オタチが見たポケモン。
それは、キリキザンだった。
「どうしてキリキザンの群れがこの森に現れたんだ…?」
瀬戸が疑問に思う。
「エーフィ、ブラッキー」
雪乃が二つのボールを投げた。
エーフィとブラッキーが雪乃の前に現れる。
「とにかくキリキザンを無力化するから、あんたは隠れてて」
「え、僕も戦うよ!」
「ここからは私の仕事。怪我したくなかったら引っ込んでて」
そう言われ、渋々木の影に隠れる瀬戸。
「ワッシャア!!」
ワシボンが果敢にキリキザンに攻撃するが、“メタルクロー”に阻まれる。
しかも周りのコマタナたちにも邪魔をされ、上手く立ち回れない。
「ワシボン!逃げて!」
雪乃が叫ぶが、ワシボンは逃げない。
キリキザンから目を離さず、睨み続けている。
近寄ろうにも複数のコマタナたちが雪乃を取り囲む。
「エーフィ、“マジカルシャイン”!」
とりあえず周りのコマタナたちから片付けていくしかない。
「ブラッキーはワシボンの援護を」
ブラッキーは頷き、群れを掻い潜りワシボンのそばに行く。
しかし、
「ワッシャ!!ワッシィ!!」
ワシボンはこちらを見て「邪魔するな」と言わんばかりに怒った。
雪乃と2匹は攻撃の手を止める。
「ワシボン…」
ワシボンは一人で立ち向かう。
いくら攻撃を受けても、負けじと立ち上がる。
どうして。
何故そこまで一人で頑張るの。
その時脳裏に浮かんだのは、昔の自分の姿だった。
一人で孤軍奮闘していたあの頃の自分とワシボンが重なり合う。
『…仇は俺が取る』
突然、声が聞こえてきた。
これは、誰の声?
『誰にも邪魔はさせねぇ!!』
…ワシボンだ。
ワシボンの声が聞こえてくる。
振り返ると、瀬戸のそばには目を光らせるリグレーがいた。
「草凪さん!ワシボンの話を聞いて!」
瀬戸の言葉に、雪乃は頷く。
「…ワシボン、仇って何、どうしてあなたは戦い続けるの!?」
雪乃の問いかけに、ワシボンは片目を細める。
『ーーーこいつらに殺されたからだ、仲間を』
瀬戸と雪乃は言葉を失う。
「仲間を、殺された…?」
『そうだ。こいつらは俺らの縄張りを襲った。一度は返り討ちにしたが、こいつらは仲間を増やしまた俺らの縄張りを荒らした。…そして俺以外の仲間たちは倒れた。俺も片目を失い、命からがら逃げてきた』
キリキザンは攻撃の手を止めず、ワシボンを襲う。
ギリギリで躱すワシボン。
『俺は復讐を誓った!仲間を奪ったこいつらを根絶やしにすると!だから力が欲しかった。そしてこの森に辿り着き、ウォーグルに出会った』
「…ウォーグルと戦って強くなろうと思ったのね」
だからあんなにもウォーグルに喧嘩を吹っかけていたのか。
元々ワシボンは親鳥に戦いを挑み強くなる習性がある。
ウォーグルを見て本能的に戦いを挑んだのかもしれない。
『でもこいつらは俺を追ってここまでやってきた!1匹残らず排除するためにッ!』
逃げ出したワシボンを見逃さなかったのだろう。
そうしてワシボンを追い、この森までやってきて、あばよくばこの森も自分たちの縄張りにするつもりだったのかもしれない。
「そうだったのか…」
瀬戸が辛そうに呟く。
「…一人で仇を討ちたいのね」
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