……うるせえよ」
「だってさ」
先輩は、私の手を握った。
「この子が忘れてること、全部お前のせいだろ?」
――その瞬間。
頭の奥で、何かが弾けた。
知らないはずの景色。
泣いている男の子。
血のにじんだ膝。
そして、誰かの声。
『ごめん。俺が代わりに嫌われるから』
「……っ!」
頭が痛い。
思い出せない。
でも、なぜか涙が止まらなかった。
そのとき、湊が私の前に立った。
「もういい。帰るぞ」
「待って!」
私は初めて、湊の腕をつかんだ。
「ねえ、教えてよ」
「……」
「あんたは、私の何なの?」
湊は、何も言わなかった。
ただ、泣きそうな顔で笑った。
「お前が一番、忘れちゃいけないやつ」
そして、私の手をそっと離した。
「……俺のことなんか、思い出さなくていい」
屋上を出ていく湊。
その背中を見ながら、先輩がぽつりと言った。
「……まだ、思い出してないんだね」
「何を……?」
先輩は私の目を見つめた。
「君が10年前、結婚の約束をした相手」
そして。
「俺じゃないよ」
――え?
「じゃあ、誰……?」
先輩は、屋上のドアを指さした。
「今、出ていった男」
息が止まった。
「……うそ」
「本当だよ」
先輩は笑った。
でも、その目は全然笑っていなかった。
「だから俺、あいつが大嫌いなんだ」
「だってさ」
「俺も、君のことが好きだから」
その瞬間。
スマホが震えた。
例の匿名アカウントから、DMが届いていた。
『思い出した?』
『じゃあ、次は教えてあげる』
『昨日、神崎湊が君を振った本当の理由』
そして最後に。
『あいつ、来月結婚するんだって』
…………は?
湊が?
結婚?
相手は――
画面に表示された名前を見て、私はその場に崩れ落ちた。
『白石 莉子』
先輩と、同じ名字。
そして、その名前の横には。
「あなたの親友」
の文字があった。
コメント
1件
うわー、これ、すごく巧妙な設定の伏線回収ですね……! タイトル「私の彼氏、誰ですか?」がここで活きるとは。湊と律先輩、そして匿名DMの三重構造がもう推理小説並みに緻密。特に「あいつ、来月結婚するんだって」→相手が親友って持ってくるの、不気味さと衝撃が半端ないです。続きが気になって仕方ない……!